たとえどんな投稿がこようとも…
書いてやろうじゃねえか…!
どんな無茶ぶりも応えて見せるっ…!

そんなスタンスで、
無茶ぶりリクエストに対し、
1000文字前後の全力で
3人の管理人が挑みます。
−企画 panic room!−

第二弾 採用お題

【隊長達が酔って
フェチを熱く語る】





「女はやはり腹だな。解るか?胸の間から腹にかけてのライン。仰け反るそこに頬ずりするのが…嗚呼、堪んねぇ」


そう放ったイゾウの一言に、既に酒に飲まれていた男達は、次々と乗っかっていった。


「なんで女ってあんなに小せぇんだろうな。頑張ってるけど壊しそうになる」

「エースはまだまだ若いねぇ」


大きく溜息をついて項垂れる男を笑った。しかし若いねぇと言った頃、頭に浮かんだのは、そんなある日の自分自身であったのかもしれない。

「何とでも言ってくれ。好きなんだけどな…丸々ぶつけると壊れちまうなんて俺には難しすぎる」

「駄目駄目ぇ、エース君。女の子は優しく抱いたげて」

「あのなサッチ、やる事に限らずなんだ。嫉妬とか俺の物でいろと思う我儘も」


遠くを見るその先に、忘られぬ人がいる。
そんな視線を夜の海へ寄越し、そこに滲んだ後悔を潮風が何処かへ流していく。


「で?何フェチ?」

「アイツの全部だよ。強いて言うなら笑った顔が堪らなかった」

「へぇ、本気だったわけかい」


頷きはしない横顔。
それは誰に向けるでもない、過去を辿る小さな微笑みであった。


「イゾウもよい、仰け反らせたその女に本気だったんだろう」

「んな訳ねぇさ。女なんて」

「どうだかね。そんな女が消えたから今、荒んでんだろうがよい」


ぐっと押し黙るその背に、
寄り掛かる長身。
多分二人は、
同時に星空を見上げていた。


「そんなお前ぇさんはどうなんだい」

「抱きはしなかったな。唇だけは頂いたが」

「そいつは珍しいね」

「隣で眠りこけてやがんだ、しまいには肩まで枕にしやがって。バーカウンターなんて男と女の引っ掛け場だろう?そんな所で呑気によい。幸せそうに寝てやがるんだ」

「でっ?でっ?マルちゃんは何フェチよ?」

「首筋にホクロがあってよい、それが妙に。…ああ、やっぱり食っとけばよかったかね」


後悔を思わせておきながら、明日を見る、穏やかな笑みを乗せ。また会うのだと確信さえ漂わせて、男は星を見上げた。


「成程、首筋なー。…しかし全体像じゃなく、わざわざワンポイントに固執っつーのは何でだろうな。10人の女の耳が堪んねぇと思ったとして、元を辿れば一人目がいるだろ?フェチっつーのは好き好かない別として、その一人目を引きずってんのかもなぁ…もう忘れちまったけど」

「へぇ。サッチは耳ねぇ」

「そうは言ってねぇよ、例えだろ。俺は頑なに谷間の一択だ!!!」


忘れてなどいなかった。最初であり最後だった印象深い女を。

自分の声を好きだと言っていたあの女も、いつかの一人目に俺を重ねたのだろうかと。そんな甘さを間に受け囁くうちに、色づく耳の虜になった事も、嘘つきなピアスがぶら下がるようになった頃、それを裏切りだと感じたあの日の若さも、全てが遠い過去ではあるが。
今でも誰かの耳の輪郭に目がいくのは、他ならぬあの日の影を女々しくも、知らず知らず重ねているのかもしれないと。

誤魔化し笑いに全てを隠し、
忘れられたらと。
男はやはり星を見た。


そして誰もが思う。

これから引きずっていくのかと。あれが、一人目になってしまうのかと。ずっと頭に浮かぶのだろうなと。


「なんでしんみりすんのかね」

「皆、錆びた釘を打たれたのさ」

「ちげぇねぇ」


それぞれが
深酒に深酒を重ね、夜は白け。
今一度その影を頭に浮かべた頃、
今日はもうおやすみよと鴎が鳴いた。



【最後のラスティネイル】



カクテル
ラスティ・ネール( 私の苦痛を和らげる)
直訳:錆びた釘 / 俗語:古めかしい
スコッチ・ウイスキー 45ml
ドランブイ 15ml
作り方:ステア
度数:30度

ドランブイ
満足の酒という意味のリキュール

 


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