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今年もまもなく五月五日が──こどもの日がやってくる。ついでに言うとその日は土方十四郎の誕生日でもある。
互いの家がそこそこ近い土方とは、普段よく一緒に帰ることも多い。本日の下校途中の話題は、連休中にやってくる彼の誕生日についてのものだった。
「しっかし、アンタの誕生日がこどもの日なの本当こう……来るものがあるよね。笑いのツボに」
「……俺だって生まれたくてその日に生まれてきたわけじゃねーんだけどな」
私の軽口につっかかるでもなくため息を吐くあたり、地味にそのことを気にしている節があるらしい。
鬼の副委員長、とも呼ばれるこの男が、空よりたかい鯉のぼりが空に泳ぎみんながちまきたべたべしているような日にこの世に生を受けた、ということを想像するとちょっと面白いものがある。
「まあまあ気にしなさんな。後輩の子が前ギャップ萌えだって騒いでたよ、良かったじゃん」
「別に嬉しくもなんともねーわ」
後輩の黄色い声援にも全く動じない土方さんマジモテ男、と言いたくなったが、そういやコイツ好きな子いたんだもんね。そうかそうか、好きな子以外からの声援はノーサンキューですか。
「あのさ……例の子からは貰えそうなの?プレゼント」
「……んなの知るか」
「もうちょっと頑張ろうよそこは!」
「一々こっちからせがむものでもないだろ、そういうのは」
そこで引いてちゃダメでしょもう、とニヤつくと、当事者でもないくせに何だ、と睨まれてしまった。
「まあ、貰えなかったときには可哀想だし、私が直々にプレゼントを差し上げましょう」
喧嘩することも多いとはいえ、それなりに土方とは親しい仲のつもりだったし、誕生日プレゼントくらいは渡してもいいだろう。まあ、好きな子以外から貰ってもそんなに嬉しくもないだろうけど。
しかし私の提案に対するこの男の反応は、予想外のものだった。
「……マジでか」
「おう、マジです。大マジ」
「そうか……マジでか」
いや前からあげてるでしょ、去年もPQのマスコットストラップあげたじゃん。
珍しく妙に土方の食いつきがいいことに戸惑う。急に目の色が変わったような気がするのですが、気のせいか。
「……そんなに高いのは買ってあげられませんよ!」
「別にお前にそんなお高いモン買ってもらえると期待してねーよ」
「……それはそれで何か傷つく」
まあいいや、なんか欲しいものある?と聞くと、ハッキリとした答えは返ってこない。期待するとかしないとか以前に、そもそも欲しいものが決まってないんじゃん。
「ほら、なんかお菓子とか、ハマってるものとか」
「マヨネーズとかか?」
「家にいっぱいあるでしょ、それは」
「……よく分かったな」
分かるわそんなん、と言いつつ、二人揃って何をあげるべきか、何を貰うべきかと頭を悩ませる。が、やはりこれといってビビッ、とくるものは浮かんでこなかった。
「もういいや、埒あかないしそっちがいいなら直接見に行こう。ゴールデンウィーク中にでも」
「あー、俺は……そうだな。名前が良いなら……俺は別に、それでいい」
「よし、んじゃそれで決定ね!」
もうそろそろお互いの家も近づいてきたので、とっとと話に決着をつけた。まあ別に向こうも一緒に買い物に行くことくらいは嫌がらないだろうし。
「──いや、というかさ?」
なんで買ってあげる前提になってんのさ。まず好きな子にプレゼント貰う努力をしろよ、お前は!むしろ誕生日までに彼女作るくらいの気概でいけよ!
「どうせ貰えねェから、いい」
「いやいやいやいや!」
なんで諦めちゃうのバカなの?問い詰めようとしたところで、タイミング悪く分かれ道まで来てしまった。
「んじゃ、また明日──買いに行く日はそっちに任せとく」
「あー、うん。了解しました……バイバイ」
ひらひらと手を振って去っていくその後姿に文句をいうことも出来ないまま、結局私は土方の誕生日プレゼントを一緒に買いに行くハメになってしまった。