おばけは嫌い 死なないからさ


昔は良かったと懐古主義に染まったことを思ってみる。

特にテレビだ。今の鮮やかにうつる画面も捨てがたいが、俺はあの重厚感のあるずんぐりむっくりしたスタイルのテレビが好きだった。
土産に貰った謎の民芸品を置くのにあれほどベストなポジションはないし、猫が寝れる。しっぽで画面を隠すという猫特有の嫌がらせも、なかなか愛らしくてよかった。そして何より根性があった。

鉈を叩きつけても半分までは耐えてくれていたあの頃が懐かしい。

先日買ったばかりの薄型テレビが小さな爆発を起こすのを、ポップコーンを食べながら見守る。
ソルトよりキャラメルが好きな彼に合わせたのだが、やはり俺には少し重い。一緒に用意した飲み物も彼好みの甘いココアだったのがまた拍車をかける。俺はコーヒーでよかったかもしれない。いや、キャラメル味には合わないか…グリーンティーかな?次回は試してみよう。
俺がポイポイとポップコーンを口でキャッチする遊びをしている最中、キャンプに来たティーンエイジャーを執拗に追い詰める時もかくやといった勢いで肩で息をする我が愛しのダーリンは、これで四回俺のテレビを破壊した。
逆に言うなら四回も俺の趣味に付き合う努力をしてくれたということなのだ。愛おしいね。

「ジェイソン」
「……」

ホッケーマスクから呼吸音が漏れる。



「ジャパニーズホラーはそんなに怖いのかい?」

大柄な背中を丸めて、ゆっくりと頷いた。
けっこう昔に作られた、女がテレビから出てくるという物語だが、ジェイソンはジャパニーズホラー特有のジワジワとした薄暗い雰囲気が大層苦手らしい。派手に現れ派手にぶった切る主義はここからなのか。
俺はこの島国特有といってもいい陰鬱とした雰囲気と女優の平坦な顔が好きなので率先して集めているが、ジェイソンとの鑑賞会はいまだ最後まで成功したことがない。

自分自身がクリスタルレイクのホラーであるという自覚がないのだろうか。
だがしかし恋は盲目というもので、俺はこんなところにもメロメロなのだ。

「怒って無いよ、さあこっちにおいで。ポップコーンを食べよう」

テレビを壊した事を反省しているのであろう、ショボンと肩を落とすジェイソンを手招く。
伺うように少しだけ間をあけて隣に座るジェイソンに自分から寄り添い、逞しい背中を宥めるように撫でた。


「今日は半分まで我慢できたね」

最初はオープニングから鉈が振りかぶられたのだから、すごい進歩である。


「次も頑張ろう?」
「……」

ホッケーマスクの下で、嫌そうに顔が顰められた気がした。


←前 main|top 次→