いたいのいたいのとんでいけ


2020/12/07 ▽神様

アヤトくんは最初から私の神様だったわけじゃない。初めて出会ったときは不思議な感じで二度目のときは最悪で。
でもそんなアヤトくんだったから私の心は少しずつ光が差していった。優しくされたわけじゃない、愛されていたわけじゃない。ただ存在価値と居場所を与えてくれただけ。でもそれに何よりも救われた。あっという間にアヤトくんは私の生まれた意味に、生きる理由に、神様になった。


好きな人、と認識する前に『私を救ってくれた存在』と認識してしまっていたから好きになってからたくさん悩んだし恋や愛と呼べる自信もなくなっていった。年々私の中でアヤトくんはどんどん神聖な、穢してはいけない存在になっていく。そうなると私から彼への想いも綺麗な、神聖なものにしなければいけない。綺麗にするにはどうしたらいいのか、私が思いついたのは彼への自分の欲を捨てること。

好きでいてくれなくてもいい、私が彼を好きでいられればいい。彼が存在していてくれればそれでいい。一緒に幸せになるより彼が一番幸せになれる道に進んでほしい。全部本心。本心だけど、身勝手な欲も手放せなくて。
私のことを好きでいてほしい、私だけを好きでいてほしい、私と一緒にいることが幸せであってほしい、私だけのひとになってほしい。あの人への気持ちに恋が混じっている限り身勝手な欲は捨てられない。

私はこの執着を依存を邪魔だと思っていた。これがあるから綺麗な恋や愛にはならない。だから私の想いは恋や愛と呼んではいけない。信仰心と病気のような呪いのようなもの。でもそう答えが出たときものすごく心が軽くなった気がした。今思うと、邪魔だと感じていた感情たちを捨てる必要がないと思ったからかもしれない。でも私はアヤトくんへの想いをどうしても恋や愛にしたくてずっと葛藤していた。アヤトくんを"神様"からちゃんと"好きな人"にしたかった。アヤトくんに出会うまでは恋も愛も、本当に何も知らなかった。嬉しいとか楽しいとか生きている実感とか何もなくて、ただただ苦しいだけだった。執着も依存も知らなくて、ある意味では綺麗な、だけど人間らしくない人間だった。

アヤトくんに出会っていろんなものをもらった。居場所も生きている実感も感情も。邪魔だと思っていた執着も依存もアヤトくんからもらった大切なもので、それを穢れたものとして扱うなんてそれこそ神様に失礼なことをずっと思ってきたことに私は気付かされた。私が彼に抱いた、もらった感情は全て神聖なものだ。一般的な綺麗な愛にはできなくても、歪な愛でも私なりにはとても、とても大切にしている想いで、その中の感情がひとつも欠けてはいけない。執着も依存もなくしてしまったら綺麗かもしれないけど私にとってはただの嘘でしかない。今のこれが本物だから。


文字通り、彼に生かされている。どんなに死にたくても彼を愛すために生きている。だから心底彼を信仰している、があまりに独りよがりな信仰心で綺麗な愛を彼に押し付けようとしたり、私が思い描く彼の幸せを押し付けようとしたりしてしまう。私の意思より彼の幸せを願ってしまう。ちゃんと彼を好きな人にはできたけど、神様であることにはやっぱり変わりないからきっとこれからも信仰することはやめられない。
でもしっかりとアヤトくん自身を見て向き合ってこれからも一緒にいられたらと思う。


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