国語辞典・本のページ数を
指定してもらい、
出た単語をテーマにして
「45分以内を目標」に
指名されたキャラで書き合う
お勉強企画-45min.より

辞典お題【頭文字】
※現パロ








入学したばかりの大学の食堂でランチを食べていた。一人きりなのは初対面でキャッキャとはしゃぐ乙女声と同様、高めのテンションについていけないから。そんな輪の中に居ると、いつも以上に退屈度が増すのは目に見えている。

すると、隣の席に滑り込む様に男が滑り込んできた。


「お前一年だろ」


何故水色。
なんだその…顔。
…というか出で立ちというか…全部。

確かに色んな人が居るけど、ここまで派手な人はまぁいない。少し学食の注目度が上がった気がして、私の面倒くさ度数もぐんと上がった。
きっと、さっき続けざまに渡された新入生狙いのサークルチラシをトレーに置いていたから解ったんだろう。

多分マジック系のサークルだろうか。そう風貌で決め付けて、絶対に無いわと、内心笑っていた。



「わーすごい、大道芸サークルか手品サークルか何か?」


「ハズレだ…得意だがなぁ!見てろお」


そのまま適当なテンションでさらりかわす…つもりだったのに。何故か盛り上がった男は一人、大声で叫び、小道具らしきものを散らかして、勝手になんとかフェスティバルを始めた。

ああしまった、
とんでもなく面倒くさい。
さっさと断って
どこかに行ってもらわねば。


「で、要件は」

「俺らと仕事しねぇか」

「…サークルじゃないんですか?」


大きな声じゃ言えねぇが。
ニヤリと大袈裟な顔で声をひそめ、学生じゃねえよと驚きの一言が、肩の近くに落とされる。

てっきり勧誘かと思ったが、それどころか学生ではないと言う。するとOBか部外者か…まあ、隣接した別の学校との合同行事が多いから、部外者が居た所でおかしくはないけれど。いずれにしたって謎だらけだ。


「小遣い稼ぎくらいにゃなる。お前みたいな一人身は退屈が嫌いだろう?なあ?」

「どんな仕事ですか」

「なんでも屋と探偵を足したようなもんだ。なあ、乗らねぇか?サバイバルは中々に楽しいぜ」


その二つを足して
どうしたらサバイバルになるんだよ。

「考えます」


断りはしなかった。
謎ばかり残されて少し探りたくなったのかもしれない。SNSのIDを書いて渡し、そのまま食堂を後にした。




週末、日曜日。
部屋のベッドでアイスを食べていたら携帯が鳴って、通知を開けば、突然表示された添付画像に思わずアイスを落とした。

赤い髪の男と、食堂のあの人だ。
どこかのユニットみたいに洒落たその写真は、彼らの勧誘する「仕事」のチラシといったところか。



''やるのか、やらないのか。
これは名刺替わりだ''

画像の直ぐ下にそう一言、
メッセージを受信。


色違いのTシャツには2人の名前らしきロゴが入っていた。左はシャンクス、この人は…。

多分アングルだけはこだわったんだろう。名刺替わりとか言っといて、カッコつけたポーズのせいで、この人だけ肝心な名前が頭文字しか解らなかった。


やぁ…ホント…呆れるほど
何処までも馬鹿な男だ。

そう思ったら、シーツにアイスを零してそれどころじゃ無いんだけど、慌てた気持ちが薄れてしまって、笑っている自分。


私の日々は中々に平穏だ。
だから、この謎だらけのぶっ飛んだ馬鹿をしばし、側から観察してみるとしよう。


''やります。食堂のユメ''


そこに自分の頭文字を付け足して。
退屈しのぎには持って来いな、
この''B''という男を。

静かに追跡開始だ。



【Bという男】


【頭文字】
欧文で、文の初めや固有名詞の初めなどに用いる大きな字。花文字。イニシャル。

 


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