たとえどんな投稿がこようとも…
書いてやろうじゃねえか…!
どんな無茶ぶりも応えて見せるっ…!

そんなスタンスで、
無茶ぶりリクエストに対し、
1000文字前後の全力で
3人の管理人が挑みます。
−企画 panic room!−

第一弾 採用お題
【皆が料理を作ったら】

オムニバス形式
:ボン&イワ→ベン→サッチ→サボ





今日も世界のどこかに朝が来る。

昼がきて、夜がきて
廻る廻る世界の、
あちこちで始まるご飯の時間。
いただきますと、めしあがれ。

美味しそうに食べるその一口と、
幸せそうな顔を見るために。

小さなワンプレートに
大きな愛を乗せて、
みんなみんな、
大好きな君を見ている。



【1plate 1love】





「いつまで経っても恋愛対象として見てくれないのよ!!もうこんなに手を尽くしてるのに!ああ、思い出したら憎くなってきた。もういい!やめてやるわ。それでいい女になって…好きだと言ってきたところで土下座させて!その背中を超可愛いヒールで踏んでぐりぐりしながら嘲笑ってやるんだから!!その後…」


「恐ろしい女ね…!怖い、アタシあんたが怖いわーん」

「よおおおく言ったわ!ヴァナータ、それでこそ女よ!」


16:00ごろ。
友人宅、キッチンにて。
私は決心した。

心を鎮めて、胸の中に青い炎を燃やす。さあ、標的は好きだった人。…だった人。


「食べなさい!!」

ご飯の時間でもなければ、お腹も空いていないけど、これをご飯というには物足りない。差し出されたのはそんな、小さなカップのスープだった。きっと私がフラれたようなもんよと、大袈裟に触れ回ったせい。

星型の人参はボンちゃんの係りだったんだろう、誇らしげなブイサインの先には、絆創膏が付いていた。

ああ…もう。こんなだもん。
私はきっと、
絶対に彼の背中は踏めやしない。


「腹が減っては…戦はできぬ!!」


強気に笑う二人を前に
仕方なく、一口。

すると溢れる押し込めた涙。
拭うためにフォークを置けば、肩を組んで微笑む二人に、まもなく私も巻き込まれてしまった。

多分どう転んでも無理だろう。でも隣には、強がりな私を笑ってくれる友人が二人、いつまでも傍に居てくれる。

……あ。だったらこの位置から地道に、死ぬまで追い掛けてやるのもありか、なんて。今日もやっぱり諦めきれなかったなと、私は最後に残した、オレンジの星を食べた。





21:00
疑惑のディナーは静かに始まった。
並べられる食器の音が、抱いた疑問を代弁する様に、ただかちゃりと鳴る。


「どうせあの女が作ったんでしょ」


黙って皿を配膳する手はスマートさを保ち、それがその答えのようにも思う。しかしライフスタイルは公私混同、誰でも出入りするこの部屋に居た、怪しい存在をどう説明する。


「あら…美味しい」


しまった、私今怒っているのに。
そう思って見上げれば、煙草を吹かす手を休め、堅い表情をだらしなく崩していた。


「それは良かった」


ベンはこんな顔で笑う人だったか。その顔を見て見事にスマートさを欠いた私は、ステーキを食べるつもりで、隣りのトマトにナイフを突き入れてしまっていた。

もう。怒ってたのに。

小さく笑うこの人に、悔しながら沈黙の愛を見てしまった。だから仕方なく、暫くはこの沈黙を信じてみようかという気になってくる。何も語るだけが愛ではないのかもしれない、と。

ワインを一口、
もう一度、もう一度。

スパイスの効いたステーキを口へ運ぶ度、益々表情は崩れていく。そして彼と対照的な私は、遂に沈黙を守る事ができなくなっていた。

「この味、凄く私好み」






14:00
何処かの町の道すがら。
去りゆく背を追い、
私はひたすら駆けていく。


待って、行かないで!

「来るんじゃねぇよい」


喉がカラカラで息が苦しい。
それでも必死の訴えをやめたくなかった。連れてって、私を連れてって。置いていかないで。たくさん叫んでふらつきながら追い掛ける。
すると男はやっと振り向いて、倒れそうな体を抱き上げ、背中をゆっくりと撫でてくれた。



「おいおいおいおい、なんで犬」

「水くれてやったら離れなくなっちまったんだよい。サッチ、こいつに飯」


そうなんです、お腹すいてるんです。一生懸命耳を下げてそうお願いしたら、サッチさんは大きな溜め息をついてから、ふわふわと首元を撫でてくれた。


「よし、イイコで待ってろよ」


その後出てきたのは、
お皿に山盛りの、人間が食べている様なご飯。ああ、確かこれはピラフっていうやつだ。

私は嬉しくて嬉しくて、水も飲まずに夢中で食べていた。その間もずっと、私を眺める二人は優しく笑う。

ご飯ってお腹を満たすだけじゃないんだね。そうひしひしと感じて、気持ちが伝わるように尻尾を振り、全力で二人に飛びついた。

「ごちそうさま!ご飯って美味しいね!」





10:00
今日はなんでアラームが
鳴らないんだっけ?

薄着で微睡むベッドの上、中々目覚めない私を起こしたのは、甘い甘いメイプルシロップの匂いだった。


「そんなに無理させたかな」


髪から頬へ滑る手に浸るため、
もう一度だけ目を閉じて、
そしてゆっくりと開く。


「おはようユメ」

笑ったサボを見た瞬間、昨夜の事が蘇る。すぐ隣に腰を下ろし、するすると抱き締めるこの腕は昨日私を捕まえた。重なる唇は、愛をくれた。すると、おはようより先行して伝えたい「大好き」が、思わず口をついて出てしまった。

「まだ足りない?」

からかわれているのに、それをどうでもいいと思うほど、形振り構わず甘えたい。そんな気分で一杯だったけど、ふと思い出した起きがけの甘い香り。テーブルを見れば、真っ白なお皿にカフェばりの美味しそうなホットケーキが、バニラとホイップ付きで乗っていた。


「食べたかったんだろ、本格ホットケーキ」

「わあぁ…凄い!これサボが作ったの?」

「俺じゃなかったら困るんだけど」


スリッパも履かずにペタペタ素足で駆け出した私は、急いで顔を洗い、瞬く間に着席。そして記念に写真を1枚。

いただきますと言ってからは、それはそれはゆっくりと味わった。一口食べる度に広がる甘さが、くすぐったくて幸せで、ほっぺたが痛くて仕方がなかったから。


「…もう少し早く食べられるかな。俺はまだ食べたりない」


寝起きというには時間は経ちすぎていた。だからもう、さっきのように右から左という訳にもいかず、困惑した顔にはどんどん熱が集まってくる。

甘い唇に流されて、結局私は半分も食べずにベッドへ攫われてしまった。部屋にはまだシロップの匂いがする。ホイップとバニラと。あと、彼の首の匂い。少し先の未来と同じ、甘い甘い香りがした。






今日も
世界のどこかに朝が来る。

昼がくる。夜がくる。
廻る廻る世界の何処かで、
必ず始まるご飯の時間。

そして
大切な君だけを思って、
ワンプレートに大きな愛を乗せる。


「さあ、めしあがれ!」


みんなみんな、君を思って。
美味しいと言ってくれる、
大好きな君だけを見てる。


 


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