薬売りと同業者


※『フジミさん』コラボ。







「そんな刀じゃあ斬れんよ。」


何処からともなく従者を連れて現れたその男は、薬売りが構える退魔の剣に苦笑を浮かべながらそう言った。


「ほう…何かご存知で?」

「そりゃあね、もちろん。」


従者が急かすように「おはやくおはやく、」と男の裾を掴む。

男はそんな従者をちらりと見やって、そして呆れたように溜息を吐いた。


「喧しいねぇ…きゃんきゃんと何だい、犬っころ。」

「ですが黒兎様、」

「同業者に会えて少し浮かれてる、ただそれだけじゃないか。」

「同業者、ですか…」


黒兎と呼ばれた男の言葉を拾い上げ、薬売りは二人の装いに目を向けた。


薬売り、には見えやしない。

ならばきっと、「そういう意味」での同業者だろう。


「あぁ、名乗るのが遅れたね。富士見の黒兎ってんだ。」


ふじみ。

薬売りが口の中で小さくその名を繰り返した。


「おや、聞いたことが?」

「風の噂で。ならば、あれは」

「富士見が狩るは『アラズガミ』よ。」


それはモノノ怪ともまた違う。

言葉の通り、「神に非ず」。


「さぁさ、黒兎様…おはやく…」

「おう。さがってなよ、モノノ怪斬り。でないとおっちぬぞ。」


一体何処から取り出したのか、犬のような面を黒兎に差し出して、従者が何やら言の葉を紡いでいく。

昏い光をその瞳に宿しながら、黒兎がくつくつと笑う。


「富士見にゃあ、神も人も区別出来ねぇのさ。」


犬の面に隠される寸前、その唇は確かにそう動いた。





【富士見】了


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嘘つき、ロンリー。