01



ただいま〜と気だるげな声が玄関から聞こえガチャンと扉が閉まる音がした。声の主は迷うことなく一つの部屋にドスドスと向かってくる。


「ただいま、まこと。いい子にしてた?」
「お帰り至。ご飯、できてる」
「ん〜、その前にすることあるでしょ?」


私の身長に合わせて少し屈んでくる彼のおでこに軽くキスをすれば、満足そうに微笑んで頭を撫でてくる。着替えてくるね、と言って部屋に行く背中を姿が見えなくなるまでぼんやり見つめる。ハァと小さくため息をついて束の間の休息を堪能する。彼、茅ヶ崎至と私の関係は傍から見れば“恋人”のようなものなのだが、実際はそんな関係ではない。お互いがお互いに依存しているだけ。そしてそんな関係を結んでいるのは茅ヶ崎至だけではなくもう一人。


「万里は?」
「夜の稽古だって。一回帰ってきたけどすぐ出て行った」
「ふーん…」


チラリと私を見たかと思えば、ズイっと距離を詰めてこられ反射的にビクリと肩を揺らす。何?と聞くと稽古前に万里と先に楽しんだでしょ?と微笑まれる。


「な、に言って…」
「若いって良いね〜。けど、俺のこと待ってくれてても良かったんじゃない?」
「ちょっ、至!」
「万里の奴、絶対嫌がらせだよね。こんな見えるところに痕付けて出ていくとか」
「っ!」


気付かないとでも思った?と笑う顔は怒りが薄っすらと浮かんでおり、私は一歩後ろに下がる。何逃げようとしてんの、と腰をグイっと引かれ唇を奪われる。突然の深い口付けに驚きガリっと至の唇を噛んでしまう。ヤバいと思った時にはもう遅く先程よりも怒りを露わにした至にソファに押し倒される。


「たっく… 大人しくしてるなら優しくしてあげようかと思ったけど止めた。覚悟してね」
「ひっ…!」


胸を鷲掴みされ咄嗟に手を払おうともがくが頭の上で手を一纏めにされる。暴れんな、と囁かれたと思えば服も下着も捲し上げられピンと立った頂をペロリと舐められる。


「嫌がってる割には乳首こんなに硬くして、変態にも程があるでしょ」
「やっ、いや…!や、めっ!」
「何言ってんの?酷くされるの好きなくせに」
「ひ、ぁ!?」
「かわいー声。もっと聞かせて?」
「アッ!?や、だ…、い、たる…!」


舐めたり甘噛みされたり指で弄られたりしてゆるゆると腰が浮く。こっちも触ってほしいの?と聞かれこくこくと頷けば、ハハッ本当エロ過ぎと嘲笑われる。至の細い指がスカートの中に伸び、私の太腿を這い始めた時ガチャと扉が開いた。


「たっだいま〜、って… お楽しみ中だった?」
「万里…!」
「乙〜。万里お前先にまこととヤッてんじゃねーよ」
「稽古前にスッキリしときたくて。俺も混ぜてくださいよ」
「はぁ?お前さっきもヤッたのにまたすんの?体力バカじゃん」
「若いって言ってくださいよ」
「ちょ、まって…!」
「てことでまこと、俺のモン勃たせて?」
「ンぐ!?」


そう言われたかと思えばまだきちんと勃ち上がってないモノを口に突っ込まれる。歯ァ立てたらどうなるか分かってるよね?と言われ必死にソレに舌を這わす。その間も至の愛撫は止まることはなくナカに指を入れられる。一本、また一本と増える指にピクっと反応すれば二人が愉しそうに笑う。ぐちゅぐちゅと指を動かされナカのイイトコロを擦りあげられ嬌声を上げる。軽くイキかければ、こっちにも集中しろよと万里に頭を掴まれる。口に含んでいるソレはもう大きく反り勃っていて、カリや鈴口を丁寧に舐めてやればクッと顔が歪む。もうそろそろかな、と思いジュルっと先を吸ってやればうぁ!?と万里の腰が跳ねる。先走りの雄臭さに夢中になってじゅぶじゅぶと音を立てて舐めたりしていると、至のモノが突然挿ってきて思わず万里のモノに少し歯を立ててしまう。そんなのお構いなしに至はガツガツと腰を振ってイイトコロを突き上げてくる。


「ふ、ン…!ひたりゅ、らめ、イっちゃ…!」
「ちょ、咥えたまんま喋んなって…!」
「二人だけで、楽しまないでよね…っ!お、れも、仲間に入れてくんない?」
「やっ!ら、め!イッちゃ、う…!」
「ハッ、お、れもやべぇ…!」
「俺ももう、無理…っ!まこと、ナカ、出すよ…!」
「んぶっ、ン!いひゃ、る、ばんい…!ちょ、だい!全部、ぜ、んぶちょぉだ、い…!」
「やべっ、出る!」
「お、れも…!」


はぁ〜と息を吐く二人を横目に、私は力が入らない体に鞭打って起き上がろうとすると万里が肩を支えタオル持ってくるね、と至はお風呂場に向かう。二人の精液でベタベタになった体を至が持ってきてくれた蒸しタオルで拭いていると、俺のちゃんと飲んだ?と後ろから私を抱き締めていた万里に問われる。


「ん、おいしかったです」
「ハハッ、まこと本当サイコー。愛してる」
「ちょっと万里、俺の嫁取らないでくれる?まこと、今日も最高に気持ちよかった。疲れちゃったし一緒お風呂入ってご飯食べよ?」
「そーする。背中、流す?」
「そーだね、流しっこしよっか」
「ん、する」
「あ〜…、俺の嫁尊い…」
「至さんキモいっすわ」
「黙れ万里」


私を挟んでギャーギャー言い合いをし始めた二人の声をBGMにうとうとと意識が微睡んでくる。まこと?と顔を覗き込んでくる至にうぅ〜と擦り寄る。


「眠い?」
「ん…。でも、お風呂、至と入る…」
「アハハ、いい子いい子。なら三人で入って全自動風呂入れてくれる機の万里に綺麗にしてもらおっか」
「まことはいいけど至さんは勘弁っすよ。自分で洗ってください」
「えー、いいじゃん万里。お願い?」
「可愛く言ってもダメっす。ほら、まこと運んでやるから俺に掴まれ」
「万里、抱っこ…」
「可愛すぎてまた元気になりそう」
「若いね〜。でも今日はもうおしまい。これ以上まことには無理させちゃダメ」
「へいへい、分かってますって」


よっと、と万里に担ぎ上げられお風呂場に向かう。適温に温まった湯船に三人で狭いだなんだとワーワー言いながら浸かり至と二人でしっかり全自動風呂入れ機、基万里に全身を洗ってもらってお風呂を出て食卓に着く。ご飯を食べたらゲームをして一緒に眠ろう。明日はきちんと学校行くんだよ、と言えばまたサボったの?と至が笑う。うるさいっすよとぶー垂れながらご飯を口に運ぶ万里の姿を見て微笑む。

私たちはお互いがお互いに依存しあう関係。至も万里も私を愛してくれるし、私も二人を愛してる。この先もこの関係が変わることはないだろうし、誰にも壊させないなんてことを思っているなんてきっとこの二人ですら思っていないだろうな。


「至、万里」
「「ん?」」
「愛してる」
「…俺たちも」
「愛してるよ、まこと」


これは私たち三人の、歪んだ物語ー…