たとえどんな投稿がこようとも…
書いてやろうじゃねえか…!
どんな無茶ぶりも応えて見せるっ…!

そんなスタンスで、
無茶ぶりリクエストに対し、
1000文字前後の全力で
3人の管理人が挑みます。
−企画 panic room!−

第二弾 採用お題

【少女漫画的出会い方を、
五番目ぐらいに好きな
キャラで書いてください】
+
【映画の雰囲気パロ】

:空から降ってきた





河の橋の中央へ向かって歩く道中、今しがた追い越したばかりの荷馬車の変異に振り返る。突然の爆音は、落下物によるものであった。


怖いもの見たさの欲に負け、覗き込めば、粉吹く瓦礫の中から伸びるのは、細いごぼうに、根の生えたような足。


空から、人が降ってきた。

夜の静けさに、
舞っていた砂埃が澄んでいく。

男は死んだ様に曲がって上を向き、がくがくと震え、薄汚れて破けた服には滲む赤。この壁の建物から命を絶とうとしたのだろう。死にそこねた男は苦しそうに、僅かに開けた口から短く呼吸を繰り返す。


可哀想に。

最後の情けに、噴水でハンカチを濡らし、決してこんな風にならないと、ひたひたと水の滴るそれを口の上に置いてやる。
しかし、お疲れ様と心で唱えて直ぐに去ろうとしたが、その男の手は、揺れながらその布を掴むから驚いた。


ああと唸り、絞り上げた布から水を口に含んで、割れた板の間から立ち上がろうと壁に手を這わせ、背を預け。作り笑いを向けてくる。


「…大丈夫ですか」


きっと大丈夫ではない。
長くは、もたない。

しかしこの男は最期の時を前に、怖気付いたのだろう。こんなにも苦しみ、そんなにも想像を絶する痛みを背負うくらいならば、縋り付かず逝く方が楽だろうに。

この様に立ち上がろうと、
してしまうもの、なのだろうか。


「あんた…友達ね」

「…ダチ?」

「あんたの顔…忘れないわ」


さっぱり、解せぬ言葉を
切れ切れの息の合間に紡ぎ、
伸ばされた手が頬に触れる。

すると自慢げに怪しく笑う男が、まるで生き写した様に自分の顔に塗り代わるものだから、言葉を失った。



「九死に一生…恩に着るわよう」



悪夢とも言える曲芸にも驚いたが、その一言は更に、私の全てを揺るがす程に衝撃を与える。



「…貴方、死にたいんじゃ…?」



深夜の路地裏に降ってきた、
ひょろりと不気味なプリマドンナ。

右に、左に、
打ち付けながら去り行く背は、
角の街灯の下で止まり、金糸の雨がその立ち姿を切り取った。



「冗談じゃないわよう」



瀕死の目に溶けたアイラインは、黒い涙の様にも見えたが、そこにはまだ確かな意思を乗せ。世を捨てかけたこの身に、心臓を掻くようなむず痒さを残し、私の顔ごと攫っていく。



【ブラックスワン】

闇夜に浮かぶ、奇怪な男の生き様に悩まされながら引き返す帰り道。私の逃避願望は消え、男の姿も遂に消えた。





5番目くらいに好きなキャラ
バルトロメオ/キャベンディッシュ
ベンサム(ボンクレー)/クザン

 


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