BGM:ヨルシカ / あの夏のルカver.少年時代
※初めに
このお話は、
Twitter 夢オタ同士フォロワーさんの推し語りツイート、
フォロワーさんから貰ったお題から作品化
Twitter 複数人と通話トークシステム スペースを使った時の話題、
夢小説の#タグ、検索避けを使った マイク小話のプラスネタ「相澤と山田と二人でBARに行った」、
マイクが主に対してポルノグラフィティのマシンガントークのような感情を抱いているというお題リクエスト、
もしも、ぷちゃへんざレディオにお便りを送るならなんて送りたいか私に送って下さい!ネタにしてもいいよって方のみどうぞ!へ送られたお便りネタ
…などなどをら詰め込んだマイクの中編です。
※初めに
このお話は、
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フォロワーさんから貰ったお題から作品化
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マイクが主に対してポルノグラフィティのマシンガントークのような感情を抱いているというお題リクエスト、
もしも、ぷちゃへんざレディオにお便りを送るならなんて送りたいか私に送って下さい!ネタにしてもいいよって方のみどうぞ!へ送られたお便りネタ
…などなどをら詰め込んだマイクの中編です。
木苺の香る彼 は誰 時
片方のイヤホンが聞こえない。
置いてかれた右耳が可哀想で、
次はヘッドホンを買う事にした。
「とばっちりの左はやるせないもんだなぁ」
キャリーに詰め込んだ家出セットを歩道橋の終わりで降ろして引き摺れば、ガタついた車輪が右に左に我儘をいって歩けないと泣く。仕方なく担ぎ直した私は駅前の大きな電気屋さんを目指して足早に信号を渡った。
「好きなんだよ。付き合おう」
まっすぐだった彼の言葉は性格を表したようにストレートで、まだ青かった迷いばかりの頃の心臓を突き抜けた。
靴擦れしてしまったと言えば考える間もなく公園のベンチへ背負われたし、映画の予告が格好良かったと言えば行こうと一言、調べもせずにシアターへ連れ込むような強引さにいちいち驚く私は、惑い続けて決断する煩わしさを振り切って先々行ってしまう彼に、もう迷う必要が無いと言われてる様でほっとしていた。
自ら選択し掴んでいく事こそ自由であると知らずに、履き違えたままの幸せを何年も履いて歩いていたんだ。じわじわ皮膚を擦り切ってもまだ行けると放ったらかして、すっかり温くなった事にも気が付かない湯船で、これまで通り連れて行ってくれた暗がりのスクリーンから盗み見た、ほとんどの時間に目を瞑っている真実を思い返して、これは染みるなと数年分の幻覚に置いていかれて沈む。
「お前が酒飲めたらなー」
「飲めるよ少しは」
「んなもん飲めないのと同じだって。つまんなくて寂しいー」
風呂上がり、リビングで静かに口をつける彼と、追い掛ける様に押し込む自分と。思い返さなくとも、目を瞑っていただけの話ではない。日常に隠して少しずつ重ねた跡は傷とも言えない小ささで痒みに近いものがある。冷ませば収まるものだから有耶無耶に繰り返してこの有様だ。開ききった差分を思うと苦しくて、あの頃見た映画のお酒が飲みたいという小さな夢を飲み込んだ。同じ物を見てはいないんだから、お前は飲めないだろ?とゼロにして置いていくのだから。もういいやと。
「別れよ。出てくわ」
先々歩く彼は振り向かないから私ではない何かの影を握っていた事に気がついていない。その手の影はもう自分で叶えに行ける手であり、あの日の私ではないのに。ただただ違ってしまったことを受け止めると痛む自分自身を、可哀想に思って家だった所を飛び出したのだった。
「あっ……ひざし??」
「あっれェェ!?なんだよユメ、こんな時間に!」
電気屋さんのスピーカーブースの端っこ、新発売と書かれたポップの前でサンプルに触れるのはよく見た姿。性能に探りを入れる鋭い眼差しは私を見て直ぐに丸くなった。
「夜のデート待ちかぁ?アーン?」
「へっへー!ざんねェェん!今わっかれたぁ!」
「…え…は?」
目線が足元のキャリーに落ちていく。
察して戻ってきた動揺顔と目が合って、ついこの前のラーメン屋ではそんな素振りも無かったのにと、二人して同じ事を考えているだろうなと思った。
「………や…悪ぃ」
「振ってみました」
「は!?…マジかよ……ラーメン行く?」
サンプルを戻した彼はまだ答えてもいないのにガラス張りの夜の街を指し示す。いつもの、つられて笑ってしまう様な表情から転がり落ちる陽気さが、異常を感知する早さで顔色を伺っている。自分から振った割に清々していない事が有難くバレてしまった私は、心がまだ青く硬かった頃から小さな傷を癒していく温かさに素直さを取り戻して、簡単に繁華街を示す指先に連れていかれた。
「今日は…長居できる所がいいなぁ…いっぱい話しちゃうかもしれない」
「ok、他になにかある?」
「…ヘッドホン買いに来た」
「このタイミングで?!」
傷の様子を伺う深刻さから吹きこぼれた笑いに、それもそうだと恥ずかしくて笑ってしまう。でもこんなタイミングで一番に音楽を欲した自分の事は少し気に入っていたから、同じ思想を持ち合わせるひざしはきっと歓迎してくれるだろうと、隠しもせず照れて居られる。
「ミンナの日常に心躍る音楽をおっ届けェ〜!でしょ。いつもラジオで言ってるじゃん」
「おうおうセンキュヘヴィリスナ!…手伝おっか?」
「ありがたーい!」
ヘッドホンをずらして首に掛け、幾つかを自分の頭に掛けては試し聞きの三角を押す。定位置に戻された物は選択肢から省かれた様で、黒い腕にぶら下がる合格者達から伸びた幾つかのコードが、彼の好きこそ物の上手なれの果てを映していて嬉しく思った。
「いつも何聴ィてんの」
「色々。でも…Jポップが多いかも」
「ンなら俺と同じのよりコッチな」
「なんで?」
「これのが繊細な音拾うから日本のミュージックシーンには合ってる」
「へえ…凄いなぁ…」
「わり、普段の使い方は?」
「あっちこっち持って歩く」
「あーじゃ今のナシ。壊れやすいからやめとけ。…間を取るなら…ンー…コレかァ?」
「どこの間か解らないけど、うん」
「…ちょい待ち。耳みせて」
的確に診断していくお医者さんがぐいと一歩近付く。こうでありますと髪を耳にかけ頬を差し出したら、一瞬停止した後、また一歩下がって掌で私の耳を隠し、ゆっくり降りる手と同速で背を向けた。
「色選んでて…ちょい仕事の電話してくる」
内装を映し返す鏡のようだったけど、少し離れた店の内側で、ガラス張りの街へ向かって電話を耳に当てるひざしの顔は、角を曲がっていく車のライトが射していて見えない。長くかかりそうか短いかは伺えそうになくて、なら早く決めなければ文句を言われると焦って黒に伸ばし、ひざしだったと安心して立ち戻れば、次は自分がどこにいるのか解らなかった。
黄色が好きだ。
そう思ったのに手が伸びない。チラチラ他を選ぶフリをしながら視界に黄色を入れて、その度にそんなものは毒蜂みたいだとか、女ぽくないとか聴こえてくる。後悔なんてしてないのに傷が傷んで、私は反抗するようにひとつも触らなかった黄色を抱きしめた。
「お医者さんかな?ヘッドホンソムリエさんかな?見てくれてありがとう」
「まだ終わってませんよォ。レントゲンも必要ですねェ」
私より早く財布を開けた彼は、妙な役どころのままカードを突き出して、私とスタッフエリアとの間を背で隠してしまった。店員さんがレジに打ち込むあいだの空間で、新しい一歩記念なと呟いた横顔が頼もしくて、傷心の痒みが消えていく。
「お薬の時間ですよォ」
言うことを聞かないキャリーを担ぎあげた肩に食い込む持ち手を見て、詰め込む物を軽くして良かったと心底思う。いつもなら曲がる商店街の小路を素通りした私達は、まだ眠らないよと眩しく光る繁華街へと歩いた。
【木苺の香る