遠近感狂うサイズ


自分の足元でギャースカ喚いているフレンジーの声を遮断して十分。それに気がついたフレンジーが視覚からアピールにうつって床を転がりだしたので、ナマエは諦めて遮断解除した。

『手ぇ出していいって四百万年と三十年前から言ってんだろ!好きにしろよ!カムオン!』

トランスフォーマーに家族という概念はないが、恋人という概念は何故かある。フレンジーとナマエはいわゆる恋人同士であるのだが、しかしどうしようもない問題を抱えていた。


『…四百万年と三十年言い続けているが、全長六mの差がある者にどう手を出せばいいって言うんだ』


フレンジーはカセットロンである。トランスフォームすればカセットテープになるそのサイズは、大体人間の成人男性より頭一つ大きいくらいか。という事は即ち、二人のサイズはあまりにも違いすぎた。

『ヤサシクシテネ!』

『無茶言うな壊すぞ』

『ナマエ優しい。胸きゅん』

『別に身体を合わせなくてもスパークで惹かれあうなら、』

『やーだあああやーだあああ』

『ジタバタするな。ただでさえカセットロンなのに余計子供っぽくなるぞ』

『あ、差別?差別?大人ですー!組み立てられて四百万年と数千年経ちましたー!あとで正確な年数照合しますううう』

『めんどくさい…』

『どうせめんどくさいさ!きいいいいい!』

『サウンドウェーブ、お宅のお子さんが』

『お、チクるかチクるか。こっちだって負けねえからな!サウンドウェーブ!ナマエが俺に手を出さないマジヘタレ!』


『マキコムナ』


四百万年と三十年。その内の四百万年は行動停止していたが、実際に通り過ぎた年数からすれば途方もなく長い間、くだらない口論を繰り返しているものだ。
エネルゴンコーヒーを飲みに来ただけだというのに軽く巻き込まれ辟易しながら、サウンドウェーブは一言だけいって通り過ぎた。チワゲンカハイヌモクワナイという言葉を最近知ったのだ。

ちなみにトランスフォーマー同士の性交は物理パーツでの結合の他に、ケーブルを通してスパークを絡めるという手もあるのだが、それを教えてやるほどサウンドウェーブは優しくはないし踏み込みたくもなかった。


『拡張パーツつけるからああああ』
『つけてどうこうなるサイズ感だと思っているのか』
『ちくしょおおおお!』


あいつらいい加減にしてくれないかなあ。


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