下働きの娘と少女の兄
待ちに待った休憩時間。
他の姐様方に難癖付けられるよりも早く、その場を離れたリンは最近出来た妹分の姿を探した。
(っと…そういやアイツ、釜爺んとこに行ってんだっけ?)
確かその後は豚小屋に行くだとか何とか、そんなことを言っていたような気がする。
何だ…と少し拍子抜けしたものの、いないと分かればそれまで、後はただ部屋に直行するだけの話。
だから勝手に当てにされても困るというもの。
「ちひっ…妹は、一緒じゃないんですか?」
そうリンに声を掛けてきたのはケントという少年だった。
千の兄で、つい先日から千と共にここ『油屋』で働いている。
千より幾分上背があるようだが、リンから見ればどっちもどっち、ひどく頼りない痩身に変わりない。
そのせいか、ケントは男衆ではなく、ハクの下で雑用のようなものをしていると聞いたが。
「お前なぁ、人の心配より自分の心配しろよ。」
不安そうに周囲を見渡し、妹の姿を探すその姿に呆れてしまった。
『あの』ハクの下というだけで、自分はうんざりするというのに。
今はまだ、それがどういうことかを知らないケントはリンのその忠告にただ不思議そうに首を傾げるばかり。
かと思えば、ふと笑みを浮かべた。
「リンさんは優しいね。」
「は?」
今度はリンが首を傾げる番だ。
「おれのこと、心配してくれた。」
ニコニコと笑うケントに、ようやくリンの思考が追い付く。
それと同時に、リンは自身の肩よりも下の位置にあるその頭を思いっきり掻き撫でた。
「う、わっ?」
「千なら豚小屋行きゃあ、会えんだろ。さっさと行けよ。」
ほら、休憩終わっちまうぞ。
そう最後に付け加えて解放すれば、フラフラと揺れるケントの頭は案の定ボサボサだった。
それを整える間も与えず、乱暴にその背中を押し出す。
一歩二歩とたたらを踏んだケントは何とか体勢を元に戻し、一度はリンの方を振り向いて軽く頭を下げた。
そしてボサボサ頭が走り去るのを見送ると、リンは溜め息一つ吐き出し、思わず笑ってしまった。
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自分にきょうだいはいないからよく解らないが、あれがお人好しだということだけはよく分かった。
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嘘つき、ロンリー。