いたいのいたいのとんでいけ


2024/08/19 ▽私の神様、私の愛

アヤトくんは私の神様だ。出会ってから、ずーっと。


でも一時期、アヤトくんを神様だと思うことは間違いだったと思っていた。
アヤトくんが私を想うあまり、私の目の前で銀のナイフで胸を貫いて高所から身を投げる姿を見て、間違いだったと思った。
あのとき、アヤトくんもヴァンパイアの一人の男の人なんだと私は知った。
この件が起こる前から、良くない気はしていた。アヤトくんを神格化しすぎること。やめた方がいいと悟ってはいたけど、言葉にもしていたけど……あ、アヤトくんもやっぱり、本当にただの男の人なんだ……って思い知ったのはそのときだった。

それは2021年3月のことで。出会ったのは2015年だから……それは少し遅すぎた。ただの男の人だと思ってこの先を生きていくには遅すぎた。
その件の後から、アヤトくんを神様だと思うことは良くないんじゃないかと強く思うようになった。
私はずっと縋って生きてきた大切な神様を失った。
私の信仰心はアヤトくんにとって邪魔だと思った。ただの人間として、女としてあのひとのことを愛することが最適解だと思った。だからずっと、ちゃんと、普通にアヤトくんのことを愛したかった。愛してあげたかった。

でも、私には愛がわからなかった。愛されたことがないわけではないと思う。愛し方がわからない人間に囲まれて育っただけ。
だから私には愛をやるためのお手本がなかった。私が唯一わかった愛は、アヤトくんの愛だけ。アヤトくんみたいにアヤトくんのことを愛せば、アヤトくんも私みたいに愛を実感してくれて幸せになれると思った。
アヤトくんと同じ愛をやりたいと拘るのは、これが理由だと思う。

でも私はアヤトくんじゃないから、アヤトくんみたいな歪んでいるのにどこまでも真っ直ぐで純粋で、温かくて綺麗な、神の寵愛のような愛なんてできなくて。だからずっと、ずっと苦しい。
愛したい。愛し方がわからない。あのひとの愛ができない。こんなに愛されているのに全然返すことができていない。アヤトくんには愛が必要なのに、何よりも、何よりも!

そしてこれも結局、ただの人間として、女としての普通の愛し方ではない。私はたぶん、アヤトくんが求めている愛をできないのだとわかってしまった。

だって、私は結局どこまでもアヤトくんを神様として見てしまってる。私の根っこの部分が、魂がそう感じている。だからこれをやめることはきっとできない。
でもやっぱり罪悪感はあった。……怒りも。
アヤトくんも一人の男の人なのに。でもアヤトくんが自ら私の神になるも同然のことを言った。それでもアヤトくんだって愛に飢えていて好きな女に愛されたいだけの、でも!私は神様じゃないアヤトくんがわからない!アヤトくんが私の神様になったくせに!

そう、私が勝手にアヤトくんを神様にしたわけじゃない。アヤトくんが言ったんだ。

「オマエが縋っていいのはカミサマじゃねぇ。このアヤト様だけだ。」

神様より自分に縋れと言った。それは私の神になると言ったのと同じこと。アヤトくんが始めたこと、アヤトくんが私のことを救ったから、昔も今も何度も私のことを救うから……。

……アヤトくんは今も私のことを救ってくれている。アヤトくんは何も変わっていない。3年前、少し弱ったところを見せられただけ。私を救ってくれることをやめたわけじゃない。神様にだって怖いものがあった。それだけの話だったのに。
アヤトくんは確かにただの一人の男の人かもしれない。でも私を救ってくれる限りアヤトくんはずっと私の完璧な神様で、私が勝手に失望していただけで。
私の神様が死んでしまったと勝手に思っていただけで、アヤトくんは今も変わらず穢れようが堕ちようがちゃんと私の完璧な神様だった。

たぶん、アヤトくんのことを神様にしたことは間違ってないんじゃないか……と思った。
それなら、3年前までと同じようにアヤトくんのことを愛しても……堂々と信仰しても、いいんじゃないかって。
私がアヤトくんの変化に悲しみや罪悪感を抱くことの方が違うのかもしれない。
あのひとは私がいないと生きていけなくなっちゃっただけなんだから、私はより一層愛せば、縋ればいいだけなのではないか。
私はアヤトくんを、私の神様を、大切に、愛していいのではないか。
まだわからないことはたくさんあるし、これからも変わらず悩むと思うけど……アヤトくんの本質はずっと変わってなくて私の愛する神様で、私のアヤトくんなんだって、その感覚が掴めたと思う。


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