たとえどんな投稿がこようとも…
書いてやろうじゃねえか…
どんな無茶ぶりも応えて見せるっ…!

そんなスタンスで、
無茶ぶりリクエストに対し、
1000文字前後の全力で
3人の管理人が挑みます。
−企画 panic room!−
第二弾 採用お題
【マルコがヒロインに甘えたら】






明日には立つ宿屋だってのに、
花なんか買ってしまった。

更にはそれを、わざわざ買った花瓶に生けたりして。今はその硝子のくびれに無意味なリボンまで結んでいる。


後はお皿に山盛りのマシュマロ。
ふわふわのピンクと白、
…そうだ。苺も乗せとこう。




コンコンコンと、
3回ノックが鳴ればアクション開始。



「はぁい」


間延びした声にハートをつけて。
ドアスコープから反応を覗き見。



「帰ったよい」

「おかえり、まるちゃん」


にかっと笑えば顔面崩壊を起こす君。

だらしなさ過ぎるよ。
隊長様ともあろう方が
ハニカミ全開だなんて。



「ご飯、できてますよ」

「その前にしてぇよい」


抱きつく腕に手を添えて。取り敢えず、ここは断るのが暗黙のルール。



「今は我慢しようね」


「できねぇ」


フライングする手を宥めて。

すらっとしたその立ち姿を、私なんかを抱き締めるために一生懸命折り曲げているんだなぁと、これ以上笑ってしまわないように目を閉じる。



「だーめってば。ごーはーん」


「解ったよい」


「わっ!…脇腹はダメって!!!苦しい苦しい!!解ったごめんギブ!!!」



そのままベッドに転がされ。
向かい合って倒れ込んだらもう、糖分過多の小芝居はそろそろ限界だった。



「どうだった?新婚のフリ。すんごい痒かったわ」


「悪くはなかったよい」


「またまたー。凄く楽しんでた癖に」


「やっぱり腹減ったな」


「無理だよここキッチンないし。マシュマロしかない」


「そんなもん食えねぇよい」


「……マシュマロ、欲しいヨーイ」


いつも通りに戻ってしまった、素直じゃない口の両端を片手で鷲掴みにして声を当て、すかさずマシュマロを一掴み入れてやった。


「やめねぇか!」


すると突然の奇行に大笑いしながら、入り切らなかったマシュマロを顔に投げつけてくる。


「いやぁ、傑作」


口元を拭う様子をゲラゲラ笑っていたら、仕返しとばかりに「マシュマロ欲しいヨーイ」と両頬を鷲掴みにされ、私はそんな事言わないからと文句をいう前に、大量のマシュマロを突っ込まれた。



「!!!!」



口元を隠し、それでも耐え切れずに軽快な笑い声を拳にぶつけるマルコは、珍しく爆笑。



「だから好きじゃないってコレ」


「じゃあなんで買ったんだよい」


「だって可愛さの象徴じゃん。甘甘ごっこするなら必要かなって」


「あの花は?」


「普段花なんて買わないから。…たまにはと思って、何となく」


「花瓶のリボンは」


「買った時に付いてたから」


「へえ。花束で買ったのか」


「うんそうだけど」


あれ、おっかしいな。
誘導尋問されてる。


「苺は?」


「万が一食べた時の口直し」



じゃあ頂こうかねぇ、と。
くわえた苺から緑を外し、そのまま唇が重ねられる。

この人が今何を考えているのかまでは解らず。そんな私を置きざりにして、満足そうに微笑む顔は演技の筈だったさっきよりも、数倍だらしなかった。




「ああ…もう何もいらねぇよい」



しかし小芝居は終わった筈。

胸元に顔を埋めてグイグイ締め上げてくるこの男に、船上ではあまり触れ合わない私は、密かに絶命の危機を迎えていた。




【致死量のマシュマロ】



溺死しそう。
私に溺れる君に。

 


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