麦を育てながら生きていたい


漂流者だ、と言われてもわけがわからない。
この世界にいる先輩たちは教科書や歴史書に名前を並べる偉人達なので、もしかしたら自分も未来では何かしら偉業を成し遂げたとして教科書に載るのだろうか。
特に功績をあげた記憶はないが、きっとそうなのだろう。それか、ご先祖様にデストロイヤーとか言われていたパイロットがいたらしいから、その関係で「先祖があれなら子孫もいけんだろ」と引っ張り込まれたかもしれない。その場合俺は二度と線香を上げないと誓う。

平成生まれですぴーすぴーすと時代を説明したとき、もう時代がぶっ飛びすぎて逆にキョトンとしてしまっているおっさん二人と美女顔青年にこっちが申し訳なくなったりした。


そんなこんなでごく普通の戦闘経験もない一般人な俺は、毛虫より使えないと自覚しているので、おとなしく農耕に勤しんでいるのですが、妖怪首おいてけが戦え戦えうるさいので震える日々です。


「名前はそれないに動けうのになんで刀を持たんんだ。元服は済んでいうのだろう?」

俺のいたいけな腹筋をガンガン叩きながら三十路にあるまじきキョトンフェイスで「鍛えてうのはわかってるぞ」と言うが、別に隠しているわけではない。

「そりゃあそれなりに鍛えてますがね、俺のは豊久さんのとは違いますよ」

お返しにムッキムキな腹筋をガスガス叩くと、やはりビクともしない。俺はアホほど痛かったというのに。


「俺のはファッション筋肉です」


普通に考えてごく平凡に生きてきた平成男児が戦いなんて出来るわけないだろうが。
この筋肉はただの男の嗜みです。ファッションマッスルです。あいあむファッションモンスター。



「何をゆてうのかわからんど」
「分かり合えないって悲しいことですね」


話し合いが無理だと判断したらしい豊久さんに「特訓ぞー」と強制連行されて刀の振り方と効率よく首を落とす講座が開かれるのが辛い。誰か助けてください。妖怪首おいてけが俺に殺戮を強要します。
いや、豊久さんたちに追い出されたら死しか残っていないので本格的には逆らいませんが。

ものわかりのいい現代ッ子精神が、自分を裏切る今日この頃である。


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