玉葱を刻むとき

玉葱を刻むとき

COCO MEMO TEXT

鼻づまり、わんこ。

▽2020/02/23(Sun)においに敏感な彼は、近ごろ、花粉の影響で鼻が利かなくなっている。
苦しそうにぐしゅぐしゅしているのが、なんとなくかわいい。
寝顔をながめながら、ほんとうに何時間だって、何日だって見ていられる、と思った。
決してきれいなだけじゃない、人間なんだっていうところ、知れば知るだけ愛おしくなる。ね。

どくだみの効能、解毒。

▽2020/02/21(Fri)都合のわるいことは、誰だって見たくないもの。
目を伏せて、見ないフリをしたっていい。
先送りにした問題が、どんなふうに形を変えていくのかなんて、わからないんだし。

どくだみ茶が、良いんだって。
早速さがして、試してみようかしら。

うー、ねむ。

▽2020/02/20(Thu)いやー、疲れました。
正直言って、ヘトヘトでございます。
先にお風呂を済ませて大正解。

今日みたいな忙しい日に限って、店責はモチベーションが高かった。思いつきのように突発的な週末の計画を持ち出され、主任がいないのをいいことに、巻き込まれてしまうわたしなのであった。
でも、人員的に無理かな、と相談されてしまえば、そうですね、なんて言えるわけもなく。たかが2万の計画、なんとでもなるだろうと思いながら、頼れる人間がいないので、前向きに休日出勤を申し出る次第。
立場的におれからは頼めないけど、とか、時間があれば、とか、ずるいよなあ。(笑)
まあでも、この人の計画ではあるけど、監督はわたし、というふうに考えれば、勉強になるかなって。調子良く考える。
売り場のイメージを固めながら、翌週の計画と、発注を打ち込む。ただでさえ作業で疲れ切っていたから、今日の仕入れのことなんてまるで考えられなかった。在庫が膨らんでいるのをどうするか、作業のことばかり。大事なのは数字なのにな。

たぶん、もっと出来るようになる。今は、見えない何かに妨害されているだけ。だから考えなきゃ。もっともっともっと考えて、見つけて、厳しく自覚していかなきゃいけない。実行していかなきゃいけない。
煩雑なことは山ほどあるけど、間違いなくたのしいはずだから、だからこそ、信念を突き通せるように、パワーさえあればって信じてちからをつけてきたんだから。
努力に裏切られないように、努力と寄り添って。

届かないのに、届いてそうな。

▽2020/02/19(Wed)大丈夫だよって言う、大丈夫なんだって。

今日は、ひたすら準備。
別に、ただの平日なんだけど、今日はなんだか仕事がたのしかった。
六尺の平台を相手に、イメージを膨らませる。彩りとか、どこに何を陳列しようとか、サイズ感はどうするのがいいかな、とか。
什器の使い方も、先輩達の売り場を見て真似をした。
たまに顔を出してくれるチーフが、気が向いて売り場をつくったりなんかすると、見違えるほど商品が映えるので、センスなんだなあって思うけど。
真似をすればおんなしように出来るかもしれないと思って、一々写真に収めては、見返している。

21時過ぎに帰宅して、もう今夜はビールを一本飲んでお風呂に入って寝てしまおうと考えた矢先、来週の販売計画を作らなきゃいけないのを思い出す。
うーん、明日ドタンバじゃ、だめかなあ、なんて。
サボりたくある今日この頃なのだ。

ざっくばらん、あるいは支離滅裂。

▽2020/02/18(Tue)はー。
傷を抉るのは、大好きだ。
破滅願望と嗜虐性はリンクしてしまう。
さて、気が済むまで考えてみればいい。
まずは今日一日を振り返ってみよう。

2月18日、火曜日。晴れのち曇り。
何の変哲もない、休日だった。
昨晩は、彼がうちに来てからクリームパスタを食べ、ワインを飲み、早いうちにいつの間にやら寝てしまったんだっけ?
しばらく眠りを貪り、深夜の1時か2時頃に二人で起き出して、入浴を済ませたのち飲み直したのだった。
わたしが個人的に好んでいるDVD映画を流しながら、ウイスキーのオンザロックを二人で舐めて、すっかり現実を忘れて彼のひざの上で陶酔していた。

夜明けの寸前には、僅かに開いたカーテンの隙間から入る薄明るさを頼りに、お互いたまらず肌を重ね、存分に愛し合った。
そのときわたしは、愛し愛されるだけの幸せに、疑いなど露ほども抱いてはいなかった。
恋だ愛だの無根拠な情について、いかに脆弱であることか、思い出しもせず。

早朝眠りに入って、目覚めたのはちょうど昼飯時だった。彼はわたしより一足先に目覚めていて、何やら美味いが辛いと評判のカレーを用意してくれた。
二人で辛い辛いと騒ぎながら、せっせと食べる。
彼は汗だくで、その辛さに驚きながら、舌を痛めながら、それでも愉快そうに食べていた。
起き抜けのランチを終えてから、出かけようかどうしようかと話して、なんやかや過ごしているうちにわたしはつい、睡魔にそそのかされ惰眠を堪能していた。

これをしたためている今、すでにもう、関心がなくなってしまっている。どうしてすれ違ってしまうのか、相互理解が行き届かないのか。
熱量は、幸せなときに注がれた、本当はもう、じゅーぶんだ。


恋人は、バツイチで子持ち。
その事実は知っている。理解は出来ていない、受け入れてもない。わたしにはきっとその器がまだない。
というのは、当然でしょう?わたしは既婚でも、子持ちでもないのだから。
例え理解してる、と言ったところでヒャクパーセント、ピュアな嘘になるに決まってる。
偶然と偶然が接触して、嵐のように始まった交際だから、ふと雨が止むように、終わるかもしれない不安には日常的に駆られている。
でも選び取ったのはわたし。彼との幸せを望んだのは、わたし自身で。
短絡的に考えて、わたしがわたし自身を彼とのことで責めるのであれば、彼が作り上げてきた環境について、事実を知っていたでしょう?ということ。
過去に、わたしの知らない女と恋に落ちて、わたしに触れるように優しく触れて、取りこぼしそうなほど、彼女に愛の言葉をささやいた。そして、愛すべきだと信じてその通りに、正しく愛したのだろう。好きなだけセックスをして、その昂りに、満足のいくまで震えたんだと思う。今より若かった分、深く、深く。
その当然の先で、デキた子供がいる。
噛み合わなくなる理由のひとつとして、わたしにとっては、その知らない女とデキた子供のいる彼が、現在。いまの理解。
時差式に沸き上がる嫉妬心。
困らせることはハナからわかってた。
わたしに不倫経験があるからと言って、価値観の範疇がまとまるわけじゃないし、簡単にお利口さんになれるわけでもない。
だって、まるで、突き付けられているよう。
大事にするだなんて漠然とした甘やかしの言葉を、愛は並列されるって、不都合をまるまるスルーして、無条件に飲み込まなければいけないみたい。ほんとうはわたしだけのものにしたいだなんて、そんなこと、口が裂けても言えないじゃない。無謀なんだもの。

わかってる、でも、わかってないし、拒んでいる。
このままじゃ、きっとどこにもいけない。忘れてる日々がいくら増えようと、思い出すその瞬間、その日その刹那、わたしの言動によって彼の幸せを吹き飛ばしてしまうから。思い悩む日だってあることを、わかってほしい、わたしだって努力しようと考えていることも。
彼はわるくない。
でも、わたしだって、わるくないでしょう?

二人で幸せでなきゃ、意味がない。わたしと一緒にいるから幸せだと、心から思っていてほしい。
あなたがいるからわたしでいられる、と全身全霊でわかっていたい。
わたしが一番望んでるのは、わたし自身の幸せ。
わたしを幸せにしてくれる人を、わたしは幸せにしたい。
正直な気持ち、ただそれだけのことが、実はすごく傲慢なのかもしれない。


もっと建設的な考えができる脳味噌の持ち主であるなら、そもそも不倫もしないし、抜け出そうと差し伸べられた手に縋り付いて持ち上げられた先ですら、今みたいな状況にもきっとなっていないから。
それでも、前向きに生きようと考え直すなら。

他人を幸せにしよう、と言うにはわたしの心はきっと弱過ぎる。
他人はおろか、自分さえ信じられないのに。

本当は、逃げ出そうとしてしまった。
踏み止まれたのは、うまく寝付けなかった彼がわたしのパーカーの袖をつかんだから。
不安そうに開閉する瞼と、懸命にわたしを刺激しないよう、適切な言葉を選び取ろうとする彼に、向き合おうとしてくれる気持ちを汲み取った。
その瞬間、すっかり気が抜けてしまって。

恋人同士だからと言って、会うたびに交わす言葉で笑顔になれるような、互いの微笑みに癒されて、思いやりに溢れているような。口論の一つもなく、その仕草ひとつを見て理解し合えるのなら。
綺麗事で描いた輪郭に、中身を押し込むとして。容赦なく襲う津波は、築いたテトラポッドを溺れさせたあと。

ことごとく潰えてしまう、儚いもの。
軋んだベッドの上で吐き出される飛沫は、なんの証にもならない。幾度となく欲しがった言葉を鼓膜に打ち付けられても享楽だけを引き渡すわけにはいかない。傷付いている、夢を見ているのだ。
底無し沼に踏み入れた脚は、たちまち飲み込まれてしまう。

現実、モヤ。

▽2020/02/17(Mon)頭ではわかっていること。
ただ事実である、そのことについて。
知っているけど、理解はできていないのかも。

言葉として口に出してみれば、たちまちとらわれる。
傷つくには遅過ぎて、後悔するには早過ぎる。

何が見えているのかわからない、その人のからかいを真に受けるのはきっと、思うツボ。
不安を煽られるのは、すごく苦手だ。



疲弊、のち、晴れ。霧雨の夜道。

▽2020/02/16(Sun)終業して、とうに三時間。
いつまで待てばよいかな、となまぬるい事務所にて、期間の売上実績を確認しながら時計を見上げる。
今日は、上司との面接があった。下期の評価を確認してもらうだけの、簡単なもの。
上司は、上司の上司と(要は、主任は店長と)面談中だったため、わたしは待たされていたのだけど。
便宜的に取り纏めた自己評価を出力して、メールをチェックしていたら、主任がお待たせとやってきたので早速その評価シートを見てもらう。大丈夫だと言われたところに、店長が主任と一服に行くというので、そのままわたしもついていくことに。
主任が、先程までの面談の内容を噛み砕いて教えてくれる、今後の目標や、計画やなんかを。一方で、黙っておもむろにアイコスを咥える店長は、疲れ切っているように見えた。なにせ、いつにも増して愚痴っぽかったので、本当に疲れ果てていたのかもしれない。
そんな店長から聞こえてきたのは、数百名を束ねる組織の責任者だとは思えないような、はしたない言葉。
奥さんの愚痴と、気の利かない下世話な説教。欲求不満を呈するそれらの吹き出しは、わたしたちには1ミリだって届かないというのに、ポンポンポンポン。子供みたいにわかってほしいわかってほしいと、駄々をこねてる大人を目の前に、仕方なく、少しの諦観を味わった。
共感してくれる人間を選ぶことさえ無視しているのは、一家の主の権力が従えた者の首の動き方にまで影響できると知っているからだろうか。
勿論、わかってはいる。一見、順風満帆に見えたとしても、当人の認識の中では客観と合致しないことだってある。
ただ、そこまで不満でつまらないのなら、やめてしまえばいいのに。ついわたしはそう思ってしまうから、その空間がどうしても退屈だった。
主任をいじめて、憂さ晴らしでもしてるのだろうか、独り善がりな詭弁こそ他人を不愉快にさせるには充分だ。浮気しない奴はいないって、不倫だらけだって。そんなの、うちの主任には関係ないのに。

つまらない一服の時間も済んで、ようやく面談。
無人の休憩室を占拠して、一時間近く、主任とわたし、二人で話をした。
近ごろ浮上している問題や、課題について、生意気に意見を言うわたしに、真摯に耳を傾けてくれる。決して自身を卑下しない主任を、わたしは慕っている。
どこから生まれてくるのかわからないその自信に、最初は辟易とさせられていたのに。
サルもおだてりゃ木に登る、最初はそう思って、扱い方さえわかればこっちのもんだなんて考えていたけど。決してそんなことではなくて、尊重すれば尊重される、ただそれだけのことだった。

他人を傷つけなくても生きていけることを、目の前のこの人はいつだって証明してくれる。



無題

▽2020/02/16(Sun)夜更かしが大得意である。
彼はそんなわたしを見越して、早く寝なさいよと仕事中にも関わらず、時間を割いては尻を叩く。
五日ぶりの我が城に戻ってから、荷ほどきもせずに早速ビール缶のプルタブを持ち上げてからというもの、早五時間が経つ。
さすがに翌日からの仕事に備えなければ、と重い腰を上げて就寝準備。彼の部屋での過ごし方にすっかり慣れてしまったわたしは、まさか自身の家での過ごし方を忘れるなんて思ってもみなかった。彼愛用の洗髪剤はリンス不要の代物であった。もくもくと目一杯に泡立ち、流しながら髪を指で梳くと、つやつやと指通りのいい上等なもので。それを数日間、体験しただけなのにも関わらず自宅の浴室にある買ったばかりの可愛らしいリンスボトルが見えなくなってしまった。
髪をバスタオルで叩きながら、どうもキシキシするなと思ってみた。そしてこれまた良いタイミングで、トリートメントもちゃんとしなよ、と連絡が入るのだった。
毎朝のごとく鳥の巣を頭上につくるわたしを不憫に思って、用意してくれたトリートメント。それすら丁寧にぬりたくるのは彼の仕事であった。
無精で、面倒臭がりで、何もできない、しない恋人を、どう思っているんだろう。

仕方がないので、今夜は自ら髪の世話を済ませる。
あと数時間後からの仕事を思うと、憂鬱だ。


終わりつつある冬休み

▽2020/02/15(Sat)一泊二日の旅行を終えてから、時間の許す限り、彼の懐にいた。あっという間の五日間が終わろうとしている。ささやかだけれど、これ以上は何も要らないような、満ち足りた冬休みだった。
わたしは毎夜、気が済むまで酒を呷り、好きなものを食べて、楽しんだり落ち込んだり、気儘に過ごしていた。彼を笑わせたり、困らせたり、気持ちよくしたり、苛つかせたりもした。二人でいる時間の、秒針の進みは驚くほど速く、素敵な夢ばかりを見て、目が醒めては、また眠る。仕事に出掛ける彼を送り出してからのミッドナイトは、柔らかな泥濘で、どこまででも堕ちていけそうだった。
ただひたすらに、一人ではもう生きてはいけない実感に浸されながら、彼の帰宅を静かに待つのが、わたしの新しい幸せになった。ずうっと、続いていけばいいのに。繰り返し、繰り返し、眠りについて、彼に抱き締められて目が醒める、窓から射し込む朝の日差しに目を細めて、キスをして。
少しずつ、だけれど唐突にいっしょくたになってしまった、混ぜこぜの朝と夜、交じり合うことはなかったはずの。体液と共に染み出して、渇いていく。そのゆるやかさは、とても心地がいい。

やみつくさ

▽2020/02/14(Fri)例えば、あと82分で今日が終わるとして、82分後に全てを失うとしたら。そのことについて私は一体何から考え始めればいいんだろうか。

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