東の青年と石火矢衆
歳が近いから、なんて理由で押し付けられた客人の世話役兼見張り役。
だが本来俺の仕事は傭兵、石火矢衆だ。
それがいざという時に使えない、では話にならない。
だから訓練には参加出来ずとも、その手入れぐらいは合間にこそこそとやってはいたんだが。
「火薬の臭いがするな。」
俺の鼻は馴染みすぎて馬鹿になっているのか。
そうですかい?とアシタカ殿に返しながら、自分の二の腕辺りに鼻を寄せた。
が、いくら嗅いだところでやはり自分ではよく分からない。
「すいやせん。お気に障るようなら水でも浴びてきやしょうか?」
「いや、構わない。」
風邪でも引いたら大変だ。
なんて餓鬼のような心配をされ、思わずもらしたのは渇いた笑い。
これではどちらが世話を焼いているのか、分かったものではない。
「しかし石火矢など…そなたが怪我でもしたらと思うと心配でならないのだ。」
「心配って、旦那ぁ…あんた、本当に俺をいくつだとお思いで?」
それこそ、鼻で笑ってしまった。
火を扱う以上、火傷は免れないことだ。
最近ではあまり負うことがなくなったとはいえ、この身には大小様々なそれらが至るところに点在している。
その全てを晒すつもりはないが、少し当て付けてやりたくなった。
お世辞にも綺麗とは言えない手を、その眼前へと突き出す。
「ケント?」
「俺ぁ見ての通り、もう傷だらけですぜ。旦那は心配の他に何かしてくださりますかい?」
そう意地の悪いことを言って、少し困らせてやるだけのつもりだった。
それ以上のことは、特に何も望んでなどいなかった。
だから思った以上にアシタカ殿の表情が悲しげに歪んだのを見て、俺は少し動揺してしまったのだ。
その手を掴まれても、咄嗟に反応を返せないほどに。
「…私に出来るのは、これくらいだが。」
そしてアシタカ殿は何の躊躇いもなく、俺の手を、その指先を口に含んだのだった。
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我に返って悲鳴を上げるまで、あと数秒。
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嘘つき、ロンリー。