たとえどんな投稿がこようとも…
書いてやろうじゃねえか…!
どんな無茶ぶりも応えて見せるっ…!

そんなスタンスで、
無茶ぶりリクエストに対し、
1000文字前後の全力で
3人の管理人が挑みます。
−企画 panic room!−
第一弾 採用お題
【もしもキャラが、本誌の
他の世界にいたら。
(どのマンガでも!】
北斗の拳にシャンクス




荒廃した時代の片隅に残る街の跡。
僅かに残る人々は、今もここで以前の姿を忘れられず、そしてどこへも行けず、ただひっそりと暮らしていた。



「ちょっといいか」


街の外から来た人間に、何の戦うすべもない村人は警戒し、避けるように歩く。そして運悪く目が合い、その赤髪の男はいよいよ私の元へ歩んで来る。



「…は、はい」

「皆を驚かせて悪いな、少し休める所を探しているんだが部外者でも身を寄せられる場所はあるか?」


あからさまな態度に男はくしゃりと笑う。まだ、こんな風に笑う人が居たのか。


「…しかしこうも逃げられたんじゃ流石に傷付く」


一人芝居を打つように、コロコロと顔を変えて微笑む姿を見て、この人は本当にただの旅人だろうと警戒を解き、私も少しだけつられて。表情が崩れた。


「皆誰を信じたらいいのか解らないもので。ごめんなさい」


すると男は、一段と笑顔になった。


「俺はシャンクスだ。名前は」

「ユメといいます。お願いできそうな場所があるのでご案内しますね」

「助かる。ユメは、家族は居るのか」

「いいえおりません、…こんな世ですから。大切な人は皆居なくなる。新たに絆を築くのも恐ろしい程です」




道中、
浅いながらに色々な事を話した。

向かう場所は小さな診療所である事、こんな時代に珍しくもお医者様がおり、お代も受け取らぬ善意のその方を皆は大変慕っているという事。そしてその人は''トキ''という事。


話の合間は全て、このシャンクスという男の相槌と、笑いを含んだ声で埋められた。


いやとても珍しい。
そうは思ってもしかし、この男のようには笑えない。ただそれだけが羨ましくもあり、悲しくもあった。




「今戻りました。少しお願いがあるのですが………ちょっとトキさん、食べて下さいって言ったのに」


「君が先に半分たべると言ったろう?」


「そんな。先に食べてくれれば済みます」


「ならば私は君が食べてからにしよう」


「もう、だから先に頂いて下さいってば」



家の戸をあけて直ぐ、
自ら連れてきた存在を忘れてその会話は始まった。普段通りの時が流れ、背後で呟かれた言葉に私達はやっと男の存在に気が付く。


「まるで夫婦のようだな」


「な!」


「めおと…!?ちょっと、何てこと仰るんですか!」



成程と言った男は、小さな家を揺らすほど大きく笑った。そして彼が笑えば笑うだけ、何故かこのささやかな幸せがカタチになればいいのにと思ってしまうから憂鬱になる。この男のようには笑えないのだ。


シャンクスという男は水だけを飲み、少しだけトキと話した後直ぐに去った。眠りもせず、あれで旅の疲れは癒えたのだろうか。見送りに出た時にこの男がしでかしたとんでもない行動も含め、不思議な、本当に不思議な人だった。



「もう会うことは無いと思うが」


「そうでしょうね。でもお元気で」


「ああ、そうだ。ちょっと耳に入れたい事があるんだ、少し寄ってもらえるか」


「はい、何でしょう?」


「夫婦の様だと言って悪かったな、お前達は紛れもない夫婦だ」



私の額に唇を乗せた男が、
絶句した私に「後ろを見てみろ」と言うので振り返ってみれば、扉の前にはトキが立っていて。普段の彼からは香らない、小さな欲が彼の顔をわなつかせていた。


「大事にしろよー」


ひらひらと手を振る男の背を見ながら、背中を包んだ温もりに少しだけ笑った。私は彼のようには笑えない。でも少しは、ほんの少しくらいは笑っていてもいいのかもしれないと、そう思った。

【笑う男】

 


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