小鳥が告げる。陽が昇ったと忙しなく告げてくる。カーテンの隙間から零れる光に瞼を軽く持ち上げると腕の先にはきみが健やかな寝息をたてて眠っている。白銀の髪が陽に照らされ煌びやかに輝く様を眺めながら隙間の空いた距離を詰めるように彼女の身体を引き寄せる。背中を向けて眠る彼女の後頭部に鼻を埋めて頭皮に唇をあてた。足を絡ませ腕の中に閉じ込めると彼女の身体がすっぽりと覆われ、小さな旋毛が現れる。ちゅっと表面を撫で髪から香る自身愛用のシャンプーの香りに口角は上がる一方だ。彼女の皮膚に触れればそこから沸き立つようなミルクの香りが首筋辺りをぞくり、とさせた。
さすがにまずいな
滑らかな彼女の脚を足指で撫で彼女の胸の前で交差する手が衣服の上から這うように彼女の下腹部を軽く押す。
非常にまずい
薄い胎を二、三圧しつつ。髪の隙間から覗く白い項に濡れた皮膚が撫で、ちゅっちゅっと吸った。舌先が肌を伝い熱く色づく艶めかしさで痕を残せば、真っ白な肌はより扇情と化す。たまらない、耐え切れない。狂おしい。きみがあともう少し早く生まれててくれれば、あと二年。あと二年くらいなら、この未熟な胎を満たすことが出来るのに…このもどかしさが酷く熱を燻り煽ってきていた。
胎から下部へと指先が伝い短い丈から覗く太腿に指腹を這わせ撫でると流石に起きだしたのか、彼女が鼻から抜ける音を出してぼんやりと瞼を瞬かせる。少し腕に籠った力を緩めると寝返りをうち、彼女と対面を果たす。上体を少し起こさせ腕に体重をかけ首をもたげ彼女の顔を上から覗き込むと長い睫毛がふるりと震えながらぼんやりと天井を見つめている。朝は弱いと知っているから、耳元で囁くように声を落として。
「おはようなまえ」
『ん…』
前髪を避けて額にくちづけを落とすとぐりぐりと目を擦る彼女。その手を布団の上に戻させ手首を縫い付けてから待ち遠しかった唇に口づけを贈ることが出来た。軽く皮膚が触れ合うだけの幼稚な触れ合いだが彼女は、瞬きを数回繰り返した後覚醒したのか。冷めた眼差しが注がれる。
『朝から何してんの』
「え?おはようのキスだけど」
『おはようのキスだけど、じゃない!人の身体を拘束しながらはやめてください』
「だってきみは逃げるじゃないか。可愛いが。ほら起きて。朝ごはん作ってあげるから」
そういうと言葉をくるりと丸めておずおずといった様子で『う、ぅん』と視線を逸らし、少しだけ尖った唇にもう一度落としてから起き上がった。彼女も勢いよく身を起こすと俺の背中をポカポカと叩くが照れていることは十分に理解している。布団から抜けると頬を膨らませて彼女はベッドから足をたらし起き上がる。その様子を眺めながら俺は湯を沸かしにキッチンへと向かった。
朝食を作り終える頃には軽く髪を結わいた状態で現れる。部屋着はそのままなため覆われていない脚が眩しい。短い丈のおかげで普段隠れている肢体さえもしっかりと眼前に晒されている。
美味そうだ。いや、絶対に美味い
『ん?』
「いいや、何でもない。それよりご飯出来たから食べようか」
きゅるるるっとお腹を鳴らした彼女は少し弾む声で「はぁい」と述べてから椅子に座る。温かな緑茶とご飯とお味噌汁、焼きしゃけを並べると瞳を輝かせていた。昨日の残りである彼女が作った煮物と漬けものを並べれば立派な朝食となる。さながらこの量は旅館並みだな。彼女は俺が座るまで待っている。彼女の正面に座れば手を合わせて合図を口にした。
■□■
久しぶりの休日。天気がいいベランダで彼女はシーツを洗濯し干していた。季節が夏へと替わる時期。汗ばむ陽気に女性は露出度の体積を増やす。腕を目いっぱい伸ばしてシーツを干すのに悪戦苦闘している彼女を後ろから支えるようにシーツを掴み、干すのを手伝うと「ありがとう」と柔らかく微笑まれる。気持ちの良い風が吹きシーツの白をたなびかせ、彼女の両手首を掴み髪の隙間から覗くうなじへ唇を落とす。ちゅ、と吸うように落とすとピクリと肩を揺らしくすぐったいのか身をよじり「ちょっ、と」と意を唱える。だが汗ばむ素肌に沸き立つ薫り、艶めかしく色めき誘発する白いうなじとその首筋に唇を滑らせ小さくちゅ、ちゅっと繰り返す。
『やめっ、んぅ…くすぐったいから…ってかここベランダッ』
鼻にかかる甘ったるい声に呼吸が難しくなる。耳殻を唇で挟みじゅるっと吸い唾液を含ませるとふるふると震えて肌を桃色に染め始める。くすっと喉で笑いながら耳の小さな穴に向けて息を吹きかけるように囁いた。
「じゃあ部屋の中なら続きをしてもいいか」
『ばっ、か…そういう意味じゃっ』
彼女の腰に腕を回し片腕で持ち上げるとサンダルを脱いで室内へと戻る。ふたりの意見が一致したソファーに腰を下ろし、彼女を膝上に横に乗せ腰に腕を回し、頬に手を添える。ゴクリ、と喉を鳴らす彼女は顔を赤くしながらその小さな唇から熱い吐息を短く繰り返す。親指が頬を撫で顎へと伝い下唇をふにふにと触れる。
「この柔い唇にくちづけを施しても」
『どこの王子だよ』
「きみの羞恥に困り果てる顔を観るためなら僕にもなるが」
『悪趣味な上にプライド何処置いてきた!』
「可愛いきみが悪い。諦めて受け入れてくれ」
『んっ』
親指を再び頬へと移動させ皮膚を撫でながら、唇を合わせる。滑るように柔い刺激を何度か繰り返すと溜まらずに彼女は薄く唇を開ける。食むように唇を合わせ僅かな唾液が付着する。糖度が含みすぎる彼女の息はまるで麻薬のように脳内を麻痺させ、思考を痺れさせる。
もっと……触れたい
奥まで……詰るように
息が上がり酸素を取り込む彼女の動作に舌を差し入れる。
『んぅぅ……んむっ…』
驚くのもつかの間で彼女の逃げ腰な舌を追いかけ捕まえるとその小さな舌を蹂躙する。味わうように絡めさせ苦しそうな根を上げる彼女の後頭部へと指を差し入れ上へと傾けさせる。唾液を注ぐように口内へと流れ、喉をひくつらせながら受け入れる彼女だが。飲みきれない粘着のある液体は口端から零れ首筋を濡らし鎖骨に流れては彼女の衣服を汚した。
『んぁ…はっ、ふりゅやっ…さ…んっ』
「零、って呼べ」
『ん……れぃさぁ…んっ』
肉厚な舌同士が外気に触れ、合わさり再び彼女の口内へ絡まる。食後に食べた桃の味が舌を甘く痺れさせ舌の付け根まで滑らせる。
苦しいのか、息継ぎがうまく出来ない彼女は俺の服を掴むなり必死に懇願する。目尻から雫がこぼれ唇がやわやわと動く。彼女の小さな舌が懸命に表面を撫でてくる。逆効果だ。裏筋を舐めれば小刻みに身体を震わせ艶やかな香りが放出しているようで。眩暈がする。腰に回した腕に力が籠められ彼女の下部へと指が這う。お尻の割れ目を沿うようになぞるとビクビクと反応をしめし薄っすらと開けたあの美麗な紫瞳が俺を捉える。涙をこぼし本格的に泣きだしそうな彼女の表情に、あ。と我に返り唇を離すと透明な粘り気のある糸が唇同士を繋ぎ口呼吸をする度に、揺れてはプツリと切れた。
項垂れるように彼女は胸板に顔を寄せ呼吸を整える。途切れ途切れに聞こえる呼吸音にくらりとするが今ここで強硬手段に出れば確実に嫌われる。それだけは避けたい。背中を撫で抱きしめると額でぐりぐりと攻撃をされる。
「すまない」
何も言わずにぐりぐりと擦られて深いため息がこぼれる。可愛すぎて身が持たない。精神を安定させるために彼女の腰辺りで手を組みすっぽりと囲われてしまう彼女の頭上で息を吐きだす。
歳食ってる割にガキみたいに喰いついてしまったのは反省者だ。彼女を前にすると理性が飛ぶ。それこれもなまえがかわいすぎる所為なのだが、それ以上に俺が相当に骨抜きにされているのが原因だ。12も離れた子供を夢中になって貪り、暴き、犯したいと伝達する脳みそは大分暑さに溶けきってやられている。
漸く腕に納まってくれたことが嬉しすぎて昂揚する。
彼女は自分のだと名前を書いても足りない。きっとこの分だと全てを見せてもらったとしても一生満たされることはないようにも思える。人の欲はあれもこれもと増えてくる。ひとつ満たされるとまたひとつと新しく湧いて出てくるものだ。
見られていたのか顔を上げてこちらの様子を見つめてくる彼女に、首を傾げて「ん?」と尋ねると彼女は視線を逸らす。ああ……これはご機嫌を損ねてしまった。彼女のこめかみ辺りに頬を寄せすり寄る。
「悪かった。ごめん。苦しかったよな。きみのペースで歩むと決めたのにきみを前にすると自制が利かなくて」
『そこは利かせて』
「……」
『素直か!』
はあ、と長い息を吐きだされくいっと手で身体を押し退けられる。放したくなくて腕は解かないでいると横向きから膝を挟むように正面に身体の向きを変え、彼女はコホン、と咳ばらいをし両頬に手を添えられむちゅっと稚児のようなくちづけを贈られた。
思わず、呆然とすると顔を紅潮させ潤む瞳を丸く揺らしながらも頬から手は退かなかった。
『べつに、やじゃない。息継ぎが出来なくて困っただけで…き、きもちよかったし。私だってあなたに触れたいと思うんだから謝らないでよ、ばぁか』
言い終えると真っ赤な顔を隠すように彼女は両手で顔を覆った。耳まで赤くしている事から余程恥ずかしかったことは伺える。だが、今度はこちらが海底よりも深い息を吐きだした。
ああ、このクソガキっ――!
歯をギリっと鳴り咬み合わせが悪い。ソファーへと彼女を押し倒すと捲れる前髪の先に期待するような、その濡れる美しい艶美の瞳に喉奥が焼ける。彼女の下唇を前歯で齧り、カミカミと甘噛みすると「ひぃ」と小さな悲鳴が聞こえる。柔らかで熟れたその唇の弾力を確かめながら舌でベロっと舐めると彼女は「ひぅ」と固まる。首筋に鼻先をつけスンっと立ち込める薫りに舌で肌を撫で、押しつけぢゅっと吸いつく。ビクリ、と身体を跳ねらせ僅かな痛みに身を焦がす。
『ぁ、れ、れぃさぁ…んぅ』
「まだ食べない。味見だけだ……まだこちらで我慢する。まだ、な」
襟首に指を引っかけ肌に吸い付きちゅ、ちゅっと音を絶やさない。羞恥に染まる彼女の食べごろな頬と色づく桃色の肌。不釣り合いな赤い斑点に目尻を下げ、声を我慢する唇を舐め舌先でノックをすれば瞳を細め涙で滲む紫瞳が薄く唇を開き、口内へと舌を潜らせた。
むちゅ…くちゅ……じゅぅ……んちゅう…ちゅ、ちゅっ……
卑猥で粘膜質な音が室内に充満しながら彼女の幼い唇を堪能した。
『限度というものがあるっ!!』
ふやける唇で彼女が叫ぶまであと――――
fin.
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