東の青年と現代人
※トリップ主。
昔から何となく動物に好かれるたちだった。
例えば道を歩いていると、いつの間にか寄り添うように隣を歩く犬がいたり。
例えばぼんやり佇んでいると、いつの間にか足元が鳥の集合場所になっていたり。
例えば誰かの家に行くと、その家の猫が飼い主以上に懐いてきたり。
そのせいで多くの恨みを買ったりもしたが、最終的には「…まぁ、ケントだから仕方ないか」で許されるので、もしかしたら人間も動物として適用されるのかもしれない。
恐らく今、俺の前を歩いている人もきっとそうだ。
「あそこに物見櫓の屋根が見える。」
そう言われ、指し示された方向を見てみたが、生い茂る木々に邪魔されて残念ながらそれを確認することは出来なかった。
そのせいで「はぁ…」と気の抜けたような返事になってしまう。
「村まであと少しだ。この分なら日が暮れる前には着くだろう。」
「あの…本当に、いいんですか…?」
恐る恐るその背中に声を掛けると、相手が足を止めて振り向いたため、俺もつられて足を止めた。
不思議そうにこちらを見つめる眼差しがあまりに真っ直ぐ過ぎて、少し居心地が悪い。
「他に行くところがないのであろう?」
「いや、ないというか、分からないというか…」
「ならば、ひとまず村で休めばいい。」
「それは本当、助かるんですけど…俺なんか連れ帰ったりしたらアシタカさんが、その、村の人に怒られたりしません?」
「?何故だ?」
「いや、何でって…そりゃあ……」
ちらりと自分の格好を見下ろして、再びアシタカさんの方を見た後、辺りを見渡すように顔を左から右へ。
そして最後に、隣にいたヤックルと目が合った瞬間、べろりと頬を舐められて思わず「うっ」と声を上げた。
例に漏れず俺に好意を示してくれる彼(あるいは彼女)には申し訳ないが自分より大きな動物は初めてで、ぐりぐりと頭を押し付けられる度に目前に迫る立派な角に少し腰が引けてしまった。
「ヤックルが警戒していない。そなたは悪い人間ではないのだろう。」
だから何も問題はない、とアシタカさんはそう続けたが、俺には問題ばかりのように思えて仕方ない。
ちょっとそこのコンビニまで、とスウェット姿に財布一つで家を出て、もうかれこれ一時間が経つ。
確かにどちらかと言えば田舎の方に住んでいるが、家の近所どころか市内にさえ、これほど広大な森はなかったはずだ。
ヤックルのような大きな鹿も。
アシタカさんのような古風な格好をして、「コンビニも交番も知らない」なんて言う人も。
「…………」
一体、ここはどこなのか。
いくら考えたところで当然答えが出てくることはなく、黙り込んだ俺にアシタカさんは柔らかく微笑みながら「さぁ、行こう」と先を促した。
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(そして、ようやく辿り着いた村でも俺の姿は明らかに一人浮いていて)
(だけど、やはりアシタカさんのようにすんなりと受け入れられたのだった)
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嘘つき、ロンリー。