キスの日




『ん…ゔ……?』
「あ、おはようございます〜…♪」

 背中に感じる温もり、腹回りの締め付けられるような感覚。モゾモゾと寝返りを打てばそこには目を細め微笑んでいる奏汰がいた。一緒に居るのが恥ずかしくてベッドに逃げ込んだはずなのに彼が私を抱き締めて同じ布団にいる。けれど寝起きの脳みそが働く訳もなく、彼の胸元に顔を埋める。頭上からはくすくすと笑い声が聞こえてくる。

『……ね、かなた?』
「どうしました?」
『きょうね、きすのひなんだって』
「そうなんですね〜」

 チラリと見上げると相変わらず微笑んでいる奏汰。まぁ彼はきっと興味無いよなあ。と頬に手を添える。白くてすべすべ柔らかい肌。本当は神様だったんじゃないかと思うほどの綺麗な顔。ふわふわと細くて柔らかい髪の毛。そのどれもが愛しくて仕方がない。

『ね、かなた』
「はぁい?」
『ちゅーして』
「ふだんは『つんつん』しているのに『ねおき』はあまえんぼうさんですね〜?」

 あなたはほんとうにかわいいですね〜。と優しくキスをしてくれる彼。たった数秒の口付け。それだけなのに多幸感がすごくて思わず口元が緩んでしまう。少しだけ恥ずかしくて自身の頬に手を当てる。

『えへへ、しあわせすぎてしんじゃいそう』
「くすくす、しんじゃだめですよぉ」
『あのねかなた、わたしかなたのことだいすきだよ』
「しってますよ?」
『かなたがいないといきていけないくらいすきだよ』
「そんなに、ですか?」

 そんなにだよ〜なんてヘラヘラ笑っていると頬を包まれ何度も軽いキスの雨が降る。普段の表情とは違う、艶っぽい表情。あまり見た事のない彼の表情に心拍数が上がる。次第に頭も冴え、ぼぼぼぼっと顔に熱が集まる。もう大丈夫ですと言わんばかりに彼の胸板を押せば彼は満足そうに私の頭を撫でる。

『あ、あ、ぅ…』
「きょうは『きす』のひ、なんでしょう?」
『そ、そ、そ、そう、だ、けど…!!』
「くすくす、ぼくにさみしい『おもい』させた『ばつ』ですね…♪」

 さて、ばんごはんをつくりましょうか〜と1人寝室から出ていく奏汰。それに伴い置いて行かれる私。早鐘を打つ私の心臓。また、彼と顔を合わせられなくなってしまった。


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