企画45min.より
国語辞典・本のページ数を
指定してもらい、
出た単語をテーマにして
「45分以内を目標」に
指名されたキャラで書き合う
お勉強企画。
辞典お題【呪い、真空管】
ああまた。
異様な空気に第六感が揺さぶられる。見えもしない何処かから、煙に乗って漂う、不思議な何か。
呼ばれる様に甲板をさ迷い、
ぐるりと見渡せば、宴に明け暮れる家族達の合間を縫う白い糸。宙に輪を描くそれを半無意識でたどり、ゆらゆらと行けば、座り込むイゾウ隊長の瞳が、同調指示管の様にぐわりと開いた。
「…おいで、ユメ」
体が勝手に探してしまったのだと、いつも声を掛けられてから気付く。ハイとも言えず、しかし、にじり寄って行く爪先は、本当は危険な何かを察知しているのだろう。
「酌をしてくんねぇかい」
すらり伸ばされた手は毒牙のようにも感じるが、もう既にこの圏内では、糸煙が私を縄のように巻いて離さない。次の瞬間にはその手に誘われ、彼の懐に落ちてしまう。
「なぁ、もう何処に居たって解るだろう」
最初はお酌だった。
ハイと近づき、注ぐだけの。
しかしこの目は怪しげに、決して触れもせず心臓を揺すった。沈黙と言うには心地よい静けさで私を包み、すとんと落ちる低音を、時々耳元に囁いて。その間に間に鼻腔から麻薬を嗅がされていたのだとも知らず、謎取り巻くこの人の中身を、ただ呑気に考えていた。
「好きだろう、俺の目が」
それが今や、
手招く白い手は簡単に私を捕まえる。懐に閉じ込め、決して逃がさぬ緩やかな拘束で、温度という新たな麻薬を与え、頬を撫でる手の甲は、簡単に目線を攫っていく。
くいと顔を上げられればもう最後、私の呼吸は赤い紅に重なり止まる。
甘い煙は香っても、酒の匂いなどしない。酌などと見え透いた嘘と知りながら無意識に呼ばれる身体、無意識に誘われる心。らんらんと光る瞳孔に捕らわれた意識はもう、彼の胸で踊るしか無いのだろう。
【マジックアイ】
【呪い(まじない)】
神仏その他不可思議なものの威力を借りて、災いや病気などを起こしたり、また除いたりする術。
【マジックアイ(真空管)】
昭和20年代後半のラジオで使用されていた、緑色に光る目の様な形の同調指示管の事。
ラジオの受信強度や同調状態、 出力信号の強度などを蛍光表示する。目的は受信感度がもっとも強くなるポイントにチューニングダイヤルを合わせやすくするためである。視覚で確認しながらのチューニングは聴覚に頼った操作よりはるかに確実である。
上部のターゲットと呼ばれるお皿の内側に、蛍光物質が塗られており、ここに電子が衝突して光る構造になっている。ラジオが放送局を受信すると、表示面の陰の部分が閉じて同調を示す。