工藤と同僚
うちの学校は良くも悪くも平凡な、いち公立中学校だ。
だというのにここ最近、カウンセリング室を利用する生徒が急に増えた、らしい。
「最初にその話を聞いた時は『一体どこにそんな闇が潜んでいたのか』って、ちょっと心配してたんですけどね…」
だが、蓋を開けてみれば何てことはない。
新しく赴任してきたカウンセラーがイケメンという、ただそれだけのオチ。
「用もないのに生徒達が入り浸ってしまい、すみません。今度こちらから注意しておきますから。」
「いえいえ。学校のような大勢の人間が集まる場所には必ず、表面上からは分からない、それこそ平凡の一言では片付けられない『何か』があるものですよ。」
そう言ってニコニコと笑うその物腰の柔らかさも、恐らく慕われる要因の一つなのだろう。
女子生徒に人気があるのも無理はない。
(…けど、何だろうな…この先生を見ていると何となくこう、狐、を彷彿させるというか)
「狐狗狸さん」
「は、」
「って、先生はご存知ですか?」
一瞬心を読まれたかと、思わずドキッとしてしまった。
「えっと、あれ、ですよね?紙に50音を書いて、10円玉で占う?っていう…懐かしいですね。流行ったのは小学生の頃ですか?」
その後ろめたさのようなものを隠そうと慌てて話に乗れば、特に気にする様子もなく「僕が前にいた学校でも結構最近まで流行っていたんですよ」と続ける工藤先生。
「へぇ、そうなんですか。まぁ、流行りは繰り返すって言いますからね。」
「えぇ。それに生徒達の興味の対象も、いつの時代もそう変わらないものですよ。」
「確かに。」
苦笑し、相槌を打ちながら思い出されるのは当時の光景。
中にはわざわざ禁止にする学校もあったというのに、それにも構わず生徒達は皆、こっくりさんに夢中だった。
「一体あれは何なんでしょうね…ダメだと言われたら反対にやりたくなる好奇心、いや反抗心?」
「背徳感、かもしれませんね。」
はいとくかん。
日常生活ではあまり耳にしない言葉に、つい反射的に反芻してしまう。
そしてその瞬間、背筋をぞわりと這うものを感じ、自分の手に重ねられた手に気付くのが遅れてしまった。
「くど、せんせ…?」
「ダメだと言われたらやりたくなる、でしょう?」
笑うカウンセラー
(ここ最近、カウンセリング室をよく利用する先生がいる)(…らしい)
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嘘つき、ロンリー。