いたいのいたいのとんでいけ


2023/02/07 ▽無題

アヤトくんはもう私以外の血を飲まないと言っている。私も私の血しか飲んでほしくないと思っていた。でも……前に50年後の夢を見たときのアヤトくんの苦しそうな姿が忘れられなくて胸が痛くなる。
吸血衝動に耐えながら一緒にいられるだけでいいと言っていた。私がおばあさんになったら、あの夢みたいにアヤトくんは日々吸血衝動に耐えながら生きることになるのか……と思ったら悲しくなった。その姿を私は見続けなきゃいけない……と思うとすごく嫌だし、そんな光景に慣れる日なんて来てほしくない。

アヤトくんをあんなに苦しませるくらいなら、私から血を吸えなくなったら他の人から血を吸っても……それでもいいと思う。強がってるんじゃなくて、ちゃんと本心だ。私がちょっと我慢するだけでアヤトくんはあんなに苦しまなくて済む。………だけど、アヤトくんは私の血以外欲しくないみたいだし、アヤトくんの渇きは私の血でしか癒せないらしい。じゃあ、私が死んだらアヤトくんはどうなるの?私はどう頑張ってもあと数十年しか生きられない。アヤトくんは数百年、数千年と生きていくのに。数字にしてみると私がアヤトくんと一緒にいられる時間は短すぎて泣きたくなる。

こういうことを考えるとますます思う。アヤトくんにとって、私と出逢ったことって間違いじゃなかったのかって。人間を愛して後悔していないのかって。ヴァンパイアにとって人間は餌。昔アヤトくんが散々言っていたことは何も間違っていなかった。ヴァンパイアは人間をただの餌だと思わなきゃいけない。それ以上になんてしちゃいけない。ましてや餌に依存なんてしたら、苦しいだけだ。私がアヤトくんの特別になりたいって、餌じゃ嫌だって足掻いたから、いつかアヤトくんを苦しめることになるんじゃないか……そんなことを考える。

アヤトくんのことを幸せにしたい。もうあの人に苦しんでほしくない。でも、きっとアヤトくんを一番苦しめることになるのは私の存在だ。私はどうしたらいいんだろう。この人はただでさえ特別な存在を失うことをひどく恐れていて、繊細すぎる。そして一途すぎるんだ。せめて他の人の血を吸えればよかったのに。そもそもヴァンパイアを好きになるのがこんなに苦しいことだと思っていなかった。最初はあまり深く考えていなかったし。こういうのをいろいろ考えると……ちゃんと考えた上で、私達が救われるには一緒に死ぬしかないんじゃないかと思う。軽い気持ちで言っているんじゃなくて……アヤトくんが苦しまない最善の方法がそれしか思い浮かばない。ヴァンパイアにとって死は祝祭の始まり、だし……。もちろん無理に心中する気はないし、できることなら私が死んだあとも生きてほしい。

まだ時間はある。私がいなくなる前に、少しでもアヤトくんが苦しまなくて済む方法を探し続けよう。


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