河の神と従業員
店先で掃き掃除をしていると、その姿が視界に入り、無意識に手を止めた。
どこかに出掛けていたのか、橋をこちらへと渡って来る。
そして向こうも俺に気付いたようだ。
「お帰りなさい、ハク様。」
「……あぁ。」
目が合って声を掛けると、何故か少し間を置いて返事を返すハク様。
その目が一瞬物言いたげに細められたような気がして、首を傾げながらも俺は自分の姿を見下ろした。
いつもと同じ灰色の作務衣に、今日は頭に手拭いを巻いている。
とても作業しやすい格好で、特に問題はないはずだ。
「何か変すかね?」
「……いや…」
歯切れの悪いハク様にますます不安が募る。
何だろう。
自慢ではないが、普段からがさつだ何だと定評ある俺だ。
知らぬ間にハク様の不興を買っていても、ありえない話では
「好きなのだ。」
「へ?」
考え込みすぎていたせいか、今ありえない言葉が聞こえたような気がする。
ついでに間の抜けた声を出してしまったが。
「そなたの髪が。」
「あ、あー、髪?髪が!そっすよね、髪すよね!」
「だから手拭いに隠れて見えないのが少し残念だと、そう思ったのだ。」
なんて紛らわしい!と喉まで出かかったが、それを何とか飲み込んだ。
勘違いした俺が悪い。
(………勘違い?何を?)
「へぇ?俺からしてみればハク様の髪の方がさらさらで綺麗で羨ましい限りですけど。」
気を取り直してそう言葉を続けた俺は手拭いを外し、それをがりがりと手櫛で解す。
焦げ茶色の、少しごわついたくせっ毛。
一発ですんなりと櫛を通せた例しはなく、真面目に整えたところで寝癖と言われるのがオチの代物だ。
ハク様も物好きだな、なんて考えていると、不意に微笑んだハク様に手を伸ばされ、
「勿論、ケントのことも好いているよ。」
優しく頬を撫でられてしまった。
時間差攻撃!
そして油断大敵。
(その笑みが悪戯っぽく見えたのは、)
(俺の被害妄想ですか?)
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キリリクありがとうございました!
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嘘つき、ロンリー。