海と光
『かなたみぃつけた』
「…おや、みやび」
さっきぶりですね〜と言いながら波間に立つ奏汰の全身は濡れている。夕日が海に反射して海は普段と違う姿を見せている。キラキラと輝く水面はまるで舞台照明の様でとても眩しかった。その中で立っている奏汰はあたたかい光の中で今すぐにでも攫われて居なくなってしまいそうで、あまりの儚さに思わず息を飲む。
こっちにおいでと言うように手招きされ、忠犬のように傍へ駆けていく。ローファーと靴下を砂浜に残してぱしゃ、ぱしゃと音を立てて奏汰の隣に立てば優しく抱き締められた。顔を見上げれば優しく微笑む奏汰の姿。彼の髪を伝う雫がぽつんと一粒、頬に滴り落ちる。
『儚いね』
「…なにがです?」
奏汰がだよ。そう言いそうになるのを抑えてにっこりと微笑む。彼は理解が出来ていないのか眉を顰めている。彼の背中に回している腕を解こうとすると、何故か彼の腕に力が加わる。
『ぐぇ、かなた?どうしたの?』
「あ…ごめんなさいね、なんだか、はなれたらあなたがきえてしまいそうで…」
えへへと眉尻を下げながら笑う奏汰はとても可愛らしかった。私はどこにも行かないよ。寧ろ、奏汰の方が…いや、変なことを考えるのはやめよう。
『ね、奏汰。コンビニにアイス買いに行こうよ』
「いいですね〜、ぼくあおいのがたべたいです〜」
そう言いながら手を繋ぎ浜辺へと向かう。腕を解き離れると体に残る温もりが徐々に失われていく。足は濡れてるし靴下は履かずにローファーだけ履けばいいか。タオル、持ってきてたかな。そんなことを思いながら彼の顔をちらりと見る。
大丈夫。私は貴方がこれから先どんな酷い目に遭おうとも、どれだけ遠くに行ってしまったとしても必ず見つけ出して、干からびた海のように乾いてしまった貴方の心をこの愛で潤してあげよう。貴方が流星隊として、ヒーローとして歌で人々をを助けようとするのならば、私はそんなヒーローを助けられるような存在になりたい。なんて伝えたかった言葉を彼に伝えるのは照れ臭いから海に置いていくことにする。
『ねぇかなた』
「どうしましたか?」
『大好きだよ』
「いきなりどうしたんですか?」
『ん〜、感謝の気持ち、的な?』
「うふふ、僕も大好きですよ」