おはようの




 以前もお話したと思うが、私はアラームよりも早く目が覚めることが多い。そして今日もまたアラームよりも早く目が覚めてしまった私は奏汰の寝顔をじっと見つめていた。眠っている彼は元々可愛らしい顔も相まって赤ちゃんのような愛らしさがある。本当にこの人は私の彼氏なのだろうか…そんなことを思いながらかめのぬいぐるみを抱き締めながら寝息を立てる彼の髪を撫でた。

 彼の髪を撫でているとスマホのアラームが鳴る。彼を起こさないようにと急いでアラームを止め、静かにリビングへと向かう。お昼に食べるおにぎりを握り、顔を洗う。冷たい水が顔を引き締めてくれるような気がする。仕事を辞めると決意してからは仕事に向かうのがすごく憂鬱で。今すぐにでも辞めたいとは思うがなんせ貯金もなければ支払わないといけないものも多い。彼は稼ぎがあるからとは言ってくれるものの甘えすぎるのも良くない。大丈夫、自分ならできると自分を鼓舞する。

 喉の乾きを感じ、コップに水を注ぐ。水が溢れて自身の手にかかるも気にせずに水を一気に飲み干した。乾いていた体の隅々に水が行き渡る感覚は心地良い。ぷは、と一息を着くと同時にリビングの扉が開く。

『かなたおはよう』
「おはようございます〜…」

 コップを流しに置き、彼の方に体を向けるとぎゅっと抱き締められる。いつもは濡れていて冷えている体も熱が籠っているのかいつもより微かに暖かく感じた。顔を見上げればそこには眠そうな表情をうかべるかなた。あまりに可愛くて思わず微笑んでしまう。と同時に奏汰の手によって包まれる私の顔。これはやばい、そう思ったのも束の間。互いの唇が軽く触れ合う。1回だけで済めば良かったものの何度もそれは繰り返される。あまりの羞恥に私は目を瞑ることしか出来なかった。

「うふふ、おはようのちゅーです…♪」
『にしては回数が多すぎるよ…』

 あーもう恥ずかしい…とちらりと彼の顔を見るといつも通りへにゃりと笑っているものの薄らと頬が赤く色付いている。おはようのキスだなんて絶対に嘘だ…なんて思いながら時計を見ると時計の長針は私が思っているよりも進んでいた。

『まっっ…!時間やばい!』
「くすくす、『あさ』からいそがしいひとですね?」

 奏汰のせいだよ。と心の中で反論しながら急いで化粧、髪のセットを終える。その間目の前で優雅にコーヒーを飲んでいる彼に若干腹を立てながら着替え、荷物をまとめてなんとか時間内に支度を終えることが出来た。

『かなたいってきます!』
「はぁい、きをつけてくださいね〜」

 コーヒー1口貰えばよかったかな、でもブラックだから飲めないか。そんなことを思いながら玄関口でひらひらと手を振っているかなたを横目に見ながら私は急いで最寄り駅へと走った。


site