自覚
帰宅途中、いきなり雨が降ってきた。仕事で疲れて傘を出す気力がなかったので、 かなたの気持ちを理解するために という投げやりな理由で雨に濡れたまま帰った。かなたがいる時に濡れて帰ったらきっと水の張った浴槽に引きずり込まれるから、かなたが居ない今しよう。と。
『 ただいまぁ 』
癖で口を開くも返事は無い。当たり前だ。奏汰は今日仕事で家を空けているのだから。奏汰が家にいないことは今までも何度もあったにも関わらず未だに慣れない。しんと静まり返っている自分の家がなんだか怖く感じた。
私の経験上濡れたまま放置していると風邪をひくので直ぐにお風呂に入った。お風呂の中にいても思い出すのは奏汰のことばかり。星奏館でルームメイトに迷惑をかけていないかとか、雨降ってるし外で水浴びしてるのかなとか。奏汰のことばかり考える自分がなんだか恥ずかしくて直ぐにお風呂を出た。
『 ……いったぁ……かなたぁ 』
『 ねぇかなた 』
『 そういえばさぁ……あ。 』
私は末期かもしれない。どうしてこんなにも虚空に向けて話しかけてしまうのだろうか。頭の中では奏汰が家にいないことは理解しているつもりなのに。なのにどうしても勝手に口が開いてしまう。ガシガシと頭を掻き項垂れる。恥ずかしさと寂しさが混ざり合いよく分からない感情に苛まれる。私は彼のことが好きなのか。私のこの感情を 好き という単語で表していいものなのか。
『 ……あー、私って 』
抜け出せないくらい彼に依存しているんだ。別に今に知ったことでは無いけれどそれを自覚してしまった今、顔が燃えているように熱い。いつからか私の世界の中心は彼で、彼がいないと生きていけないくらい深い所まで溺れてしまっていた。私は1人でも生きていける、そう思っていたのに。