encounter story
「うひゃぁぁ!?!?」
大阪四天宝寺中に響く大きな叫び声。
急になくなる地面の感覚。真正面に見える青空。
ジンジンと痛む体。
その情景を受けて私は所謂"落とし穴"というものに落ちた事を察した。
高さは約2mと言った所だろうか。私の身長では少し無理がある。
取り敢えず立ち上がり、買ったばかりの制服に着いてしまった土を手で払う。
「さいっあく!!新品なのに汚れちゃったんだけど!!誰よここに落とし穴なんか掘ったの!!」
そんなことを穴の中で呟きながら脱出方法を考える。
実は約3日前関東から引っ越してきてやっとこの大阪四天宝寺中へと転校をしてきたばかり。
なので地形など把握してなければこの落とし穴も予想していなかったのだ。
少し早い時間に来たとはいえ、このままではホームルームには間に合わないだろう。
どうしよう、と穴の外を眺めていたその時、ひょこっと何かが穴の外からこっちを覗いていた。
様々な方向にぴょんぴょんとはねた赤味の強い茶髪。 キラキラと輝いた目。標準よりも少しやけた肌。
『…女の子がおっこっとるー!!』
元気すぎて耳が痛くなるほどの声。
赤髪の少年は他の足跡がする方へと叫んだ後私の目をじっと見た。
『あんさん何しとるん!?』
「えっと…落っこちました」
『なんでやねん!!』
まさに関西、といったツッコミをされた。いや私もよく分からない。彼はそのまま笑い転げた後、すぐに私に向かって手を伸ばした。
『ほら、掴まりぃや!ワイが助けたる!!』
輝く笑顔。私は思わず彼の笑顔に惹かれ手を掴んだ。
掴んだらその後は早かった。
小柄な体からは想像も出来ないような凄いパワーで私を引き上げる彼。
『ふんぎぃぃぃい!!』
「ちょ、重いですよ私!!」
『ん?んなこたあらへんで!全然軽いわ!』
そんなことを少し話せばすぐに私は穴の外へと救出された。
私とほとんど変わらない背丈の彼は言葉を続ける。
『初めましてやんな?ワイ、遠山 金太郎いいますねん!』
あぁ。まただ。太陽みたいな笑顔。
惹かれるままに私も言葉を連ねる。
「矢野。 矢野 名唯です !」
ぎこちなく名前だけを述べれば二ッと口角をあげ
『じゃあ、めい やな!よろしゅう!あとその「ですます」っちゅーのワイ苦手やねん、付けんでええで!』
これが私たちの出会い。
ちゃんと会話をするのはこれより2年後なのでした。
3年になったときの嬉しそうに笑ってくれた彼の顔は今でも忘れられないです