ムリ、ゼッタイ
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雑踏の中、真っ直ぐにこちらを見る気配に背筋がゾッとなる。振り返れば思うツボだと足を進め、時計を見た。待ち合わせまではあと10分。しかし、生真面目な友人は既に着いている頃だろう。最近お気に入りの喫茶店まで、何も考えずに向かった。
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ドアベルが鳴り、声をかけてきた店員に待ち合わせの人物がいることを告げて勝手に店に入る。案の定友人は先に来ていて、推理小説を持っていた手を上げて軽く振った。
「何があった」
「いや、な」
ドアベルが鳴る。軽くそちらを見て、頭が痛くなった。
そんな俺を見て首を傾げる友人はあざとい。いや、オーバーアクションは彼からしたら仕方のない事なんだが、コメディ映画の二枚目みたいな動きは面白いからやめてほしい。キャラが違う。
「最近ストーキングされているんだ…」
今回、友人をわざわざ呼び出した理由はこれである。
警戒色が眩しい友人は難しそうにストローでリンゴジュースを飲んだあと、「…事実か?」と低い声で聞いた。事実だ。表情の変わらない友人は、声のトーンとボディランゲージで感情を如実に伝えてきてむしろ俺たちよりもわかりやすい。
「ああ…つけられているんだ」
「気のせいでは…」
「はじめはそう思ってた。でもどうやら、盗撮もされているらしい」
「なっ」
「旧式のビデオカメラを使っているようで、『カチ、ジー』って起動音がするんだよ…」
もともと正義感がある上に、仕事柄盗撮を許せない性質の真面目な友人は拳を震わせている。
「ネットに流出したらどうしよう」
「盗撮は10年以下の懲役・1,000万円以下の罰金のどちらかもしくは両方が課せられる!ストーキングとあわせてこれはもう…死刑だ。処刑しよう。罪には罰を」
「お仕事お疲れ様です」
ついにはピカピカと輝きだした、赤ランプ頭の友人は激おこである。
「…でさ、いるんだよ」
「は?」
「後ろに、その…ストーカーが。…今も撮ってる」
「なんだと!!」
ガタン
立った勢いで椅子が倒れ、小さな喫茶店はシンと静まる。
そして俺の背後に座っていた男――ストーカー(仮)をみた友人はけたたましく警報を鳴らした。完全に戦闘態勢。もう俺は彼を止められない。
「また貴様かあああああ!!!!」
「ファック!プライベートだっていうのに!」
「こっちのセリフだこの野郎!!監獄にぶち込んでやる!」
「あ、すいませんすぐ出ていきます。会計これ、そこのビデオ頭の人のもまとめてください。ハイ、すいません」
お知り合い…でしたか…友よ…。
一週間位前かな、電車で隣に立った時から至近距離で撮影され始め、今日に至る。旧式ビデオ頭の青年(仮)の首をワンハンドネックハンキングツリーで上下にシェイクしつつ怒鳴り続け警報を鳴らし続ける赤ランプ頭の友人、パトライトくんの後ろを「なんでもありません、すいませんすぐ静かにしますから、すいません」とあらゆるものに謝罪しつつ歩くが、二人はどういう知り合いなのだろうか。
パトライトくんは映画館の警備員でー――
「どうやって出た!警察に引き渡したはずだろう!」
「貴方が仰った通りに1,000万円以下の罰金を支払ったんですよフハハハハ!」
「金払って映画見ろやああ!!」
映画泥棒、ダメ、ゼッタイ!
一通り一方的な怒鳴り合いが終わったあと、もじもじしながらのぬるぬるとした「一目ぼれしました付き合ってくださいモヂモヂ」という告白をされたが当然断った。結果、今も彼はおれの背後にいる。
「お前が誰と付き合ってもいい。女でも、男でも、豚でも牛でも蛙でも構わない。が、アレだけは止めろ!やめてくれ!わかった俺でいい!俺と付き合おう?なっ?」
「落ち着け友よまじビークール」
「三角…関係…ッ!?」
「少し黙って頂けませんか盗撮男さん」
「酷い言い草!でも好き!」
もう一度言う。
盗撮、ダメ、ゼッタイ!
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@映画泥棒
映画が始まる前にヌルヌル踊りながら映画を盗撮しているビデオ頭
@パトライトくん
映画泥棒を捕まえる映画館の警備員。パトライトは通称
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