「美味しそう」こんなプレマイ読みたい!!より リクエスト [子犬と戯れる2人がそれぞれ可愛いと思うほのぼの::長編主人公とプレマイのほのぼの日常をもっと見ていたくて、追加させて頂きたいです!笑]








こんな時に限ってオフモードで来たものだから、いつも以上に気を張って声もテンションも抑制しなければいけないってのに、ユメの見せる、うっとり水槽を見つめる目と、溜息にも似た吐息だとか、子犬を見つめる表情が難易度を上げていた。

しかし、ユメも時々子犬みたいなんだよなぁと思考したあたりで、子犬が子犬と戯れているなと思うと、可愛い様な愛しい様な、その一方で見ていられないような感情でいっぱいになってしまう。


不安定な俺の前で遠慮なくユメの唇を奪う子犬と、嬉しそうに喜ぶユメにオイオイオイと割と本気のストップがかかってしまい、当然の事ながらお店の子犬としてもだが個人的には感情論が先走ってユメの口を手で覆ってしまっていた。


まさか子犬じゃなくてユメに手を舐められるとは思わなくて、突拍子もない声が出てしまいそうになるのをぐっと必死で堪える。


そんなユメが目の前で白い綿毛みたいになってしまって、自分の足に飛び付きながらフワフワ転がり初めてからはもう限界で、できるだけ頭のスイッチを切る事に必死だったが、半信半疑でユメを呼んでしまった時、間髪入れずにキャンと元気な返事をしてからめちゃくちゃに愛でたくて仕方がなくなり、脳内で F××king so good を連呼して叫びまくる自分の声を自覚して、感情が今日も緩く崩壊していった。




真っ白の小さな身体、コロコロとした覚束無い歩みで跳ねる、子犬ならではの可愛さに加えて、これがあのユメであると思うと、抱っこしてくれと飛び付く姿も、おいでと呼べば嬉しそうに抱かれに来るところも、指を甘噛みする夢中な姿も、どれもこれも本来の姿で思い描いてしまって口元がだらしなく歪んでしまう。

きっとユメは止めてって叫んでんだろうなぁと思いつつ、もう止める気なんて更々無かった。


ユメが乗ってんだなと改めて感じる重みと柔らかな感触、戻った事を自覚した子犬の余韻で、口元に限りなく近い頬を控えめに舐め上げる色のある仕草を堪能して、次に自分が子犬になったらどう可愛がってくれんだろうなぁと、それはそれは呑気に鼻の下を伸ばしていた。







uh-oh……
Whaasat the heeeell…?

…どゆこと?

ハァァ??!…なんで?

なんで!俺だけ!!!!!
子犬じゃねぇんだよ!!



シューと音を立て始めたのに、座ったままのユメが俺を見上げているとは…一体どういう事だと手足を見ればかなりの大きさがある。


開いた口が塞がらないユメを前に、できるだけ怖がらない様にしてやりたいのに、感じたままに動きたがる犬の衝動は想定外の強さで、人間としての自分の思いと真逆を走っていて完全に分離していた。…寧ろ、敵対に近いかもしれない。


えええ!と叫んだ動揺で、デカい身体が狭い部屋を駆け回ってしまう。そんな俺を落ち着かせようとしているのか、ユメが呼ぶように手を差し出すから、非常に嫌な予感がした。


鼻がユメの手を掠る距離でフンフンとなる。その瞬間 "スキダ、イイニオイ" というバカ単純な二語が頭を巡る。


もっと知りたい
もっとくれ

次々と込み上げる本能に、
喉が鳴ってしまう。


次の瞬間、
座ったユメの足元で、
スカートを食みながら
膝の間に鼻を突っ込んだ。



あああああぁぁぁ!!

ばっか野郎テメェエエ!!!!やぁぁめえええろおおおお!!!!せめて人間の俺だろおおおおバカやろクッソ、ぁぁああああああ!!!



慌てて膝元を抑えたユメは、
空いた方の腕を部屋の隅にあった"店とお客の交流ノート"を手繰り寄せて、紐で繋がれたペンで何かを書きなぐり、俺の前に広げてバンバン叩いている。



…ユメちゃん!!!ユメちゃん!!!読めない!!!読めないんだyooooooooo!!



荒い息遣いを繰り返す犬の自分との攻防戦の果て、一瞬、ユメの顔が近くによった事で別のスイッチが入ったのが解った。



首元がいい匂いだ




マズいマズい、これは。

すくっと方向を変え、
視線はユメの身体へ、
首元へと向かっていく。

俊敏に拾ってしまった衝動はやはり止まらず、クンクンと顔を押し付けて、無理矢理ユメをラグマットに押し倒してしまった。



uh oh……!! Holyyyy shiiiit !!!!!お前がそんな事するから頭ぶつけてんだろうがコラァ!!…くっそ助けらんねぇぇぇ…!…手がねぇえええええ!!!俺の、手がねぇぇぇえ!!Aaaaaaaaa!!!!!!


「アアウゥー!!」




下心だけでなく動揺も拾ってくれたようで、焦りは細い遠吠えに変わって部屋中に響く。そのお陰で異変に気がついたスタッフが突然ドアを開け、隙間からこちらを覗いた。



「どうかしましたか」と遠慮がちに声を掛けてくれたが、逆に、その隙間から少しだけ覗くという行為の不審さが、犬の目には不穏に映るようだった。



組み敷いたユメを庇うように姿勢を低くしたままスタッフを睨み、アウアウと低い声で唸り声を上げ始め、触んなよ俺のだ、てめぇは誰だと威嚇を始める。



「…っす、すいません!」



寝転んだままのユメちゃんは、驚いたスタッフに大丈夫ですとでも言うように指でOKサインを出して、ニコッと笑った。


そしてそのまま直ぐに組み敷いたユメから両手が伸びてきて、首元から背筋、頭や耳をまさぐられ、フワリとしながら圧を感じる気持ちよさに、荒だった犬心がシュンと収まっていく。



「もう少し頑張って下さいね」と言い残したスタッフに向かって早く出ていけと最後の睨みを利かし、そっと扉がしまっていくのを確認した犬の俺は、さあもっとよしよしをくれとユメの胸元に頭を乗せて頬擦りを始めた。



…mm
…これは…堪んねぇな。


両耳の下を、丸めた指で優しく撫でてくれるユメの笑顔に甘やかされ、折角穏やかさを取り戻したと思ったのに、一瞬ニカッと笑ったユメの口元に射抜かれた犬が、ユメの頬をひと舐めし、あろう事か、そのままつぐまれた唇をこじ開けようと激しさを増して、人間の俺は久しぶりに絶叫していた。



aaaaa!!!止めてくれぇぇえええ!!!!犬がユメちゃん食っちまう!!!!逃げてユメちゃん!!逃げろおおお!aaaa!!


そうは願いつつも、
ギュッと瞑られた目と零れる呼吸はそそるなと思ってしまい、激しい独占欲と、好きだ好きだと突き上げる思いが全身に走って、調子に乗った犬はそのまま顔を覆っていたユメの指の隙間から舌をねじ込んで懲りずに頬を舐める。



シューシューと音を出し、
手が人間の形らしい輪郭を取り戻した頃、ユメの頭の下に腕を差し入れて深い溜息をついた。







病室に戻った俺たちは、ベッドに突っ伏したまま、広げたノートを挟んで口論とも言えない静かな言い合いをしていた。



-…ひざしさん、激しい


「sorry、あんなに犬が素直とは…」


-!…素直って!!


「や、そ、そりゃあ…!!…uhhh…まってまって、ユメちゃんだって嬉しそうに」


-そ、!そーれーはー!そ


「…しかたねぇ…よなァ?」



両者とも嘘の感情が湧いた訳ではなく、所詮中の人の奥底にある本音が元になっただけだとよくよく理解しているだけに、唇に飛び付いていった瞬間の感情に、ウッと言葉が詰まってしまう。



-…だって!!…すごく…
-…舐めるし…勢いが…


「…ユメちゃんだってめちゃくちゃ可愛く舐めてたろ…」



二人して何を話しても墓穴しかほれず、言っておいて熱くなり、顔をつっ伏すのを繰り返す。


気持ちは互いに周知の事で、今更すっぱ抜かれた所で羞恥心と嬉しさに塗れているだけで困る事なんて無い。問題は無いんだ。今はまだというだけで、ただ、その先に踏み込みさえしなければ。大丈夫だ、犬には無いものがあるじゃないか。


普段ならブレーキを掛けるムズ痒い熱さを、犬の余韻を引き摺ったままノートを閉じてベッドの隅に追いやった。



「もっかい舐める?」



いつもなら言葉遊びだけの所を、
身体を横に向けて腕枕を差し込み、抱き寄せて手首を握る。


耳の端まで赤くして返答もできないまま、行き場をなくして逃げていく視線。響いてくる心電図のような波形は大荒れしていく。



ああ、俺はこの反応を知ってるんだよなぁ。随分と甘い…これは、Mee too を含んだ受容と羞恥の塊であり、際どい片側の理性だけが一本の線を引いている事を。




「今日は犬ごっこしよっかァ」




犬には負けねぇぞと、嫉妬のおかわりを頂くために頬の辺りから耳朶を舐める。小さく飛び跳ねるユメと、俺だけが聞こえる、ユメの短く弾んだ周波数。

満ち足りた余韻の中からは、本日二度目の F××king so good が聞こえた。





狼をも喰らうもの



――――
ボルゾイ::ロシア語で俊敏を意味する。オオカミ狩りの猟犬。

holy shit:: えっ、うそだろ、クソ!、まずい!、なんてこった!

F××king so good !:: 超いい

What the hell:: なんてこった、どうゆうこと




 






fix you