幻殃斉と語り人
そこは十ばかりの人間しかいない小さな集落。
ささやかながらも、穏やかで平和な日々が続いたある冬のこと。
唯一人里へと通じる道が雪崩に閉ざされ、さぁ大変!
一人の若者が意を決して山を駆け降りた!
だが待てど待てど若者は帰って来ず、食料の蓄えも残すところ僅かばかり…
それらを巡って村人同士が殺し合い、殺した村人の血肉までも食い尽くす有り様!
とうとう生き残ったのは、たった一人。
そうして蟲毒の出来上がり、という訳よ。
「無論、モノノ怪と化したその村人はみどもの手によって静められたから案ずる」
「ちょいと待ちなよ、おにいさん。一つ忘れてやしねぇかい?」
「何?」
「村を助けるために駆けた若いのがいただろう?そいつはどうしたぃ?」
「…………」
「続きは俺が話しやしょう。」
親きょうだいに友人知人。
もしかしたら恋仲だっていたかもねぇ。
そんな村中の期待を背負って、背負ったつもりで山を駆け下りていった若者だったが。
生憎、人里に辿り着くより前に道に迷っちまって、一人寂しく死んだのさ。
「だからおにいさん、そいつもちゃあんと弔ってやったのかぃ?」
【こどく】了
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嘘つき、ロンリー。