ひざし 頼む
早く息をしろ
早く
息だけでも 動くだけでいい
最後に見せろ
「はいカット。やぁ、良かった!予想以上だこれは!!ショートムービーにしとくには勿体ないぐらいだよ」
「ウィイイ!お疲れさんッスゥ!やっぱりいいぃ?まぁでも本業あっちなんで、もう出ねぇっすよ」
起き上がってコードを剥がし始めたひざしをしっかりこの目で確認して、スタッフが周りを囲んだ所を見計らって、私は急いで出口に向かった。
「ユメさん良かったですよー!台本知らずに一発録りでしょ?!信じらんないなぁ……最高のロードムービーですよ。突然代役なんて頼んでごめんね、これ、今回の分」
「貰えません要らないです。どうしてもってんなら、ひざしにメシ奢ってあげて下さい。あいつ多分、ろくなモノ食べてないんで」
「あ、待って下さいユメさん!!!車内カメラの回収!!」
「…解ってます!!そのカメラ止めて下さいよ!!終わったでしょ!?着いてくんな!!!!!」
舞台監督とだけ少し話して、演出と脚本さんに宜しくとだけ言い残し、しつこいカメラマンを巻きたくて、エレベーターホールから先は階段で全速力で走った。
「ああクソ…熱い!!!!!」
カーエアコンは付けずにと演出指示があったせいで、車内は灼熱地獄のままだった。
車の窓を全開にして風を入れたら、汗と涙にまみれた顔になびいた髪がくっついて、鬱陶しくて仕方がない。
怒りをぶつけるようにカメラを回収して、機材カゴに突っ込んで、そのまま駐車場に置いて車を出した。
ふざけんなよあの野郎
なんだよソフトクリームって
スキー場?
飛んっでったナンパ野郎?
あれじゃん。赤い帽子の、腕捕まえるフリして胸をベタベタ触ってきた奴だろ?
クソかお前?
ソフトクリームってあのホットケーキに乗ってたバニラとチョコのやつだろ?
セルフの展望台レストランで、お前がナイフとフォーク取りに行ってる間に私が皿取りに行って、ドリンクバーの前でお前が、運んでるのに味見しようとして、お前のせいで、あの皿には可哀想なパンケーキしか残らなかったんだよなぁ??
夢見たみたいなトッピングが沢山乗ってたのに、チョコとバニラと、はちみつとホイップと苺、全っ部ぶちまけやがって、私の怒号とお前の女みたいな悲鳴、まるで地獄絵図だったよなぁ?
二人で遊びに来たとこじゃん
おかしいと思ったよ
中途半端に過去入れやがって
何考えてんだよ?
死んだぞお前?
は?
じゃあなに?
この主人公は誰なんだよ?
喧嘩売ってんのかテメェ
なにを人の心情
勝手に溶かしてんだよ
勝手に解くなよ
素直な夏ってなんだ?
お前は永遠に冬に埋まってろよ
私、ちゃんと、
言ってなかっただろ
今も好きだって
解ってる。頑なに素直じゃない自分がいつまでも悪い。だから限界まで我慢させてしまって、ひざしがいつも爆発して喧嘩が終わらない。
全部いつも私が駄目なんだ、
ひざしじゃない
ひざしじゃない
なのになんで?
だから遠い昔の私は、好きでいる事を辞めたんだ。心で思った事を言葉に変換できない苦しさに負けて、私のせいで想いつのらせて苦しそうなお前を見てられなかったんだ
確かに、更にもっともっと遠い昔の私は、ひざしとの未来を夢みたよ。でも上手くいかなかったんだ。うまくいき方が解らなかったんだ。うまくいけなかったんだ。
所詮、ひざしを
患ったままの私が悪いよ
だからってさぁ
殺すことないだろ
こんなの、あんまりだ
死ぬほど言ってみたかった愛してるをあんな風に言わせるなんて、死ぬ程言われたかった愛してるをあんな風に言うなんて、酷すぎるだろ
お前、なに勝手に
人の好きな奴殺してんだよ
しかも目の前で
全部終わらせやがって
勝手に、勝手にだ。
私の、夢の、
大切な、唯一の、人生を
" 遠い昔に夢見た未来とは "
今であると誰かが言った
ならつまり 今の私は
昔の自分が夢見た
夢のような世界に居るらしかった
ここだけは共感できる。
夢のような世界にいるらしい?
" こ ん な 今 、ク ソ " だ。
High bit rate.
&
Too late.
「もしもし」
「…あ…ざ」
「…どこにいる」
「…死ん…だんだ、」
「おい場所言え」
「私、目の前にいた…んだ」
「ユメ!!」
「ず…と会いたか…たんだ」
「俺の話聞け!!」
「会、えたの、に」
噛み合わない会話のなか、相澤が走るから、ノイズばかりで聞く意識と思考が混ざりあって、遠のいていく。
ただ、
声にならない想いを
吸い込むように、
空に飾られた蒲公英が、
草がそよいで、
「……スキー場だろ。動くなよ」
―――
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1秒間に送受信できるデータ量
単位:bps
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