小国王子と幼馴染


幼い頃、妹のラステルはよく近所の子ども達にいじめられていた。


いじめられていた、とは言ってもそう大したことじゃない。

その証拠に周囲の大人達は特に口を出すことなく、いつも微笑ましそうに見守っているだけだった。


今思えば、あの子達はただ、ラステルと仲良くしたかっただけなのかもしれない。


だけど当時はそこまで考えている余裕なんてなくて、泣きじゃくる妹を前に一人あたふたするばかりだった。


『うっ…うぇっ…』

『な、泣くなよ、ラステル。どうしたんだ?何があったんだ?』


そしてようやく、話を聞き出した頃には―…








「…全部、終わってるんだよなぁ。」


思わず呟いた言葉に気付いたのか、「よう、アスベル」と振り向いたのは幼馴染みのケント。


「帽子なら無事だぞ。ったく、あいつらも本当、懲りないよな。」


本当に変わらない。

『懲りないあいつら』が逃げていく後ろ姿もそれを苦笑しながら見送るケントも、間に合わなかった僕も。


あの頃から何一つ、変わっていない。


「なぁ、ケント。」

「ん?」

「たまには僕にも、兄らしいことをさせてくれよ。」


言うだけ無駄とは分かっていても、そう言わずにはいられなかった。


流石に泣くことはなくなったが、今でも時々からかわれることのあるラステル。

つい数分前にも「帽子をとられた」と、そう相談を受けたのは確かに僕だったはずなのに。


やって来てみれば、この有り様だ。


「そう言われてもな…俺にとってもラステルは妹みたいなもんだし、仕方ないだろ?」


なんて、ラステルの帽子をクルッと回してみせるケントは特に悪びれた様子もない。

予想通りの回答に、予想通り過ぎて溜め息も出てこなかった。


「だったら…一人で先に行くなよ。」

「まぁ、そこは早い者勝ちってことで。」


頑張れ、お兄ちゃん。

そう言って僕の頭にラステルの帽子を乗せると、ケントはまたいつかのように悪戯っぽく笑った。










もう子どもじゃないんです。

だから分かっているでしょう?

(僕が怪我をしないように)
(君も、怪我をしないように)


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100500hitより。
キリリクありがとうございました!




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嘘つき、ロンリー。