たとえどんな投稿がこようとも…
書いてやろうじゃねえか…!
どんな無茶ぶりも応えて見せるっ…!

そんなスタンスで、
無茶ぶりリクエストに対し、
1000文字前後の全力で
3人の管理人が挑みます。
−企画 panic room!−

第一弾 採用お題
【ロジャー世代キャラのトリップ(笑)】






羊が一匹。羊が二匹。

両親が残した50頭の羊を草原に放ち、丘を包む様に広がった白い囲いの中で、草を食むのを見て小屋へと引き返す。そして扉を開けて、すぐに締めた。


「おじょうさ」


激しい動悸に見舞われながら何故?と繰り返す。なんで知らない人がうちの小屋に居るんだ。

四人。
ぱっと見で見えたのは四人。

お嬢さんと言いかけた
眼鏡のおじさん
すっごい髭の、
ニタァと笑顔全開のおじさん
赤い髪の男の子
赤い鼻?の男の子

一体どういった流れか。
隣の農場の人が何かイベントでもやってて何かを借りに来たとか。…いや、だったら連絡くらいあるだろうし、ましてや知らない人を寄越すはずが無い。

あ。もしかしたら先週の「羊毛刈り」イベントを今日だと思ってやって来たのかもしれない。そう思ってもう一度扉を開けた。


「どうなってやがる、説明しろロジャー」

「おお白ヒゲ!お前も来たのか!」



…増えてる!増えてる!
顔見知りなのか、盛り上がっている間にそっと閉める。今度は超デカい超怖いおじさん。また髭だった。そうか、あの人はロジャーさん、あの人は白ひげさん。

…うん。どう考えても羊毛刈りなんてしそうにない。警察に頼ろうにも不法侵入したくてしたようにも見えないし。さてどうしようか。もう一度開けるしかないのか。

扉に手をかけて、とにかく何人に増えていようとも驚かず、事情を聞かねばと覚悟を決めた。



「あのっ…!」


「んあ?おい、小娘」


やはり増えてる。
増えてるけども、覚悟は決めたけども。目の前で振り返ったこれまたインパクトのでかいおじさんは足が刃物で、頭が、頭が大変だった。何か刺さってもはや人外。そこまで考えたところで、睨むように接近したマフィアの様なオーラに、遂に絶叫した。


「いやああああ!!!」


丘の天辺を目指して勢い良く走る。
見慣れた羊たちに安心して、身を守るように群れの中央に割り込んだ。


「メエ」

「めえじゃないわよ!!!どうなってんのよ!あれは何なのよ!!!」


息を切らして小屋を眺める。
すると、ぞろぞろと。
次々に中の人たちが外へ出てきて、遠い向こう側から私を見ていた。


「なんなの、あんた達、まじで」


聞こえている訳がないから堂々と呟く。彼らは小屋の前で輪を描いて、何かを話しているようだった。そしてそこから一人こっちへ向かって歩いてくる。一番普通の赤毛の男の子。あ、鼻の子もそれを追ってくる。



「驚かせてすまない、俺はシャンクスだ」

怖がらせないための配慮か、数メートル離れたところから穏やかに話し始める。声を聞いた瞬間、一応は人間なのかと理解して少し肩の力が抜けた。


「どこから、何しに来たんですか?」


「気が付いたら皆あの小屋に飛ばされていた。戻り方も解らねぇんだ。だから、害を加えたい訳じゃない」


成程、納得がいく。
だって誰かが小屋に入ったところなんて私は見ていないんだから。でもそこには人が居て、どっかから来たと言うんだから…まー、そうなんだろう。さあどうしよう。私の良心。


すると、
後から追いかけて来た鼻の男はシャンクスさんを追い越し、何故だか全速力でこちらにやって来る。その勢いに驚いて思わず悲鳴をあげた。


「てめぇが一番普通で適役だとおお?!この俺を差し置いてー!ありえねぇなァァァ!おい女ぁ!!」


「いやあああ!!!タイガーgo!噛め!!!」


牧羊犬のタイガーは群れから飛び出して、従順に不審者へ飛びついた。


「へっ…!バラバラ………?!バラバラになんねぇ!!!!ア゙ア゙ア゙ア噛むなぁぁぁ!!!」


なんていうか、あれだ。
凄いシュールだ。

シャンクスさんはゲラゲラ笑いながら、気難しい筈のタイガーを大人しくさせて鼻の子に手を伸ばす。いらんわ!と手を叩き落とされても笑っているシャンクスさんはちらりと私を見て、次はゆっくりと、正面まで歩いてきた。

「ホント、悪かった」

「いや…もういいけどさ…なんなの。どうしたらいいの私。シャンクスは怖くないけど。あの人たち超怖い」


「戻れないんじゃあ頼りは君だけだ。悪さもしようが無いだろう。バギーを見たところ能力も使えないようだしな」


はぁ…。
何言ってるか解んないけども。
しまったなぁ。
悪い人じゃないって解っちゃったよ。


「ねぇ、困ってる?」


「そうだな、世話になるのは不本意だが。…困ってるな」


眉を寄せて笑う彼を見て、
ため息を一つ。
そして笑いが溢れた。





「皆さん聞いてください、ここの主ユメです。ここは農場です。自給自足で食べ物には困りませんのでお困りなら居て貰って結構です。小屋は好きに使って頂いて構いませんが、料理も畑仕事も自分で食べる分は自分で働いて下さい、以上」


夕方のバーベキューでおじさん達の前に立ち、そう言った。凄く怖いと思っていたのに何が楽しいのか肉を持ったまま走るおじさん。それを追って走るおじさん…足の刃物が土に刺さって走りにくそうだ。そしてそれを叱り、静かにと宥めるおじさん。あまり話さないけども、ずっと地響きみたいに笑ってる、一番楽しそうなおじさん。


「なによ…これじゃあおじさんの放牧じゃない」


「はは、そりゃいいな」
「ちょっとシャンクス、居たの?!」
「俺も居るがなぁ!」
「バギーは怖いから嫌」
「なんだとテメェ誰がでかっ鼻だ。おもしれぇ…おじさんの放牧だと言ってきてやろうかぁ?ああん?」


そして走り出したバギーを追い掛けながら、今日一番の悲鳴をあげる。あれ、おかしいな。私まで楽しくなってきた。

彼らはいつまでいるんだろ。
いつ行ってしまうんだろ。

よくわかんないけども、
しばらくは一人寂しく
羊を数えなくても済みそうだ。



【羊が一匹、羊が二匹】

 


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