デッドエンドラブストーリー


ボーは愛される事に渇望していた。
一番愛されたかったのはママだったが、二番目は誰でもよかった。ママじゃないなら、どうでもよかった。しかし悲しいことに、彼を愛してくれる人はなかなか現れなかったのだ。悲しいことに、彼のもつ粗暴さが孤独を深めた。

物心ついた頃、それ以前から、ボーはこの表現しか知らなかったし誰も教えてはくれなかった。
喚いて怒鳴って蹴りつけ殴りつけ切り裂いて、そうしてようやくママは自分を見てくれる。自分を椅子に縛り付ける時だけ、ママは自分を見て、触ってくれる。だからボーは寂しくなると大声を出して暴れ続け、そのまま大人になってしまった。そして一層頑なになり、愛されたいと願う事を忘れた。そう思っていた。

だが、極めて珍しい事に、他所の街で酒を煽っていたバーでとある男と意気投合したのだ。
男は名前と名乗った。ボーは何も知らずに立ち寄っただけなので知らなかったが、どうやらこのバーは同性愛者がパートナーを見つける為に使うような店だったらしい。
一人で乱暴にジョッキをテーブルに叩きつけながら飲んだくれているボーに話しかけてくる命知らずは、名前だけだった。
「酔うと陽気になるたちなんだ」と自分で言う名前は、前もこうやって不機嫌そうな男に近寄ってここを刺されたと服をめくった。まだ縫跡の残る傷は酔っ払って血のめぐりがよくなったせいかうっすら血が滲んでいる。「安静にしておいた方がいいんじゃねぇか」と、ボーが言うにはひどく違和感のある正論を叩きつけてみたら、ゲラゲラと笑いながら「だって寂しいんだもんよお」と首を振った。

「付き合ってた子と分かれてさあ、ここ刺された時。一人で寂しいから出会いを求めにきたらあ、好みのタイプがさあ、いたから、シメシメとお」

「好み?俺がか?」

「寂しそうな人が好きさあ。寂しい人は愛されるのが好きだろ、俺は愛したいタイプだからねえ」

グラングランと頭を揺らし、酒臭い息が顔にかかる。




ボーは愛される事に渇望していた。
一番愛されたかったのはママだったが、二番目は誰でもよかった。ママじゃないなら、どうでもよかった。それが女でも男でも、特に問題はないのだ。




「なあ名前、俺を愛せるのか」
「もちろん!俺は真摯な男さあ。きみを世界でいっしょー真実こころから、愛し続けるとお…誓います!宣誓!不肖ワタクシこと名前は…えーっと、君の名前ってなんだい」
「ボー」
「ワタクシこと名前は!生涯ボーを愛し続けると誓います!」

そしてまたゲラゲラと笑い、ボーのジョッキに手を伸ばして半分以上零しながら一気に煽った。












名前は、良い。
ボーの気に障ることを言わなかったし、優しかったし、なんと頬にキスまでしてくれたのだ。しかも、ママと同じブロンドだ。

酔った勢いの事であるが、こんなにも好意を持ってもらったのは生まれて初めてだった。

「痛くないようにシテやるよ」

車の助手席にのせてキスをして、意気揚々と帰宅した。
引きずり下ろしなどせず、丁寧に背負って扉を蹴破る。まだ温かい身体はぐにゃりとしていてずり落ちそうになるので、何度も背負い直した。

ああ、楽しみだ。
これから毎日名前とキスをしよう。部屋の椅子に座らせて、おはようとおやすみのキスをするんだ。そしてハグをして、毎日「愛してる」と言おう。答える声がない事に不安は欠片もない。なにしろ名前は、一生ボーを愛し続けると誓ったのだから。


「おい化物、こいつを一等上等な人形にしろ!俺の恋人だ!」



酔っ払って寝込んだ隙に、痛くないように一撃で頭にナイフを突き立てられた死体がひとつ。クリスマスにサンタからプレゼントをもらった子供のような笑みで、殺人鬼は無邪気に背負っていた。


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