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出た単語をテーマにして
「45分以内を目標」に
指名されたキャラで書く
お勉強企画-45min.より
お題
【エレガント】【エロティック】【LP盤】
[7.7.Happy Birthday MiC]
BGM
I Feel It Coming/
TheWEEKEND(feat.Daft Punk)
ブースのガラス越しから聞こえてくるバースデーソングは全て、リスナーからのリクエストによるもので、もうこの3時間で何曲も耳にしていた。
世界にはこんなにも沢山の誕生日ソングがあるんだなぁと思わせてくれて、勿論こっそりハッシュタグを付けて目の前に居ながらリクエストしようと思った誕生日ソングは、思い付くもの片っ端から音楽好きなリスナーさん達に攫われていってしまった。
「Heeeey…皆ァ…ありがとな…俺のハートがずっとLOVE&PEACEを叫んでるぜぇ!!真夜中のぷちゃへんざレディオ、まだまだ付いてこいよォォ」
スタッフは充分足りていて、何故だか「今日手伝いに来いよ」と上司に言われて現場に来ていた私は、手伝う事なんかとうに終えてしまって、ただずっと想い人の嬉しそうな姿を見ていられるという、かなりのハッピータイムだった。
CMのオフに入り、マイクさんはコーヒーに口を付けながらハガキに目を通し、お祝いの言葉が沢山書かれているのであろう事がよく分かるくらい、口元がニッカリ笑っていた。
こんな特別な事が起きたんだから、私も、何かお祝い出来たらいいんだけど。そう思って天井を仰げば、腰掛けていたキャスターの椅子が軋んだ。
「何かしたいんですけどねぇ」
そして幾つか壁に貼られたチラシの中に七夕のイラストを見つけてふと思う。マイクさんがラジオの冒頭で触れた以外は全部、話題を塗り替えるくらい誕生日な言葉が並んでいた。
「おいユメ、あそこのレコ室好きにしていいぞ」
呼び出した上司は、マイクさんと同じくコーヒーを飲みながら緩やかに笑っている。何故レコーディング?と不思議に思い扉を開ければ、そこは録音ではなく小洒落たレコードの倉庫になっていた。
「わぁ、オシャレですね…ここで少しサプライズしてもいいですかね」
「勿論。キミが慕ってるのはよく知ってるからね」
「もう。内緒ですよ、ありがとうございます」
甘えて現場を任せ、
幾つかレコードを出してみる。
レトロな色味で、はたまた原色のビビッドさに黒をさして、胸をときめかせるには充分な宝物だった。
小道具カゴからリボンを取り出した私は、思い付いた七夕を再現するために、好きなレコードを幾つも出してリボンを通し、局の入口から撤去された笹を拝借して部屋中に飾り立てていった。
天井には幾つものフックと軽い照明を吊るためのバーが通っているお陰で、明かりの演出も付けられそうだ。
後は私からの Happy Birthday と、ギラギラの折り紙をカットして煌めきを足そうかしら。
仕上げに窓を開けた私は、ゆっくりとレコード室の扉を閉めて、またキャスター付きの椅子からラジオの終わりを見届けた。
「マイクさん、今日もラジオ完走お疲れ様です」
「helpあんがとね。助かったよ」
「私、大した事してませんよ」
「いやいやユメちゃん、居るだけで疲れが飛んで大助かり。…ってね」
お手をどうぞ、なんてスタイルで手の甲にキスをするものだから、思わずこちらも淑やかなレディにならなければいけない気がして、手つきが勝手に記憶の中のシンデレラを振り返っていた。
「マイクさんってド派手ですけど、私、そんなエレガントな所も大ファンで、大好きなんですよ」
「あー…」
なにも変な事は言ったつもりはないのに、周りのスタッフは微笑みながらも少し驚いているように見受けられた。
マイクさんはと言えば、これまた何故だかシュンとして見えてしまって、なにか外した事を言ってしまったのか自分だけが取り残されていた。
「マイクさん、私からもプレゼントがあるんですけど。少しお時間いいですか?」
「くうぅ!最高に嬉しいねぇ、目でも瞑ろうかァ?」
「お願いします」
おかしな空気を変えたくなった私は、逃げる様にマイクさんが差し出す手を取って、七夕部屋へお誘いした。
「まだですよ。音楽が掛かって20数えたら、目を開けてください」
「OK」
部屋の隅のレコードをセットして明かりを消し、間接照明だけが天井を舐める様に照らすと、円盤に針を落とした。
黒の水玉がいくつもオレンジのイルミネーションに浮かんで、風でそよぐグリッター混じりの短冊が私の胸と同調したみたいに、"早く早く"と揺れる。
イントロが終わった頃にゆっくりと開かれた瞳は、みるみる大きく輝いて、同じ速度で吊り上がっていく嬉しそうな口元を見て、大成功だな、と私まで嬉しくなった。
「Happy Birthdayマイクさん。いつも夢を届けてくれてありがとう」
「これは…あー…。やっぱり直帰指示しといて良かったぜ」
「なにがです?」
「他のスタッフだよ」
私が小さく驚いた声を出すのと、マイクさんが抱き上げたのはほぼ同時だった。
渋味のある革ソファーに降ろされた私の隣にゆっくりとマイクさんが距離を詰めて、揺れる笹の葉がマイクさんの色味を纏った瞳孔とリンクした。
「エレガントって言ったよな」
「マイク、さん」
「こんな事してカッコつけるの、ユメちゃんの前だけなんだぜ、知らなかった?」
物分りが悪いと言い聞かせるように、また掬われた手の甲がスローで唇へと連れていかれた。
緩く滑らせて指を食みながら、閉じられた瞼がゆっくり開かれて、横目で射抜く瞳に呼吸が難しくなる。
「今日、呼んだの俺」
驚いて開いた口は直ぐに塞がれてしまって、マイクさんが両手で耳を塞ぐせいで甘い音しか入ってこなかった。
「同じだって解ってんのに、ユメちゃんが俺をどれだけ好きか延々と聞かされ続けるのに…会えないんだぜ?このぐらい許してくれるよな」
「!…あの人言ってたんですね」
「怒んないでよ。ようやく会えたナァ?織姫ちゃん」
「怒ってないです…少し恥ずかしいんですよ……私の…彦星さん」
耳を塞ぐのに甘い囁きだけは聞かせる緩急のある掌の圧が心地よくて。
思いが届いていた感動と鼓動でもう溶けそうなのに、重なった唇から零れる言葉はどれも熱を持っていて、このまま何処かへ攫われてしまうなと、そよぐ風を感じながら瞳を閉じた。
Beautiful Beast