河の神と従業員


「……あれ?」


おかしいなぁ、と呟きながら後ろ頭を掻くケント。

不意に私と目が合うと、「すみません」と苦笑をもらした。


「そろそろだと思ったんすけどねぇ…」


内庭に面した、人気のない渡り廊下。

そこを通り掛かった私に、ケントが声を掛けてきたのはつい数分前のことだ。



『お暇ですか?』



ここから珍しいものが見えるのだ、と。

そう続けたケントは一向に何が見えるのかを教える様子がない。


そして私も特に尋ねはしなかった。


ただケントが空を見上げるから、私もそれに倣って空を仰ぐだけ。


時折、隣のケントを盗み見たりしながら。


「…今日は駄目みたいっすね。」


それからしばらく経っても、ケントの言う『珍しいもの』は現れなかったようだ。

何も知らない私には判断が着きかねるが、ケントの肩の落としようからして掠りもしなかったらしい。


「どうもお引き止めしてすみません。」

「いや、私は別に構わないが…本当なら何が見えたのだ?」


共に過ごせただけで良かったが、やはりここは尋ねておくのが礼儀だろう。

そう思い、聞いてみれば、ケントは目を細めて笑い、




「白い龍が。」





「………」

「この時間にこの辺りで空を見ていると、よく飛んでいるんですよ。それがとても綺麗なので、ぜひハク様にもお見せしたかったんですけど。」


それはまたの機会に、とケントは言ったが、その機会はきっと今後も訪れることはないだろう。


「…ケント。」

「はい?」


教えるべきか否か。

私は少し迷い、そして口を開いた。


「もう少し、待ってみないか。」





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(それはきっと、ずるい答え)


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アンケートより。
リクエストありがとうございました!




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嘘つき、ロンリー。