BGM:Evanescence/Call Me When You're Sober

灯台アラウンド












マイクはキッチンでフライパンを握っていたが、乱暴に捨て置いたせいで、風味付けされた中の物がコンロに散らばっていた。


そして、そうまでして倒れゆくユメを支えようとした手も体も届くことは無く、それを上回る瞬発力で避けたユメは、鈍い水音を立てて倒れ込んでいた。



思わず手を差し伸べたイレイザーは、
反射的に出てしまった手の行き場が無い事に気が付き、そう容易く飲み込めはしない解り切った現実を気まずく受け流すように、諦めた腕を下ろした。



「悪ぃ、遅れた…気を付ける」


「近づきすぎました」



これらの一連の出来事は、
料理をするマイクの背から音に釣られてフラフラとユメが顔を覗かせた瞬間、タイミング悪く傾けたフライパンが僅かな火を拾い、酒の匂いをさせて炎が立ち上った事に起因していた。


そしてキッチンを包む空気が依然として張り詰めたままであるのは、誰の手も届かなかったからではなく、様子を伺う様な面持ちで静かに繰り返す「大丈夫か」「大丈夫です」のやり取りが全く噛み合っていないせいであった。



全ての返答は、問題ない、大丈夫だとハッキリした口調で、心配を突き返すような速度で放たれる。

しかし、冷たさを感じさせるその顔は真っ直ぐこちらを見ず、尻もちを着いたまま床に顔を向けて、目線だけを鋭くこちらへ寄越していた。



「ユメは歩くお魚ちゃんだろ?…その水無かったら死んじまうだろーが。

…yoイレイザー、スーツの耐火性って聞いたか」


「敵を想定してるんだ、大概の火は支障は無い筈だぞ」


「ええ聞いてます。大丈夫です」



凍てつく空気を溶かすようにしてマイクから重い口を開いたが、現状と話の芯に触れても更なる疑問が生まれてくる。

大丈夫と言い張る本人がどうやら "問題ない" 事を知っている癖に、ひとつも大丈夫そうな姿ではない。マイクは思わず生唾を飲んだ。



「あのさ、言ってること違くね?」


「高温で蒸気化すると毒性が上がるので」


その瞬間イレイザーの盛大な溜息が場を塗り替え、それに煽られるようにしてマイク本人も、どくりと胸が鳴るほど衝撃を受けて口を半開させた。



「…マジ?」


「なんで黙ってたんです」



彼女の危惧することを擦り合わせながら過ごした日々を巻き戻すような爆弾発言。こんな重要な要素が今更浮上した事への衝撃はイレイザーも同じようだったが、彼女の言葉はこちらの勝手なショックを幾分か宥めるものだった。



「すっかり忘れて」


「あー…まぁ、水に火はねェしな…」


「海底火口の熱だけですね。でも大丈夫です、そもそもスーツの水がありますし」



この口ぶりは、
火が熱を持つ事を失念した。
そんな所だろうか。


それを聞いて納得したイレイザーは、こんな場合では無いと直ぐに研究班の元へ向かった。



やっと立ち上がったユメは
未だ真っ直ぐにはこちらを見ない。


ひとつも憂いを持たず、
床へ流した目線だけをもって見上げる睨むような上目遣いと、その縮まることの無い妙な距離間が一つの真実を示唆していて、出会いの瞬間から続く相変わらずの彼女らしさに、皮肉を宿した口元が吊り上がった。



「今は近づかないで」


「…まぁそう言うなよ」



一歩踏み出せば一歩下がる。

睨み合う様にして追い詰められたユメは、既にあの瞬間は数分前であるのに、自身が纏う水を温めたように思えて、立ち上った火の回想によだつ腕を撫でていたが、いよいよ行き場を無くして背が潰れ、その腕で口を塞いだ。



「大丈夫なんだろ」


「らしいですね」


「へぇ?随分他人事だな」


「確証がなくて信じ難いだけ」



眼前で見下ろすユメの声は小さい。距離を詰められて逃げた視線は斜め下に固定され、もう合うことは無かった。


へぇとからかい、構わず足元から首まで舐めるように体のラインを眺め、横腹の水膜を指でなぞりながら、固定された視線を遮る様に空いた手で頬を包む。

そうして首と鎖骨が醸し出す鈍色の曲線に頬を寄せ、這わせて、滑らせながら耳元へ行き着く。


「吐息でも殺れちゃう、とかァ?」


「ええ。熱くなれば」


「毒もセクシーさも殺人級…ってわけェ」



腹のへこみを遊んだ指先を膨らみへ、堪能する掌に変えて押し込めば、指の隙間を抜ける様に水と銀が溢れ出る。


「手ぇ邪魔」


皮肉な問いかけに答えは無い。
しかしこれ以上逃げようとはしない距離には答えがある。



「怖がんなよ。こっち向け」



口元を覆い隠した腕に唇を滑らせれば、僅かに眉をひそめてやっと正面を向き、諦めた腕が下がっていく。その瞬間を逃しはしなかった。




「何ともねぇつってんだろ」



見せつけるように出した舌先で唇の山をつつけば、開くように銀のくぼみが水の下で揺らめく。

荒く一息取り込んで息を止め、押し込んで絡め取るようにゆっくりと無の空間を弄べば、舌を擦れ違う水の流れは応答だと錯覚させて、本来の意味を失いかけるほど溺れそうな危うさを持っていた。





「…な。大丈夫だ」


「あら?本当」



唇を離して寄せた額を濡らし合えば、そこに先までの表情は無くなっていて、こちらの焦燥を全く気にも止めない晴れやかさに思わず笑ってしまった。



「よかった」


「おうおう、そんなに良かったァ?」


「ええ。もっと教えて欲しい」


「そりゃあ燃えるね…何が知りたい」


「そんなに沈んだら息が持たないのでは?」


「ハッ、確かに溺れそうだわ」



どこか欲を取り込んで消化してしまうような清廉さに洗われて、ただの愛でたいだけの気持で頬に手を伸ばし、微笑んで見えたユメの安堵する顔付きを撫でようとした頃、"ユメを忘れた" と荒々しくドアを開けたイレイザーが、立て続けに悪態を着いた。



「アイツら人間か?!」


「なんだよ荒れてんな」


「そんなにスーツが信用できませんか?気になるなら水分量最大にして下さいとか抜かしやがった」


「最大ですね。解りました」


「ハーン…性能に自惚れてやがるな」


「本人が安心して使えるように信頼を得る努力も開発には大切では?と言ってやった」


「…でぇ?」


「ではその本人はどちらにいらっしゃるんで?まさかそんなに目を掛けてらっしゃるのに置いてこられたんですか?だと…あんの怠慢野郎共…!!気休めはいらんから数字を出せ!」


「一緒に行けばよかったですね、すいません」


「動揺してるのに無理に引き摺って行ったりしません」


「いちいち角のたつ奴らだな…」


「挙句こう言いやがったんだ、

"つまり蒸気化した場合の周囲への影響ですか?陸上で蒸気化する事があるとすれば水がない状況という事になります。猛毒になる前にユメさんは死んでいるのでは?" 」


「ア?………顔見に行ってやるよ」


「実験なんて言い方した時から気に食わなかったんだ。奴ら配慮が無さすぎる」


「気にしてませんよ」


「そういう問題じゃありません」


「上等だ…行ってやろうぜ」


「あの。大丈夫です」




自身の中ではもう不安は拭われたのに、首をカタカタと振りながら指の間接を鳴らし始めたマイクと、憤慨しながら目が座っていくイレイザーを見ながら、これは困ったと思いながら開発の元を訪れたが、船室での様子とは打って変わって、二人は冷静さを保っていた。




「熱で毒性が上がるそうですね。それについて伺いたい事が。病気にかかったりしますか?高熱で倒れるとか」


「ありませんね。そういう仕組みではないのだと思います」


「では外部要因だけですね。あ…お二人は戻って頂いて構いませんよ。本人が居ますし」


「ア゛?」


「情報共有は基本です。チームなんでお構いなく」


「そうですか…ではユメさん。数値を出すなら実験は不可欠です。例えば徐々に強まる火をくぐって頂くとか」


「…サーカスじゃねぇんだよ…はっ倒すぞクソ…」


「…聞こえてますよ。…この通り明確に示せと言う割にお二人が難色ですので、感覚での基準をお伝えします」


「はい」


「スーツの沸騰、そこが限界です。なので冷却システムも改良に入れて耐久値を伸ばします。これでいかがでしょうか」


「充分です。本当に感謝します、いつもありがとうございます」


「いやぁ、はは、嬉しいですね。よかったらまたいつでも来て下さい。そちらと違って此処は静かですから」


「可哀想に。ではまた二人と来ます」


「…」


「HAHAHA!!!」


「フ…、…また来ます」



機嫌が良さげな二人の背を追いながら船内の廊下を歩くこの瞬間も、すぐに過ぎては後の事となる。それを惜しく感じながらも、足は弾む口笛に乗って颯爽と前に進む。

そして連なる窓の外に繰り返し映る、灰色に渦巻く空を眺めた。




「久々にシケてんな」


「魔の海域なんて呼ばれてんだ。今まで運がよかっただけだ」



船室に戻り、昨日のポイントを通る船があるか問い合わせたが、そもそもそこは航路ではなく、更には昔から "避けるように" 勧告されているエリアであると告げられて、イレイザーは通信を繋いだまま、水鉄砲でユメの横腹に向かって水分充填して戯れるマイクと、それを無視して自分が放置したままの猫動画を眺めるユメをちらりと見た。



「何故そんな勧告が?」


-出るんです。


「は?何がです?」



-何か、です。

-昔からあそこは通るべからずが海の男達のルールらしく、誰も足を踏み入れないものでデータを遡ってもヴィラン照会も過去の事件照会すらできません。



「…そうですか。ありがとうございます」



目が合ってから通信を横聞きしに来ていたマイクは、そこまでを聞くとイレイザーが持つ受話器から耳を離し、ずらしたヘッドホンを付け直した。



「肝試し、ね。OK」


「面倒だな」


「さて行きますかァ」


「我々ではありませんように」


「ナイス煽りだな…ユメちゃん。…怖かったら俺に飛び込んでいいからな」


「はい」





曇天の空はゴロゴロと稲妻を隠した様に響き、荒立ち始めた波でボートは小刻みに跳ねる。

二人の間で身をかがめていたユメは、見慣れたボートの、メーターが並ぶ盤を見て首を傾げた。



「いつもと違います」


「げ…コンパス回ってんだけど」


「昨日のポイントがズレるな…」


「なら私が。下の道を見るので着いてきて下さい」


「待っ…………最後まで聞かない奴ばっかりか」


「まぁまぁ…見てみろって。さっすが我らのおサカナちゃん」



一旦海底へ消えた緑の光は、
飛沫を上げて走るボートの少し先へと浮上し、先導するようにして水面ギリギリを走った。

曇天な上に空から落ちる細い斜線のせいで視界も悪く、景色から場所を読み取るのは不可能だった。
だから雨か霧か飛沫か、空の色を移したようなモヤの中で導くユメの光は、二人に思わず笑みを浮かべさせる程だった。




「見えました、あの中です」



モヤを抜け、僅かに天候が変わったその海域には波が無い。頭上の灰色をそのまま残し、前方の異様なエリア一帯の海面には、モヤに代わって土埃のような濁った煙が立ち込めている。

そしてその中央から突き出す形で、球体をぶら下げた棒のようなものが顔を出した。


棒の根元と思われる部分に吊られて揺れるそれが頭蓋骨であり、その棒が船首の女体像の胸を突き刺す槍である事が目視できる頃には、幾つもの帆が煙を抜けていた。




「…ガレオン船、か?」


「oh......ガチもんのGhost ship」


「異臭がします」


「…きっついな………おい!イレイザーあれ!!」



船体の横から網掛けのロープが幾つも垂れ下がり、その中腹の船壁から伸びた一枚の板の先に、目隠しをされて手足を縛られた人が立たされていた。



「要救助者発見」




少しずれて響いた板の軋む音に目線を上げれば、船上から顔を出した人物がこちらを見下ろし、慌てた様子で奥へと走っていく。



「お終いかぁ……お終いかぁ…さらば俺の船と宝よぉ………」







「あの爺さんが首謀者か」


「あわてんぼうか?逃げたぞ?…見た目とギャップあり過ぎィ…なんでこんなコミカル?」


「ギャップ萌えですね」


「ユメちゃんそれは違う」


「てめぇは何教えてやがんだ…行くぞ」



横に着けた直後、要救助者を保護しに飛んだイレイザーはマストへと布を絡める。

そして船体横のロープ網から乗り込んだマイクとユメは、その異様な雰囲気に暫し息を飲んだ。


朽ちた板間の所々は無理やりボルトで止めたような鉄板になっており、船上のほとんどは無数の頭蓋骨で溢れていた。



「…腐敗臭ってか」


「変なニオイ」



口元を腕で覆うマイクは、辺り一面を流し目で捉えながら首謀者へと歩む。

要救助者を抱えたイレイザーはその背後に滑り込んで合流し、ぶつかって転がした幾つかの髑髏の中からは、飛び出た鼠がまた別の骨へと走っていった。




「怪事件の犯人はテメェか」



梶の側、腐りかけた横倒しの酒樽に項垂れる失意の首謀者は、人生の最後を思わせる様な諦めの加えタバコで泣きごとのようにボソボソと口を開く。そしてその背後、柱の影にはもう一人の、縛られて転がる要救助者がいた。



「乱暴しねぇでくれぇ…抵抗なんてしねぇよ…もう充分生きたんだ…俺はただのアンティークコレクターさ。頭蓋骨が欲しかっただけなんだ…」


「趣味わっる」


「人の趣味を笑うなよ兄ちゃん」


「勘違いすんな、ドン引きだわ」



全てを投げ出した様な男は両脚までも投げ出して、一度タバコを口から離すと転がってきた酒瓶に口を付け、最後の一人語りを続けた。


「誰それ構わず殺ったんじゃねぇよ?…迷い込んだだけならいい、肝試し気分で乗ってくる馬鹿を頂いてただけだ」


「続きは聴取でドーゾ」


「落とそうとしたのは要らないと」


「より形が良い物を選んだだけだ…女と同じさぁ…解るだろ兄ちゃん」



男の白髪混じりの髭に覆われた口はにぃと開かれ、床を這わせるような視線の先には、マストからぶら下がる頭蓋骨を訝しげに見つめるユメが立っていた。




「セクハラしてっと目潰すぞジジイ」


「確実な救助をしたい」


「…わーってる 行け」



男がしゃがれた笑い声を響かせ、
空になった酒瓶をまた転がし、タバコを加え直すその間に一人目の要救助者を抱えたまま髪を逆立てたイレイザーは、大きく脚を広げ、滑り込むような一瞬で赤の閃光を走らせながら男を睨み、背後の二人目を抱えて船壁を飛び越えた。



マストから垂れるロープ、その先に吊るされた髑髏は隣合ったものと揺れながら、赤子の玩具のように音を立てて揺れる。


変なニオイ。
自身が発した言葉を反芻していたユメは、揺れる骸を見ながら記憶の中では無数の景色が巡っていた。

ニオイが変…ではなく、
変なニオイなのだ。

腐敗臭にしては疑問が残る。
なにか混ざったような、
その混ざり気が記憶を遡らせる。


「岩…の匂い」


自分で発した独り言のような呟きは思考を加速させる。そうして飛ぶような速度で回想が行き着いたのは、海底火山地域に広がる岩窟の風景。




「っ!…腐敗臭じゃない!!!!ガスです!!!」



「場所が無くてな…そんな幾つも要らねぇんだよ」



ユメの叫びと、始終へらへらと笑っていた男の目が開いて無になったのは同時だった。



「…ひとつでいいんだ」




「マイクさん!!!」

"逃げて"




その続きを発する事が出来なかったのは、振り返った先のヒーローの背が、躊躇いなく敵へ向かって駆け出していたからに他ならない。

そして男の手には、最後の嗜好品のタバコと、いぶし銀のジッポが握られている。


ユメの声を聞いて男の手元に気が付いたマイクは、声で飛ばせば床の鉄板に落ちて火花で引火すると踏んで、男の手ごと握り潰すために駆け出していた。




「お前…良い形だな」



あと少しと手を伸ばしたマイクの差し違える視界に映りこんだのは、ニヤリとした男の顔だった。




指で弾いた蓋がカンと響く。

呟くようにせせら笑う男の笑い声が反響しながら脳にこびり付いて、足の脛から太腿、腹を登って腕から首筋に至るまで、体液の流れを無理やり逆撫でるような鳥肌が走り、気分の悪さに目が開いていく。

身体を液化させて走ったユメは、柱と樽を縫う様に避け、瞬時にマイクの足元から人型を成型した。




「テメェの頭飾ってろ」
「一際美しいのでお高いですよ」
「骨董品は持ち主を選ぶんだ。悪いな」




銀の火種を握るマイクと、

その手を掴んだユメ。

帆から逆さ吊りのイレイザーは、
その後ろから目を光らせる。


四人の周りには水しぶきが飛び、
振りかぶったマイクの右腕は、顔をしかめる男を船の端まで叩き飛ばした。





「…激しいハグじゃん?」


「飛び込んでいいのでは」


「アレェ?怖かったの」


「いえ。貴方に大丈夫と教わったので」


「じゃ…なんで真顔?」


「ヒーローの手は焼けないのですか」


「あぁ…んな事気にかけてたら守りてぇもん守れねぇよ」


「よく分かります」


「ナニ…心配しちゃった?」


「少し気分が悪いです」


「シヴィなおい!なんでェ!」


「はぁ…痴話喧嘩は後にしろ」




救助者を乗せたボートへ戻る頃には辺りの煙は晴れ始め、遠くには海上保安のパトランプが光っているのが見える。


無事に救助者と敵を引き渡し、
異臭の海域を抜けた船上で大きな深呼吸をしたマイクとイレイザーは、目も合わせていなかったが、少しもずれること無く掌を打ち合い、ユメはその風景をぼんやりと見詰めていた。



「ユメも来いよ」


「触れられませんよ」


「やっとけェ。俺らが寂しんだよ」


「…では甘えまして」



マイクが掲げた掌に向かって手を打ち付けると、顔に向かって水が波のように降り掛かった。



「寂しくなくなりましたか?」


「あーあ。びっしょびしょ」



マイクの髪はしなだれて沢山の水を零し、そのあられも無い姿にユメは笑い、釣られたマイクも嬉しそうに歯を見せる。



「マイクさんお顔無くなりましたね」


「お化けだぞぉ」


「…お化け?」


「おかしいな…結構色んな人嬉しそうに笑ってくれんだけど」


「そうなんですね、覚えておきます。
イレイザーさんも用意はいいですか」


「……………」



はぁ、と大きな溜息をついたイレイザーも既に笑ってしまっていて、仕方無い風にだらりと上げられた手には、また更にユメの水が掛けられた。



「言わないんですか?」


「……どうも、お化けです」


「ふふ」


「Whhhhy!!!なんでェェェ!イレイザーの時だけウケんの?!!!俺の方が面白かったろー?!!!」


「嫉妬は醜いぞ」




空は晴れ、波は凪。

いつ来るかもしれない夜のため、戻った船室で転がり合った三人は、掛け流した猫の戯れを耳にまどろみながら、丸窓からそよ吹く潮風と柔らかな日光を浴びてゆっくりと瞳を閉じた。



灯台アラウンド

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