お茶会おかわり
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同じ寮同じ学年ではあれど、普段はつるんでいる相手も違うので行動を共にすることは少ない。それなのに、たまに今日のように「ナマエくんの部屋でお茶会をしよう! 」と誘われるので、俺はせっせと形ばかりの甘いものとそれより多めの軽食を用意しておもてなしをする。
ケイトは真剣に映える角度を探しマジカメにアップしていた視線を外し、砂糖なしの紅茶を落ち着かない様子で何杯も飲んでいた。あとで大変なことになるから止めた方がいい。
聞かれたなら言おうか、我ながらバカバカしすぎて涙も出ないが、ここまで来ると笑い話にくらいはなるだろう。そう、ハーツラビュルと答えながら人差し指を正面―――ケイトに向ける。
「ケイトの『オレくん』が初恋。だから数時間後には失恋したよ。だって存在しねえんだもんな」
気持ち悪い、バカみたい、そんな罵倒を覚悟して目を閉じる。実はまだ初恋引き摺ってるんだよな。感情ってほんと自分の思うとおりになってくれない。
バリッとクッキーを齧り折る音が響いた。
音を立てるのも珍しいし、ケイトが自分からクッキーを食べることも珍しい。目を開けて見ると、さっきまで俺を見ていたケイトの視線は手元のマジカメに戻っている。
こいつ顔がいいし、こういう風に気持ち悪いことを言う奴なんて慣れてるのかもな。もしかして余計な事言ってただただ恥をかいた上に友人を失っただけでは?
「ふうん」
バリッもう一度音を立てて、最後の一枚のクッキーを食べる。俺の取り分……。気の所為かもしれないけど怒ってないか? いつもにこやかな男が怒ると怖いから俺の前では一生笑ってて欲しい。
指についた粉を無作法に舐めて、つまらなそうな顔をする。いつの間にかマジカメは閉じていた。
「俺の失恋はね」
どうしてだろう。とてつもなく責められている気がする。断罪を待つ受刑者の気持ちでケイトの言葉を待つ。
「今」
それだけ言って立ち上がったケイトは、真っ直ぐに扉に向かっていった。静かな足音が扉を抜けた瞬間に激しく駆け抜けていく。
しばらく呆然としていたが、だんだん意味が呑み込めてきた。
もしかして、俺の気の所為でなければ、自惚れでなかったら、……ケイトの好きな人って俺だったんじゃないか?
まさか、いや、でも。
様子がおかしいことは確かだから、追いかけても問題ないよな? これは友情の範囲内だよな? 誰に対する言い訳か分からないまま、遅れて部屋を飛び出した。
「オレくんは、俺なのに!!! なんで!!!!」
泣きながらクッションを殴っている後ろ姿を見て、どうしたら良いか分からず声をかけようとしては失敗して黙り込むを繰り返す。
「俺なのに、なんで、ナマエくん、俺の事、好きじゃないの」
子供のようにうぇぇんと声を上げて、あとはしゃくりあげる音しか聞こえない。
「あの~~~……」
意を決して声をかけると、音を立ててクッションから顔を上げてきつく睨みつけてきた。ああ、目元が真っ赤になっちゃって。
「鍵閉めたのになんで入ってくんの!」
「あけた」
「犯罪!!」
俺がマスターキーと呼んでいるヘアピンを見せると、怒ったケイトがクッションを投げつけくる。手元の全てを投げると荒い呼吸が静かな部屋に響く。
「……なに、面白い? 趣味悪いんじゃない? 自分が振った男が泣きわめいてるの見るの、楽しい?」
「えーっと、ケイト」
「出てって欲しいんだけど。そもそも勝手に入るのって犯罪だし、見逃してやるから出てけよ」
「ケイト」
「うるさいな、向こうにいけよ」
「ケイト・ダイヤモンド!」
「、っ」
強く名前を呼ぶと肩がびくりと震え、迷子の子供のように途方に暮れた表情をして俺を見上げた。悔しいな、こいつ、こんな顔でもきらきらしてるんだ。
「俺はまだお前に告白してないだろうが!! 勝手に振られるな!!!」
「だって、俺じゃなくて、オレくんのこと好きってゆったぁ……!」
「それは初恋の話だろが!! 俺はまだ『今』好きな人の話をしてない! 泣くな!」
「いま」
もしかして、それ聞いたら泣かなくてもよくなる? 目元だけじゃなくて顔まで真っ赤にしてケイトが言う。ああもう、俺は初恋をずっと引き摺ってるんだ、もっとゆっくり、話をさせてくれ。
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