BGM:gnash/night night
山田くんの子守唄









昼下がりの空の学校は秘密基地のように思えて帰りたくなくなる。午後の授業が全部なくなってしまい、すでに皆が下校してしまった教室で私は、ご飯後の眠たさと木漏れ日と山田くんと遊んでいた。

一緒に帰る約束をした白雲くんと相澤くんを待つ間、二人でノートの端っこに、雲に乗った白雲くんがご機嫌に飛んでいて相澤くんが振り向かない猫をずっと追いかけて歩くパラパラ漫画を書いていて、そこにもし山田くんを足すならどんな絵にするかという話になった。

すると山田くんは、最近弾き語りにハマっているからギターを弾いているシーンがいいと目をキラキラさせた。楽器は難しいから描けないよと言うと、後ろのロッカーに立て掛けていたギターケースから本物を取り出して弾いて見せてくれた。

てっきりロックかと思ったのに、山田くんから響くのは、私達を照らす窓際の陽射しみたいに優しげな声と、それを包み込む毛布のような弦の音だった。

二人が帰ってくるのが少しでも遅かったらいいな、なんて思ってしまう。山田くんの声をよく覚えていたくて鉛筆を転がした私は、ノートの上に腕を組んで枕にし、顔に掛かる前髪の隙間から山田くんだけを見た。

「素敵よ山田くん、それすごく眠たい」
「Waaaait!寝んなよ!俺モデル!描いて!」
「や。終わり。もっと聴きたい」

赤くなってしまった山田くんは天井を見たり、外しもしないのにサングラスを触ったりする。照れてしまった彼を見る空間に自分だけが存在する事が幸せで、うつされたような顔の熱さと鼓動を隠すために、私は目を閉じた。

「おいお…これ、みじけーんだよ…1分半もねぇーんだって」
「じゃあ、ワンリピートだよ」
「what?まーじ?」
「二人が来るまでやってたら上手くなりすぎて武道館行けちゃうかもね。そしたら私、ひざしくんラブTシャツ着て最前列でペンライト振るからね」
「OKグンナイ。ユメちゃんは…絶対おれが武道館連れてく!」

ふざけた想像にこっそり想いを乗せて、
乗ってくれた調子の良い返事に夢を見て。

戻った二人が教室の扉を開ける頃、
本当に眠ってしまった私の机の周りには二人分の机が寄せられていて、隣合う白雲くんと相澤くんがすやすやと寝息を立てていた。

「本当に寝ちゃった、ごめん」
「いいよ…寝てるユメ…その、可愛かったしィ…」

目を擦っていた指の隙間から、赤面してるくせに真っ直ぐな眼差しが向けられている事が解ってしまって、なんでそんな事を言う時だけ逃がしてくれないのか反抗したくなってしまった。

「山田くんも一緒に寝よ」
「…誰が起こすんだよ」
「センセ?」
「またお前らかって言われちまうなぁ」

同じ甘い困惑を感じて欲しくて、
ギターを置いて机に寝そべった山田くんの隣の机に移動した私は、寝付きが悪そうに瞬きを繰り返す、丸々とした瞳を負けじと見つめた。

 


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