彼女でござる 花のJKでござる [5/7] 「んんっ……、んふっ」 私の朝は、熱烈なキスから始まる。 「……ん、やっ」 ざらりとした熱い舌で唇を舐められて、 「――――っっ、ふぁっ」 思わず変な声が漏れてしまった。 「……ハル。くすぐったいよ」 足元では、ごそごそ動いていたのがベッドの足に当たり、ゴンゴン音を立てている。 彼が来るまではその子のその音に起こして貰っていたけど、彼が家に来てからは、彼が私を起こしてくれるようになった。 「んー、おはよ。ハル」 熱烈なキスで起こしてくれた彼を抱き上げて、布団の中に引き入れる。 「んー、あったかい……」 まだ少し冷え込む朝晩。 湯たんぽ代わりの彼は、とても暖かい。 「にゃっ」 起きろとでも言わんばかりのパンチをお見舞いされて、 「痛っ。ハル。いつも爪立てないでって言ってるでしょ」 「ふぎゃっ!」 力任せに彼を抱きしめた。 「んもー、朝から容赦ないんだから……」 私を起こしてくれたのは、猫のハル。 去年の私の誕生日の晴臣からのプレゼントだ。 赤いバンダナを巻いたアメリカンショートヘアという種類の猫で、毎朝、彼はドアに取り付けられた彼専用の小さなドアから決まった時間にやって来る。 貰った当初は私の部屋に閉じ込めてしまっていたんだけれど、家にいる時間が短い私は、パパに言って彼専用の小さな出入口を付けて貰った。 その出入口は今や家中(パパの書斎やバストイレ、キッチン以外)のドアに取り付けてあり、家中を行き来出来るようになったハルは、私だけの飼い猫じゃなくなったけれど。 「ハル。ありがとね」 彼を解放してやると、 「にゃっ」 一声鳴いて部屋を出て行った。 次はうちの両親の部屋で、それから彼は妹たちの部屋をまわる。 「ジルバ。あんたもありがとね」 床を這い回るメーカー名を文字って名付けたお掃除ロボットを眺め、にっこり笑って労ってあげた。 この子も本当に可愛い子で、ハルが来るまではこの子が私のペットのようなものだった。 『これ……、私に?』 去年の私の誕生日。 晴臣は小さな子猫をプレゼントしてくれた。 赤いリボンの代わりにバンダナを巻いた可愛い子。 『猫、好きだろ』 『あ、はい。大好きです』 『敬語はやめろって何度言ったら……、ばっ、それ以上近付くな!』 ハルをゲージから出して抱き上げると、晴臣ってば、これ以上ないぐらい慌ててたっけ。 『ありがとうございます。とても嬉しいです』 『だから敬語はやめろって何度言えば……、まあ、お前が嬉しいならそれでいい』 実は猫が苦手な晴臣そう言い残すと、早々に部屋を出て行った。 [*前へ][次へ#] 6/8ページ [戻る] [TOPへ戻る] |