黒い落し物
ふわふわと重力など忘れたように漂うシャボン玉が、見事なプリズムを作り上げ煌めく。息をするのも忘れて見ているとぷかぷかとまた彼はシャボン玉を空に浮かべた。どうやら、液体が無くなるまでシャボン玉を浮かばせるつもりらしい。
探偵の格好を見よう見まねでしている癖に煙草が吸えないからと、代わりに彼はシャボン玉を浮かばせる。
「シャボン玉ってさー、すぐ消えるねえ」
青空を漂っていたシャボン玉が風で鬱蒼とした茂みの方へ消えていくのを見送りおそ松くんは呟いた。私の存在に気付いても尚、ペースを乱さず彼はシャボン玉をまた浮かべた。
好き放題伸びている草を踏み分け、木の下まで行くと建物が見えてくる。洋風の煉瓦づくりで、周りの光が当たらず葉がほの暗い木々達と溶け込むような色合いは、まさに殺人事件の現場となるには相応しく暗く重い印象を与える。戯れに草をブチブチと引き抜きながら、私はようやく彼の元へとたどり着く。
「シャボン玉なんてそんなものですよ」
ふわふわと漂うシャボン玉に釘付けとなっている彼を見ながら私は言葉を濁した。言うと瞬く間にぱちん、とシャボン玉は弾けてしまった。
ALICE+