フラグは電波のように


※連載夢主
※揺籃たる死期のあと



なんか知らないけど安室透という顔が美味しい男性に喫茶店で待ってますと電話まで来た。事務所でも誘われたがただのイケメンによる社交辞令だろ。それか営業かな。と私は納得していた。明日の朝ご飯の仕込みをしながら私は明日の学校の事を考えていた。

「朝食はなんですか?」
『明日はサンドウィッチですよ』





■□■






朝、小鳥の囀りと共にアラームが鳴り響く。むくりと起きて寝ぼけた頭で鳴り止まないスマホに手を伸ばしアラームを消したのだがスマホから声が聴こえ、致し方なく起きてスマホを手にする。

『なんねぇ』
{ おはようございます、名前さん。朝は弱いんですね }
『……だぁれ?』

幼稚園児みたいに相手に訊ねると、多分声が低いから男の人が深く息を吐き出して。

{ 安室透です。昨日お会いしたのですがお忘れですか? }
『おにいちゃん?』

なんか無言が続き首を傾げると下から別の男の人の声が聞こえた。

「名前さん。朝ですよ」
『あさ……朝か。ん?なんでスマホ持ってんだ?あれ?なんか通話が終了してる……一体何が?まあいいか』

ベッドから降りて着替えはじめた。今日から学校に通うため。





■□■






哀ちゃんと共に登校し、教室へ向かうと園子ちゃんと蘭ちゃんに挨拶をして少し話す。午前中は授業が続き真面目に取り組みながらお昼休みがやってくる。お弁当を広げ各々で食事が始める中、私のスマホが振動する。誰かだろうと断りを入れてから中身を確認するとメールで、文面を表示させた瞬間私はスマホを思わず落としてしまう。

「名前ちゃん携帯落としたよ」
「駄目じゃない。画面割れるわよ」
『う、うん…ごめん』

蘭ちゃんから受け取り画面をもう一度表示させるとこんな文面だった。


《 今朝は失礼しました。間違えて電話をしてしまって。それに押す箇所間違えて勝手に切ってしまって…あのお詫びも兼ねてポアロまで来て頂けますか?サービスさせてください 》

安室さんからそんなメールを頂き私は今朝を思い出す。あの通話終了画面の相手って安室さんだったのか。律儀な人やな。返信はあとでもいいかなと暢気に両手を合わせて『いただきます』と女子高生と戯れた。

だが、私はまだまだ甘かったのだ。そう、ゲームではプレイボーイな私だが現実では初心者。青葉マークがまだ取れない不慣れ。パンピの通常運転を私は知らなかったのだ。そんな放課後。今日は夕飯の買い出ししないと、と昨日スマホのメモ機能を遣って食材のリストを書き込んでいた事を思い出しスマホのロックを解除すると1件メールがきていた。誰だろうっと何の準備もなく開くと安室さんからきていた。あ、そう言えば返信まだしてなかった。

《 待ってます 》

なにが?っと首を傾げるとクラスのまだ残っていた女子達が校門側の窓を開けて黄色い悲鳴を上げている。何か居るのか。

「あの人かっこよくない?」
「ほんとだ!誰まってるんだろ」

徐に窓へ近寄り校門前へ注目するが、ぼやけて見えない。目が悪かったな、そう言えば。眼鏡をかけてもう一度校門前を目を凝らして注視すると、強烈な印象を受け取った昨日のイケメンらしき人物がこちらに向かって手を振っていた。後ろへ振り返り誰に振ってるんだと首を巡らせると今度は廊下から教室へ入ってきて私の隣に立つなり解説してくださった女子生徒A子さま。

「安室さんじゃない!ポアロで働いている。やだ!誰に手を振っているの??わたし?」
『………ひぇ』

あの人やっぱり安室さんだったのか、と思うと急いでスマホを取り出しメール画面を開く。この待ってます、ってもしや……もしやっっ!!

青褪めていく顔から血の気が消失していきながら、私は自席まで戻りリュックを背負うと『ごきげんよう』っと言って教室から駆け足で下駄箱まで駆け抜けた。陸上部ばりの走りを見せながら廊下をスライディングして真新しい下駄箱に靴を取り出し、上履きをしまう。乱雑に閉めてローファーを履く。少しバランスを崩しながら『うぉぉぉ!』っと声を上げながら校門前まで行きスマホを片手に背を預けている公式イケメンは、私の姿を捉えると無邪気に笑みを浮かべる。

「こんにちは、名前さん」

名前を言うな顔面爆弾野郎。
周囲の女子高生が頬染めて女の顔になってんだよ。この中お前を連れて行かなきゃならない私の身にもなってくれ!あとまだ転校してから2日目だから敵を作りたくない!!平穏な学園生活くださいっっ!!

『偶然ですね安室さん。え?蘭ちゃんですか?部活ですよ。おじさまに用なら蘭ちゃんから伝言を頼まれているので、その場所まで案内します。さぁ行きましょう』

ここまでノーブレスでお送りした。安室さんが何か言いかける前に彼の腕を掴み走り出す。今すぐこの場から目に悪い豪華絢爛物を撤去する使命を胸に全速力で走った。腕を掴んでいたのがいつの間にか手を繋いでいたことさえ気がつかないほど全力だった。

ある程度の距離まで来ると壁に手をついて咳こんだ。うえっ、久しぶりに本気で走ったら10代の体力なのに筋肉と肺が悲鳴を上げた。汗が噴き出て茹で上がりのほうれん草みたいになっていると後ろからくすくすと笑う私よりも歳くってる人が一切の乱れもなかったことが衝撃だった。

「すみません。僕の軽率な行動に振り回してしまったようですね。ですが、まさかここまでしてくださるとは思いませんでした」

心臓が忙しなく動きながら彼が手を掲げ指を絡ませる。何をやっているんだと思ったら腕を辿ればそれは自分の腕だった事に仰天する。反射的に後退する足だがその度に腕が引っ張られ繋がる手に視線がいく。

『すみません。手を繋ぐつもりはなかったでした』
「あなたなら大歓迎ですよ」

微笑まれると対応に困る。リアルでこういうゲーム的なシュチュ回収イベントが平然と起こるなんて知らないぞ。そもそも日本男児は奥ゆかしい感じではなかったですかね。いつからそんなアメリカ的な「へいへい」くる文化になったんですか。まさか私が知らない間にブームが到来して。などと思考をそちらに回していると突き刺さるような視線が浴びせられ確実にこれ毒でも食らってHP食らってるよね。

「それで先生はどちらにいらっしゃるんです?案内してくださいますよね、名前さん」
『嘘だって解っているのに聞くのは意地悪ですよ』
「そうですか?返事を返してくれない方が意地悪ですよ」
『そ、それについては申し訳ないです。返信しようと思っていたのですが、忘れていまして』
「転校してきて2日しか経過していないですから、色々と気づかれをしているのでしょうし。怒っていませんよ。寄ってくださると思っていましたし」
『あ、それは断ろうかと』
「来てくださると思っていましたし」
『買い物をしたいので断ろうかと』
「来てくださると」
『……うぃ』

迫りくる顔面の暴力に目を逸らしても無駄な抵抗だった。しかも繋がる手が握力測定みたいに痛い痛い。ガッチリ離さないという意思が伝わる。痛みと暴力と周囲の殺気に背中を押され私は頷いていた。これ……逃げられなくない?寧ろここからの脱出方法を教えてくれよ。

指ががっちり人質に取られながら私は連行、あ、いや。喫茶店まで優雅にエスコートされた。でもこの人歩くペースを合わせてくれるくらいのスキル保持者なので私はもうコンクリートジャングルばかり眺めていた。

『女性客を引き込むために同伴制度とか取り入れてる喫茶店初めてですよ』
「何を言っているんですか。あなただけです」
『……ん?』
「僕はあなたしか迎えに行きませんよ」
『……ん?』

ちょっと日本語が理解できませんね。私は脳内にある人生語彙辞典を開きながら彼の言葉の意図を調べまくっていた。結果は見つからないに決まってんだろ。駆け引きか、駆け引きなのか。これで「うそ…彼はもしかして…わたしのこと」とか少女漫画とかある程度の経験値があるお姉さまとかだったら思うかもしれないけど。あって二日目でこんなことを素面で言ってくる男なんてゲームでもいらっしゃらないですよ。なにこのリアルこわっ。リアルってこわっ。イケメンって何言っても許される系なの?神様に愛された容姿してるからなのか?そうなのか?神様って奴は不公平だな。あ、そういえば刀剣男士も見目麗しゅう……やっぱり不公平だ!

ぐぬぬぬっと悩んでいる私の傍らでずっと見られていることにさえ気がつきませんでした。


( すっごいイケメンが隣の女子高生に熱い視線を送ってる )
( 恋なの?恋なのかしら? )
( 年齢差激しいけど一途っぽいわ )
( 応援してあげたい )





■□■






『ということがありまして…買い物頼んでしまってすみません』
「いいですよ。押しの強いキャッチセールを断れない気持ちは解りますから」
『お店の場所とか憶えたかったのに』
「休みの日に一緒に行きましょうか」
『……はい!行きます!』

昴さんの顔面は大好物です。一緒に歩くとかそれはご褒美タイムですか、ありがとうございます!!



-----------------------
最初のお誘いは出迎えシンデレラストーリーだった裏話