02
「死にたい」
「おう、じゃあとっとと死になせェ、ついでに土方テメーもな」
「俺関係なくねェかそれ」
華々しい高校三年デビューを誓って一日。既に私の花は枯れ落ちようとしていた。そう──テストという名の処刑に於いて。
英語、国語と順調にハードな攻撃を繰り出され既にヘトヘトだった私に、昼休みを挟んで数学による即死級パンチがヒットした。
大問の一つ目からほとんど太刀打ち出来ぬまま回収されていったテスト用紙は、ア●ックもびっくりの驚きの白さだった。
「袋に入れた赤玉四つと白玉二つの中から三つランダムに取り出すの切実にやめて欲しいんだわあと微積分滅びろ」
「ダメアル、名前が壊れてしまったヨ」
現在、テストを終えてそのまま机の上で死亡した私を囲むように、土方、総悟、神楽の三人が集まっていた。
「……神楽だってそんなに点数よくないでしょ」
「私はパピーに『とりあえず点数あればいい』言われてるアル。各教科一点あれば大丈夫ネ」
なんだそれ、点数あればいいって聞いたことないですけど。神楽の父親の教育方針が羨ましい。
そんな神楽に対して総悟は、まだまだだなチャイナ娘、と言った。
「俺ァこの日のためにコツコツ努力してきたんだ。そこそこ良い点取れてる自信あるぜ」
総悟の手首には、何やら文章のようなものが書き込まれている……呪詛?
「総悟、その手首に書いてるのってまさか」
「ご名答でさァ。試験監督にバレない位置探るのに苦労したぜ」
総悟がワイシャツの袖をまくると、数学の公式やら古文単語やら英単語がずらりと並んでいた。悪びれない彼に、土方と神楽が猛抗議する。
「おい総悟テメェこれカンニングじゃねェか!」
「だって真面目にやるよかこっちのがいいでしょ」
「おい卑怯だぞこのサド王子!テメーこのこと銀八先生にチクるからな覚悟しとけヨ」
「ホントどういうモラルしてんのよアンタは!そういうテクニックがあるなら私にも教えなさいよ!」
「いやテメーこそどんなモラルしてんだアホ!」
だってだってー、と駄々を捏ねた。勉強したくないもん。勉強より大事なことがあるっていつだかテレビでやってたんだもん。
「言っとっけどそんな言い方しても全く可愛くねーからな……あのな、後からヒーヒー言いたくなきゃ黙って勉強しとけ」
「それを言ったらおしまいですよ土方くん」
「あのなぁ……」
土方は呆れたように、はあと深くため息を吐いた。そんなに憐れむ目で見なくたって良いじゃない。
「お前は具体的にどこがわかんねェんだよ」
「え?ええっと──」
国語はそこと、英語はあそこと、数学はこの辺が──と、お手上げな単元をつらつらと述べる。アレ、それって最早教科書全部じゃね?とか言ってはいけない。
私の苦手分野を聞いた土方が、思いもよらぬ提案をしてきた。
「なるほどな。そんくらいなら教えれねェこともないんだが」
「え、ホント!マジで!?」
「オイオイ、新学期早々クラスメイトナンパするたァ度胸ありますね、流石土方さんでさァ」
「ナンパじゃねェっての──お前の話聞いててあんまりだと思ったからよ」
わからない所を先生に聞くには度胸がいるし、一人で勉強はやる気が出ない。土方とは多少そりが合わないとはいえ、誰かと一緒に勉強するなら、少しは捗るかもしれない。
「今度のテスト期間──五月中旬だったか、そん時に教室残って教える、それでいいか?」
「ありがたいです!神様仏様土方様!」
大仰に拝んでみせると、珍しく土方は照れ臭そうに鼻を掻いた。
こうして、次回のテスト期間中の、土方先生によるマンツーマン講習会開催が決定したのであった。