企画45min.より
国語辞典・本のページ数を
指定してもらい、
出た単語をテーマにして
「45分以内を目標」に
指名されたキャラで書き合う
お勉強企画。

辞典お題【エンドレス】




気温39度、いつも通り灼熱の太陽が照りつける。

夏島、夏生まれだけど暑いのは得意じゃない。島のそこら中に生える向日葵だって、観光客はこぞってここのはピカイチ美しいとか言うけど、雑草にしか思えないほど好きじゃない。


でも今この瞬間、
全部を決定的に嫌いになった。




「今日、立つ事になった」



この人がその雑草レベルの向日葵を、しかも決別の花束としてくれたから。




「ああ、そうなんだ。ていうかもう少しましな花無かったの?」


「綺麗な花はこの島にこれしか無いだろ」



皮肉だと、
胸のうちで舌打ちひとつ。

それって結局半々じゃないかと言われるかもしれないけど、それじゃ片付かないくらいこの気持ちは50/50なんてもんじゃなく、嬉しい100、憎らしい100だ。

いつでも来てくれた君が遂に行ってしまうなんて、衝撃に手が震える。でも私は、思いを腐らせてきた分だけ大人しくはしてやらない女だ。


「知ってると思うけど」


私サボが好きだよ。
平気でさらっと言ってやったけど、暑さにそぐわない涼しげな顔に見えるのがやっぱり憎らしい。困った様にも見えるけど、それは100嬉しいと愛でる顔だ。涼しげなのは置いていく覚悟のせいだろう。


連れてけと我儘を言ってみれば、ムリだろうの意味が篭った笑いを零して、世界へ出る目的と覚悟を問われた。




「この島もこの暑さもうんざりなんだよ。その向日葵も大嫌い」


君のいない世界はつまらないんだ。だから目的も覚悟も全部君の存在理由に託す。



「連れてかないと許さない」



気丈に気丈に。そう心がけたけど、強気に出てやったけど、やっぱり駄目だった。震えそうになった喉がバレてやいないだろうか、こんな時に泣く女にはなりたくないんだけど。


少し間があった。サボは少し遠くを見て。多分、水平線の向こう側を見ているんだろう。そして私を見ずに、ふと。自信に満ち溢れた表情で笑った。



「精一杯、平穏な日々へのチャンスをあげたつもりだけど。俺もこれ以上はね」



ユメがいない世界はつまらないから。そう言って彼が振り返ると、後は驚くほどに全てが駆け足だった。

出航寸前なんだと言う暴露に、こうなることを予想した彼が見え隠れしていて。すると、飽きる程見慣れたあの花が突然大好きになってくる。
手を繋いで飛び出したけど、自宅のテーブルに置き去りにした向日葵の花束を思い出して、慌てて取りに戻った彼も勿論、世界で一番。




「やっぱり大好き」




手を引かれて、
小走りに抜ける故郷にさよなら。
私もう帰りません。



エンドレスサマー





エンドレス:終わりのない。

 


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