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「なんで!」
「ええ……なによ」
「ババアの乳首色のジャージはぁ!?」
「公道でババアの乳首色とか叫ぶなよ……」
渾身のオシャレをして待ち合わせに向かったオレを待っていたのは、垢抜けた今どきの格好をしたミョウジだった。ババアの乳首色のジャージって言ったじゃん!! 誰がその服コーディネートしたんだよ、オレがコーディネートしていいっていったのに!
「絶対手持ちの服じゃないだろ、オレが選びたかったのに」
「これねえ、イグニハイドのキメラ。俺一人に12人分の私服が組み込まれてカスタムされております」
「全員の名前出せよ一人一人お茶会の招待状送ってやる」
「的確に貫通攻撃与えてこようとするじゃん。似合わない?」
「似合う〜〜〜」
「エース、私服に赤が多いだろ。だから俺も差し色を赤にしてみました」
「しゅき…………」
実質ペアルックじゃん。街でそういう格好してるカップルみたときはめちゃくちゃキモいなと思ってたけど謝るわ。超嬉しい。
今日の為に、オレの為に考えてくれたってこと? オレが喜ぶと思って? はあ……? しゅき……。
てか、昨日までトラッポラって呼んでたのに! エースって呼んだ!
「……ナマエ」
「なあに」
「ひん」
「変な声」
オレが頭ぐらぐらさせながら名前を呼んだら、ふっつーな顔して手を繋いできた。手汗やばいのに。裏返った変な声も出る。笑いながら手を引いて歩いてくれるナマエが格好いいなとか、感情がめちゃくちゃになる。
「全部借りもんだからさ、エースが俺の服選んでよ。お前センス良いから楽しみにしてたんだ」
「ひぃ」
「今日の服、格好いいな。俺が黒好きだから差し色黒にしてくれたの? 同じこと考えてたんだな。嬉しいよ」
「ひょぇ……」
「いつもハーツラビュルのメイクをしてたから気づかなかったけど、素顔だと目元が柔らかくなってこっちもかあいいね」
「まっっって!」
繋がれた手をはなす理性は動かなくて、必死に顔の前に腕を出してガードした。
あぶ、あぶない。あぶない。心臓の動きがやばい。オレ、ナマエに恨みでも買ったか? え? 殺される?
「たたみかけんな! 忘れんな、オレはいま惚れ薬浴びてんだぞ! ときめきすぎて死ぬ!」
「だからだろ。何のために昨日徹夜でギャルゲー履修したと思ってんだ。もう26人は落としてやったわ」
「ざけんなデータ全部消せ。二度とオレと他の女比べんな次やったら刺すからな」
「ヤンデレルートかよ……」
「お前がオレを病ませてんだよ。普通にデートさせろ」
ナマエがまさかここまで出来るやつとは思ってなかったから、やばいことをしてしまったかもしれない。こんなことになるならさっさとあのマッズイ解除薬でも飲んでれば良かったか?
呼吸を整えてオレが落ち着いたころ、「じゃあ歩こう」と優しく手を引かれる。それだけで「オレのことまっててくれた」「優しい」ってきゅんきゅんするけど、惚れ薬の効果が切れたら「全部てめーのせいだろなに現実のデートをギャルゲーで履修してんだよ陰キャがよ」って思える。よし、まだセーフ。
さりげなく車道側に立ってくれるの、どのゲームで覚えたんだ。どういう女の攻略を思い出しながらオレと話してんだよ。
オレ、本当に恋をしたら簡単にメンタルがボロボロになる厄介なやつだったっぽい。先に知れて良かったと思うけど、だからといって対処法とかなさそう。てか、単にギャルゲーしてきたってだけで非実在人物に嫉妬してるのキモくね?
「エース、落ち込んじゃった?」
「んー、ちょっと。お前がギャルゲーしてきたとか言うから、いないやつに嫉妬してる自分に引いてんの」
「嫉妬したんだあ」
「笑うな」
「俺の事好きなんだねえ、かぁいい」
「うぅ……」
こいつ、マジでオレのこと攻略しようとしてやがる。にやにやしやがって、恋心フィルター1枚被さってるせいで「いじわるな笑い方かっこいい〜!」ってなっちゃってるから逆らえない。
「デュース」
「ん?」
「デュースとナマエ、幼なじみなんだってな」
「あ、知ってたんだ。そうそう、0歳からの付き合い」
「ずるい」
「ふふ、あいつ当て馬ポジにされてんの。おもしろ」
「オレはほんとにずるいって思ってんの。薬のせいだから仕方ないだろ」
「んふふ、そうだねえ。俺とデュース、同じベッドで寝た仲だもんねえ」
お泊まり会沢山やったからね と、普通に考えたらただ雑魚寝をしてただけって分かるんだけど、オレの理解より先に感情の方が先走って勝手に涙が出てくる。
「う"〜〜、いじ、めんなあ……っ」
涙腺がゆるゆるになってサイアク。ナマエが何かのアニメの絵が描いてあるハンカチでオレの目元を抑えてくれた。オレのこと泣かせてるのはこいつなのに、優しいなあってほわほわする。感情めちゃくちゃ。そのダセェハンカチさっさと捨てろ。
「エースって恋をするとかあいいなあ。俺、お前みたいなめんどくさい子だいすき」
「効果切れたら覚えとけよ、ぜってえボコボコにしてやっからな」
「できるかなあ」
舐めんな、やってやんよ。次はお前に惚れ薬引っ被せて、オレと同じ気持ちにさせてやるからな。
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