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甘いお薬を飲むだけの(略)
フリーター×大学生(1)
秘密のアルバイト(1)他
「……なになに。甘いお薬を飲んで経過を見るだけの簡単なお仕事です?」
思わずスマホを弄る手が止まる。
「モニターアルバイト募集、20歳から39歳の健康な男性、一週間……45万?!」
そのアルバイトを見付けた時、俺は思わず『これだ!』と叫んでしまった。
アルバイト開始日は8月最後の日曜日。
蝉が余力の限り、忙(せわ)しなく鳴いていた。
「ここかあ……」
俺がアルバイト先の研究所から指定されたホテルのロビーに着くと、既に数人の若い男が集まっていた。
どの男も自分と同年代で、正直薬とは無縁に見える。
俺は普通の大学生で、実はアルバイトは初体験だ。
きっかけは情けないことに最近人気のスマホゲーム『バケモン退治』にはまり、課金しすぎて小遣いがなくなってしまったことだった。
うちは割と裕福な家庭で、小遣いは一般的な大学生にしては多く貰えている方だと思う。
それだけに親にもっとくれとは言えなくて、仕方なく短期アルバイトをすることにしたのだ。
「しっかし、アルバイトと言ってもなあ……、お?」
なんせ初めてなものだから、どこでどう探していいのかもわからない。
そんな時、適当にスマホを操作していたら、偶然冒頭の新薬モニターの募集要項を見付けて。
アルバイトを募集していたのは新薬研究所と言うかっちりしてそうなところ。
アルバイト内容は6泊7日、つまりは一週間、指定された時間に薬を飲み、後は指定されたホテルの部屋で読書するなりゲームするなり自由に過ごすというものだった。
ただし、正確なデータを得るために外出は認められず、アルバイト期間中はホテルの部屋に缶詰になる。
だけど食事はルームサービスで届けてくれるし、つまりは三食昼寝付きで一週間部屋に篭ることを条件に、好きなことをするだけで45万ものアルバイト代が貰えるのだ。
「これは応募するしかないでしょ」
早速スマホで登録してみると、面接に来てくれと直ぐにメール連絡が来た。
面接に指定された場所は研究所ではなくて寂れたビルの一室で、事務所では一人の男が待っていた。
「ふーん。松島みつる……、二十歳の大学生、ね」
面接官らしい男は履歴書と事前アンケートとを照らし合わせながら俺の全身を舐めるように見て、
「君、合格。これこれここのホテルに、8月×日、午前10時に来てくれる?」
ものの数分で面接は終わり、勤務場所を明かされた。
今思えば、最初から何もかもが怪しかった。
決まった時間に飲む薬もなんの薬なのか説明もなかったし。
「やっと終わったー!」
部屋は24時間モニターで監視しているとのことで、トイレや風呂以外にプライベートはなかった。
おまけに渡された薬を飲むと、いつも強力な眠気に襲われた。
「あ……れ、また寝てた……?」
いつもそのまま寝てしまい、気付けば5時間近くが経っている。
「ま、いっか。ゲームしよ」
それでも好きなゲームはやり放題だし、これで45万貰えるならお安いものだ。
眠りから覚めた後の怠さと腰の鈍痛だけが気になった。
直後は何故か肛門や乳首に違和感も感じるし、ただ、目が覚めた後の食事はすこぶるうまい。
そう言えば面接前の事前アンケートも何故だか性に関するよくわからないもので、肛門に異物を挿入したことはあるかとか、同性愛者かどうかとか。
そんな項目ばかりが並んでいた。
まあ、とにかくこれでアルバイトも終わった。
今日は小遣い日だし、おまけに手取りで45万も貰えたし。
「んー、おいしいアルバイトだったなあ。また小遣いが足りなくなったらやってもいいな」
そんなのんきでノンケな俺は、裏でその時の様子を撮影したビデオが流通してしまったことに、最後の最後まで気付かなかったのだった。
それ以前に宿泊タイプの新薬モニターが通常は病院に入院する場合が多いこと、面接時のチェック項目も多岐に渡り、そう簡単に採用されないことにも。
To be continued.
※次話に続きます。
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