BGM:ネリー・ファータド / TRY


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お題
ホークス+
普段愛情表現してこない系夢主が愛情表現してきた
+
ブルーハワイ稔さんとお題二つずつ出し合って四つのお題を入れて初ホークスを書く[稔さん コナン 腸骨][オル 口説き文句 卵]

オルタナティブヒーロー








作中の世界は争いが絶えず、荒廃していた。
その世界の中で、どこよりも取り残されたように穏やかな島がある。主人公の女性はその島で暮らし、近隣の村人は皆それぞれの明日を乗り切るだけの生活を送る。一面の小麦畑が穂を垂れる、そんな温かさを残した掠れた風景だった。

畑を耕し家畜を育て自然の恩恵と共に生き、一見退屈に思える平穏の中で、主人公はラベンダーを乾しリースをこしらえ、玄関先のポーチで編み物に勤しみ、時々昼寝をする。

ささやかな楽しみを見出しながら島で生きる事を、誰も苦痛に思いはしていないようだった。狭いと感じた者はみな外の世界へ出て行くから、故郷を愛し捨てられなくなった者ばかりがぽつぽつと残る。



隣とは言い難いほど何百メートルも離れた家の主は、麦畑の世話が忙しいわとそればかり話す。また彼女の裏とも言えぬほど離れた所にある裏の家には古い風車小屋があり、そこを守りながら住まう女は痩せっぽちの黒い犬と暮らしていて、毎日古い風車のどこかを修繕するために木材と金槌の音を響かせている。時々あおんと吠える犬の鳴き声が遠くから響いて、代わり映えの無い日である事を告げる。
セリフもない映画の中で、いつも主人公は誰かの帰りを待ち侘びているように見えた。

彼女はお気に入りだとよくこの映画を再生する。
最後まで見終えたことがない自分はその結末を知らない。ただいつも、争いの中で護られて暮らす一人の女と、この部屋に良く似た小麦色の郷愁だけが頭に残るだけだった。

主人公がこさえるリースや編み物は、隣の彼女に当てはめるとするなら、彼女の得意な謎解きやクロスワードであるかもしれない。映画を見ながら、料理を作りながら、彼女はいつでもその手に謎解きを広げていた。

「久々に会えたのに。もう少し見てくれません?」
「知らないだけ、いつも見てますよ」

ノートを閉じた彼女は、隣合って座るソファで膝にかけていたブランケットをめくり、胸元に甘える様に擦り寄って二人ごと包もうとする。自分に触れるために無理やり身体を曲げた腰骨が、感情をあまり映さない彼女の希薄さから浮きたって妖艶に見えて、思わず手を伸ばした。

「大胆な誘い方。いい感じにヤラシイですよ」
「そんな。貴方の方こそ」
「ちょ、突然めくらんで寒い」
「この骨は男の人の方が美しく見える」
「こしょばい。遊んどーとー?」
「愛でてます」
「…誘っとーと?」

幸か不幸か、街での事件の幾つかでいつも彼女は居合わせるか被害者で、何度となく危機から逃がす度に軽口を叩き合い、綻び合ううちに、こうしてこの部屋を訪れる様になった。

いつもそこに居るから。
窓があれば。空があれば。

互いにそんな安心感を持ったせいか、またいつかを約束した事は無い。ただこうして迎え会える日を、いつも待ち侘びたように温め合って眠る。
彼女は伸ばした指先で肌を擦り上げ、頬をひたりと付けて目を閉じた。伏せた睫毛と閉じられた唇は相変わらず、あの映画の玄関ポーチでドライフラワーを手に眠る主人公の様な静けさでいた。


来る日も来る日も畑を耕し、家畜を育て、自然の恩恵と共に生き、退屈に思える平穏の中でラベンダーを乾し、リースをこしらえ、玄関先のポーチで編み物に勤しみ昼寝をする。そうしてささやかな何かを見出さねば、待ち侘びる苦痛を逃せやしない。
危機の中で何度も逃がし、度重なる偶然を必然と笑う、子供なようでナンパな英雄が空から落とした本を拾い上げた女は、そんなある日の苦痛しのぎな道すがらで立ち止まり、ページをめくる。

不穏の渦中に巻き込まれ、いつもそこに居る。
察しの良いミステリ好きな女は、
またひとつの謎を解読した。

「何か、起こるの?」
「こんな所で会えてラッキーです」
「そんな子供騙し」
「子供だなんて。魅力的な女性だと思ってますよ……何度だって抱きたいくらいに」
「嘘だと確定したわ、今」
「何故です?」
「会えなくなるかもしれないじゃない」

女は開いたままの本を突き付け、走り去った。
男は、女が僅かに見せた激情の端くれを、丸が付けられたページに閉じ込める。男の脳裏には、いつまでも女が愛した映画が浮かんでいた。



空っぽの平穏を苦痛がなびくようになり、女は朝食の用意を整えながら1人立ち尽くす。僅かな音でも耐え難いのに、胸のざわめきを逆撫でするように鳴ったキッチンタイマーが、衝動だ、喚け、騒げと喋る。

エプロンのまま駆け出した女は、靴も履かずに玄関を飛び出した。エレベーターには見向きもせず、高層階だと言うのにわざわざ階段を昇りたがる衝動を尊重。同じ場所を旋回する風で高度を上げていく不思議な空間の中で、頭も、酸欠の胸も、赤い翼でいっぱいでいた。

重たくなる足はやっと屋上への最後の階段を踏む。鎖をまたぎ、立ち入り禁止のフェンスを超えて、端から助走をつけた女は、全速力で空へ飛んだ。

歪んだ視界はくすんだ街をぐにゃぐにゃに曲げていく。男が見せた真っ直ぐな空とは程遠い、汚れた物に映ってしまってどうにも目に染みる。ここには容赦のない風の抵抗から護ってくれる熱さも無くて、空があれば彼は居ると知りながらも、女は遅いわよと呟いた。

「ちょっと遅かったですね、すいません」

鮮やかな赤い羽でピン打ちされ、女の身体は宙に留まるようにして止まる。もうそんな必要も無かたったが、男が丁寧に抱き上げなおせば、女の目からは沢山の涙が溢れた。

「エプロンですか…朝ごはんは何です」
「ベーコンエッグにしようと思って」
「それはご馳走になりたい」
「でも茹でてしまったわ、あなたの事考えるうちに。全く別物になってしまった、いつもそうよ」
「さてはそれで、爆発して空へ飛ばされたんですね」

普段の軽さを掛け合いはするが、
そこに陽だまりの彼女はおらず、我儘に溢れる涙に胸を熱くした男もまた、普段通りにとは居られず。女を抱いて二人の郷愁のベッドへと飛んだ。

映画を最後まで見ていられない事が腑に落ちる。
どんなに痛んでも護らねばならない。彼女が我儘を叫べるほどの、味を失ってまで舐める続けるような僅かな温もりではなく、この愛を持て余すほどの世界へ。

「誰でもできそうな事でも最初に行うのは難しい」
「コロンブスの卵ね」
「必ず戻ります」

何度も温もりを分け合ったベッドへ彼女を乗せ、
男は両翼を広げた。

「だから、最速の俺が」

天井から舞い散る赤い羽根が、女の涙を拭う。
愛してると、初めての約束を耳に残し。
その男は窓の外へ翔け、群青を赤く染めた。

【オルタナティブヒーロー】


コロンブスの卵:誰でもできそうな事でも最初に行うのは難しいという事。

オルタナティヴ:「もうひとつの選択、代わりとなる、代替手段」という意味の英語の形容詞。
大手レコード会社主導の商業主義的な産業ロックやポピュラー音楽とは一線を画し、(時代の流れに捕われない普遍的な価値を求める精神や、アンダーグラウンドの精神を持つ音楽シーンのことである)

┈┈以下┈┈
お題を出し合う二人の様子のあとがき。
なんでも許せる方のみどうぞ。












(初めましてぇ!からのゲラゲラな流れがあった)

オル「お題、二人で二つずつ出しましょっか」

ピーピーピーピー

稔「あっ…すいません…ゆで卵が」

オル「は…?…ゆで卵」

稔「茹でちゃったんです。忘れてて、キッチンタイマーが」

大爆笑のオル「いや、いんです、全然幾らでも茹でてもらって…でも、そんなオモロいことされたら…お題が玉子になってしまうやんかあああ!!!」

数分後

オル「じゃ、お題一気にドンね。口説き文句 玉子」
稔「ドン! 腸骨 コナン」

沈黙と爆笑を繰り返すオル
「えっ…あっ…読めない!腰のセクシーな骨ですかね…解りますよ、分かりますけど…この…コナンは…一体どういう(やばいやばいやばい変なの混ざってるどうすんねんこれ大事件やんけファー)」

稔「や、お題なんか無いかなって…周り見渡したら…コナンがいたんで…いけますかね大丈夫ですか?いけますか?」

オル「行きましょう(コナンの後ろに絶対壁とか他のあったやろおおお!すんごい笑いから巻き起こしていくな…これはミラクルするしかないな…)」

数分後

稔「できたぁ」
オル「ギブ」

 


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