からだの中身を柘榴で埋めて
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「あー。借りた雑誌読んでからでいい?」
「何ひとつ良くないですが??? バチバチにキレそう」
いや、あの、お部屋デートですケド。
あの、二人っきりなんですが?? はあ~~~? 最愛の僕が隣にいるのに何えっちな本読んでるんだこいつ。普通に乳もろだしのページが見えてるんだよせめて隠して。うそ、僕、紙の女に負けた? 次元違う戦いがはじまった?
お前の好きにして良い男が隣にいるのにインクのにおいしかしないペラペラの女から目が離せないと?????? 馬鹿なの馬鹿だったわキレそお~~~。少しくらい顔と性格と所作とたまに見せる優しさと結局許しちゃう甘さと雰囲気とにおいと笑顔が僕好みだからって調子に乗らないでよね!! すこ…………(感嘆)
確かに約束もせずに部屋に飛び込んだのは僕だし、部屋に勝手に最新ゲーム機置いてるのも僕だし、ナマエの部屋の七割は僕の倉庫扱いにしてるし、好きです付き合って下さいさもなくばご両親の仕事はもうないですねフヒヒ職権乱用きもち~~~~~~(ダブルピース)と迫ったのは僕だったけど!! いやこうやって羅列すると本当に最悪になったな……。仕事云々は照れ隠しのジョークみたいなものだし、実際僕とナマエは明確にフラグが立っていたから何ひとつ問題は無いんだけど、結果だけ並べると僕が酷い奴みたいになる。バグかな?
ナマエはベッドに転がったまま僕を放置して雑誌に夢中だ。は?? それ見るくらいならこの前頼まれたから嫌々送った僕の論文が載った雑誌読めば良くない? 貸すが??
幼なじみの気安さゆえか、僕に対する感情麻痺ってません? お前の好きにして良い男が隣にいるんだが?(二回目)
関係性的にはスカラビアの、カリム氏に対するジャミル氏みたいなものなのに、僕を雑に扱い過ぎてるのでは?
二足歩行以前から一緒だったからと言って調子に乗らないで欲しい。僕は高嶺の花の幼なじみヒロインだぞ、丁寧に扱って寂しくないように逐一構って。
全然構ってくれないので、邪魔をする為に背中に張り付く。こっちを向いてくれない背中は嫌いだ。肩甲骨の間に額を擦り付けても「んー、後でな」と猫ちゃん扱いだ。
「ナマエ」
「んー」
どうにかしてこっちを向いて欲しい。構って欲しい。そうだ、怒られたいな。ナマエはあまり怒らないから、僕だけで頭の中がいっぱいになれば良い。
「ナマエの代わりなんて幾らでもいますし? 調子に乗らないで欲しいんですけど、君との関係だって対戦ゲームみたいなものだから、飽きたらもう必要ないよ」
あ、間違った。これ自傷だ。
ぺらぺらと紙をめくる音がとまって、横になっていたナマエが起き上がる。険しい表情で僕を見下ろしてるのを見て、SSR!ガチギレのナマエ排出!という言葉と特殊演出が脳内を駆け回った。瞬間、僕の灰色の脳細胞が正しいこたえを導き出す。
「お前」
「大変申し訳ありませんでした」
土下座だ。二年に一度は同じことを繰り返してるので、回数を重ねる毎に洗練されてると思う。そういう所から評価して欲しい。
「全部嘘です怒らないで構ってもらいたくて言いました! えーーん!! 別れるって言うなら今まで収集したナマエの情報全て流出させて二度と表を笑顔で歩けなくしてから囲う誰にも盗られないように地の底に縛り付けてやる僕しか見えない僕しか考えられない僕が与える食事を摂取して僕が与える知恵だけ得て僕の為だけに生きることを喜びだと魂に刻んでやる僕から逃げられると思うなよ絶対テイムしてやるからなこのイデア・シュラウド様に叶うと思わないでほしい絶対絶対諦めないから冥府の底まで追っていくから不可能なんて全部握り潰してやる……」
「お前ほんとそういうとこだぞ」
「えーん! 怒らないで! 拙者かわゆい彼ピですぞ甘やかして!」
「まったく……」
「うわチョッロ。詐欺に引っかかりそうだからスマホ解約して」
「イデアとも連絡できなくなるぞ」
「こんなとこ完全に倉庫にして、僕の部屋に来ればいいじゃないか……」
「お前……だから、俺の部屋にばかり荷物を詰めたのか……」
「ひひひ。かわゆい彼ピの健気さ、伝わりました?」
「お前ほんとそういうとこだぞ」
雑誌は床に落とされて、ナマエは僕を優先して僕だけを見ている。だからもうこれだけでいい。
「誰かの代わりなんて誰にもなれないんだから、それは二度と言うなよ」
「……はい」
「捨てないでくれよ、俺はお前のこと好きなんだから」
「……ゴメンナサイ」
「もう飽きちゃった?」
覆い被さってきたナマエが僕の唇に噛み付くようにキスをして、なにも答えられなかった。飽きない、ずっと飽きない。ずっと欲しかったものがようやく手に入ったんだから、一生一緒がいい。
「ぷは、あにょ、あのさあ! ふひひ、あのぉ……」
息継ぎが出来ずに陸で溺れかけたけど、これ、これだけは言いたい!
「お部屋デートですが据え膳放置はサイアクなのでは???」
「お前ずっとそれが言いたかったのかよ……」
「は!? か、勘違いしないでよね!」
ナマエがどうしてもって言うならやぶさかも無いってだけなんだからね! と、拙者の中のツンデレヒロインが叫んだけど、出力先である僕の声帯は機能しない。キャパオーバーだ。ちらりとナマエを見ると、僕だけを見ていた。ああ、ドキドキする。僕だけで頭がいっぱいのバカの顔だ。 食べられちゃう。 たのしみ。
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